第15話思った以上に儲かるようです。
この町では時間を知らせるため4度鐘がなる。日が昇り、明るくなった頃に一度、太陽が真上に来る昼、夕方との間に一度。太陽が沈む寸前に一度の計4回だ。
さて、挨拶回りでは初日の今日は2度目の鐘と共に開店だと言ってある。しかしなぜか、入り口には一人女性が待っている。まだ1度目の鐘が鳴って大して時間が経ってないのにだ。
時間にして現在8時。庭に作った日時計なのでかなりアバウトではあるが、まあそんな時間だ。流石に4時間近く待たせるわけもいかないので、声をかけることにしよう。
「申し訳ありません。当店は2度目の鐘の刻からの開店となります」
女性は身なりの良いドレスに帽子をかぶり、いかにもお嬢様と言った風貌だ。お嬢様と言っても20後半から30前半といったところだろうが。まぁ・・・うん・・・そんな事がどうでもよくなる様な立派な物をお持ちで。失礼にならないよう、目線を外す。
見たいという、欲求を抑える。だってすげぇーんだもん。男の大半はガン見ですよ普通。俺はなんとか耐えているが辛い。
「あら、そうなの?でも困ったわね、出直すにも何処で時間を潰そうかしら」
この町というか、この周囲にカフェに類する物はない。中心部にいけば紅茶とパンを出す店はあるが、基本そういうものはない。娯楽自体が少ないのだ。
初の客だ、いいだろう。随分早いが開店といこう。
「よろしければ、店を開けましょうか?準備はあらかた終わりましたので」
嬉しそうに女性は微笑む「ありがとう。開店時間の情報は完全に見落としてました、ありがとうございます」
うん胸に意識しないようにしてたが、こう、ちゃんと見るとこの人かなりの美人さんだ。
店を開けると女性は店の商品を一つ一つ丁寧に見ていく、まるで鑑定士のようだ。そうして物色していると女性が不意に声を掛けてきた。
「この指輪は何で出来てますの?」
ピンクゴールドの指輪だ。構成の大半は金と銅の合金。飯の種を教えるわけにいかないのでぼかすか。
「当店の独自製法で出来た金属です。多少手入れをする必要が有りますがそれに見合う美しさだと思います」
「そういう特殊なものは他にもあるのかしら?」
そう聞かれたら、あるものを紹介していくのが筋だろう。ホワイトゴールドのネックレス、プラチナの指輪、ステンレスの包丁など色々説明していく。
「素晴しいわ、錆びない包丁は料理長へのお土産にしましょう。欲しい物が多すぎて困るわね」
やはり良いところの御婦人のようだ。
結局全ての店頭商品を見て25点もの商品を買うようだ。デモンストレーション用の商品でもあったので、かなり強気な価格設定だったのに、豪気なことだ。
無論即金、結構重いだろうに、よく持ち歩いたものだ。
「楽しかったわ、ありがとう」そういい残して店を出て行った。見た目も客としてもかなり良い部類のお客様でした。
「またの御来店、お待ちしております。ありがとうございました」
2度目の鐘が鳴り素材を買いに来た親父さんに、その話をした所。
「お前その方に失礼な真似はしてないだろうな?」
「だから言ったろ?失礼にならないように視線を置く場所に困ったって」
親父さんはほっとしたような顔をして「なら良い、俺達が安全に安い税で商売できるのはあの領主様のお陰だからな」
領主様かよ。領主と言うには若すぎる、聞くと1代目らしく本人の才覚のみで領主になったとの事。すげぇな。
鉄や銅などの買取も多かったが、それ以上に鍛冶屋が鉄や銅をかってくれたので、かなりの儲けになった。
その日、純利益は、約大金貨55枚と尋常じゃない稼ぎになった。
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