第14話挨拶回り

 まずは挨拶回りだ。まぁ手持ちの素材を一つずつ鍛冶屋や商会にうって回るだけだが。これは質が良い物を扱っているという広告のようなものだ。


 最初はこの前来た鍛冶屋だ。


「兄ちゃんまたクズ銀買いに来たのかい?あんまりないよ?」店番のおばちゃんだ。変な物を買ったので顔を覚えていたのであろう。



「今回は仕事の挨拶回りですよ。親父さんはいますか?」


「仕事?何を始めたんだい?」



「地金屋、まぁ素材を売る仕事ですよ」


 頷くおばちゃん「じゃあもしかしたらお得意様になるのかもね」



「親父さんが使えると思ってくれればですがね」



 少しばかし世間話をして工房にいる親父さんに会いに行く。


「お邪魔しますよ」



「おう、この前の変わり者の兄ちゃんか、また銀モドキ買いに来たのか?」



「今回はこれですよ」そう言っておれは鉄塊を渡す。



「おお、こいつは良いな、見ただけでわかるぜ。これをどうしたんだ?」



「俺はこういう上質な金属を売る仕事を始めたんですよ。宣伝目的で鍛冶屋にこいつを一つずつ売って回ろうかってね」



「因みにこの鉄塊はひとついくらだ?良い物でも高すぎると使えねぇ」



「鉄の相場の2割3分増しって所ですよ。待ち込みで精錬って場合なら1割り5分増し程度での額で引き受けますよ。その時余分なものを取り除くので量は減りますがね」



「思った以上に安いな。それでやっていけるのか?」心配してくれるのか、優しいな。



「良い物を安く売れば人は来る。そうすれば結局は高く売るより儲かる場合があるんですよ」



「成る程な、うちはお前の店から買わせてもらうぜ、とりあえず扱える商品を教えてくれ」



  体感で1時間ほど話し込んだ。



 それから15件の鍛冶屋や商会等を回って来た。反応も良く、ついでにクズ銀もある分はあらかた買い占めた。銅は流石に買い占める程の資金が無いので、安い所で買う程度に留めた。




 店兼自宅に戻り、早速抽出を始める。これは結果の決まった作業だ。しかし、楽しいのは抽出後の残りを鑑定するこの時間だ。これは丸々儲けだからな。



 今回は金、銀、クロム、チタン。あと原石と言って捨て値で買ってきた素材からパラジウムが手に入った。




 これはでかい。そう、ステンレスが作れるのだ。包丁なんか作って売るのも良いかもしれない。



 武器は鍛冶屋の領分なので作らないことにしよう。でも、アクセサリーや包丁などの生活用品くらいなら許容してくれるだろ。



 そうして、色々作り出したが・・・「暇だ」すぐ終わってしまうのだ。能力で作るのだから仕方ないとはいえ、あっけない。鍛冶屋が聞いたら殴られそうな話ではあるが仕方ない。



 自分用の物もいくつか作った。


 本格的な開店は明日だ。さてどうなることやら。

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