鈍感な先輩

「あー今夜はカレーが食べたいな」


私は先輩に聞こえる声でさも独り言のように言った。


「ふーん。食べれば?」


先輩の返しはわかっていた...


わかっていたがそこは「俺と一緒に食べないか?」とか誘ってくれてもいいのに。


まあ先輩の家のご飯にまで口出すことないけど


「カレーか...たしかに俺も食べたくなったな...」


先輩は独り言のようにつぶやいた。


これはチャンス。


「先輩、おいしいカレー屋さん知りませんか?」


チラッと先輩のほうを見た。


これで先輩が知っていたら「じゃあそこに行こうか」って言う流れになる!


「あーそれなら恭介にでも聞いてみるか。あいつひまだろうし、連れてってもらえば?」


違う。先輩違いますよ。ここは私と一緒に食べる流れじゃないんですか?


はあ。と私は深い溜息をついた。先輩は鈍感だ。それはもう鈍感すぎて私のアピールに全く気付かない。私が女としての自信を無くすほどだ。


「先輩は今日の晩御飯どうするんですか」


私はただの興味本位というか特に深い意味もなく聞いてみた。


「俺は今日は外食だしカレーでも食べようと思ってる」


なんでそれで私を誘わないんだよ!!!


私はこの時の衝撃を生涯忘れることはなかった...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートストーリ @takkun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る