第6話
やっと暖かくなる季節になるが未だ少し肌寒い。
優子の不眠症は段々と改善されている。
最近は毎日5、6時間を保っている。
今日はE店での仕事。
ここは店員の方も見ていなければいけない。
店員が盗みをすると、会社の先輩達や上司から聞いていた。
最近、腕時計が無くなる騒ぎがあった。
ブランドの指輪やネックレスを店員自ら盗むと言う事である。
万単位で高額だし、盗むのがみえみえで直ぐばれるのに、そんな事したら雇用すら危ないのに。
他の警備員からの話では、ある女性店員が自分のバックの中に指輪やネックレスを盗んでいるのを店員、警備員も見ているとも聞いている。
もう殆ど店側も知っていた。
検品する前に盗むらしい。
それは隠しカメラには映ってはいないらしい。
実際に目の前で、最初から最後まで見ていなければ捕まえる事は出来ないのだ。
その現場をしっかり現認しないと無理だから、今日はその店員がいるし私が見張る?
責任重大です。と会社に電話してその場から逃げたい優子。
「大丈夫よ!毎日しっかり仕事しているじゃない。盗んだ所を店側の他店員も見ているのよ。現行犯ね、皆がしっかり現認出来れば捕まえれる。」
会社の上司の声を聞き少しだけ安心するがそれでも優子は興奮して来るのが分かった。
その店員は自分の勤務時間が終わる頃に行動すると聞く。
店員が売り場の中にいる。
優子はこんな事本当にするの?!
疑問だった。怖いなぁ。
そして勤務時間が終了する頃その時だった。
店員の足元にバックを置くのが見えた。
そして手の中に検品前の腕時計一つを自分の上着のポケットから出してバックに入れかえているのを優子は見た。
あー。さっき検品前の腕時計を上着ポケットに入れたのを見逃さなかった。
優子はもう一人の女性店員も確認していると本人から聞いた。
全部見られているとは気がつかなかったのか、それにしても勇気あるなぁ。
そしてその店員は警察に捕まりお店も辞めたと上司から聞いたのだった。
今日はやっと春めいて来て道端でつくしんぼを見つけた。
優子の家の近くには田んぼが未だ残る地域。
その横にたんぽぽも咲いている。
今日はバス停迄歩いている。
電車に乗り浜松の薬屋D店が仕事先。
ここからバスでその場所迄向かう。
まだ9時。駅前の喫茶店で10分位休憩してからバスに乗る。
今日は紅茶にしてと。
優子はしばらくバスを待つ。そしてその間少し携帯電話のラジオを聴く。ヘッドホンを耳に付ける。
目的の場所のバスに乗り込み薬屋へ向かう。
今日は暖かくて眠くなる。
最近まで不眠は解消しているから陽気で眠くなるのだなぁ……と思う。
薬屋に着き事務所に向かう。
そしてその店員に挨拶して、さっ、仕事だ。
優子はこの行きだけでも1時間半位掛る職場についても月に一回位だから大丈夫と思う自分がいる。
店内は二階もある大きな造りの薬屋D店。
ここは一階に薬を置いて、二階は雑貨などがある。
今日は防止に徹しよう。捕まえるだけでは駄目なのだ、それが警備員の仕事。
上司や先輩、そして同僚皆が同じ様に感じている、防止や捕捉について。
これがいつものテーマなのだ。
このお店はまだ新しいなぁ。
1人の70代位の女性のお客さんが2階で右手にハンカチを持ち死角になる売り場でバックに入れた。
そして今度は1階に降りて目薬や下剤を手にして挙動不審になるが、これらをレジに持って行き購入する。
一階でこの商品を取る前に優子に気づく様な素振りをしてその後に、商品を手に取り購入した。あれは最初から買う雰囲気では無いなぁ。
優子は警備日誌にそれを書いていた。
その日は防止に出来た。
優子はそう思ったら、少し肩の力が抜けて行くのが分かった。
バスの中でやっと防止と分かる出来事がありこの日の帰りは気が楽になっていた。
そしてこの頃から少しずつこのGメン警備員の仕事を辞めたいと思う事を考える事をしなくなって行くのだった。
Gメン日誌 月のきおん @kioco
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます