運命の手

春風月葉

運命の手

 また、私は結末を知りながら愚かにも約束を交わした。

 次は絶対にハッピーエンドにしてみせると。

 この物語の終点は私の手が決める。

 暗い部屋でペンを滑らせる。

 私の一存で全ての幸福と不幸が決まる。

 しかし、この物語に幸福は存在してはならない。

 この物語はただ、不幸の中にしか幸福を見出すことのできないたった一人の愚かな男のために綴られる。

 この物語に私という愚者は存在しないのに。

 また一人の運命は定められ、新たな不幸が生まれた。

 ペンを握る私の顔はきっと、幸福に満ち醜悪に歪んでいただろう。

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運命の手 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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