第3話 死者からの使い アッサムミルクティー

スラッとしたイケオジは律架をスマートにテーブルに案内してくれ、オシャレなティーカップに紅茶を注いでくれた。


「アッサムミルクティーです」


イケオジはサラッとそう言った。


「あ・・・ありがとうございます」


律架は思わず緊張しながら紅茶を受け取る。


「私は、便利屋ハウツーの社長、黒瀬です。それで、君を連れてきたあの男はね・・・」


「あっ!俺は倉橋大吾!南條大学薬学部2回」


倉橋大吾と名乗った彼は、黒い戸棚の上に積もった埃をパタパタと掃除しながらそう答えた。


「えっ・・・?じゃあ先輩?」


「え?マジ。君も南條大?」


「はい。薬学部1年です。」


「そうなんー!よろしくー」


そんなやり取りをしていると、社長が嫌そうな顔で口を挟む。


「おい。大吾。お前、掃除してるつもりかもしれんが、余計に埃が舞い上がってるぞ。」


「そんなんしゃーないやん。社長が掃除せーへんせいやで。あっ。ところで、君、名前は?そして依頼はなに?」


「あ・・。えっと。橋場律架です。あの・・。わたし、依頼者じゃ無くて、大学に貼ってあった求人募集を見て・・・」


「え!?それで来てくれたん?!」


「あ、でも。偶然で。さっき、ジャージを着た男性を連れ去ってましたよね、倉橋先輩」


「人聞き悪いなー。連れ去ったんやない。依頼者の元に連れ戻したねん。あのオッサン、ほんま大変やったわー。てか、それがなんなん?」


「いや。それがなんか気になって。ついて来たら、偶然見てた求人の場所やったっていう・・・。」


「自分あんなん気になったん?変わった子やな。あれはただ単に家出したニートを親御さんに頼まれて連れ戻したねん。ふーん・・。で?うちで働いてくれんの?」


倉橋はにやりとしながら律架に近づいた。


「えーっと。あのー・・・」


「なあ社長。常に人手不足やもんな」


社長はアッサムティーを飲みながら頷いた。


「まあな。特に女性の人手は助かるが・・・。お嬢さんにあまり危ないこともさせられないしなあ・・・」


「ちょっとしゃちょー、そんなんばっか言うてるからいつまでたっても人手不足やねんで?大丈夫。当分の間は俺と一緒に行動すればええねん。薬学部なんやったら大体のスケジュールも分かるし」


勝手に話が進んでいることに気が付いて、律架は慌てて口を挟む。


「あの!・・・アルバイトってどんな仕事するんですかね??」


「あー。どんな仕事・・・?まあ。便利屋だから頼まれたことを何でもやるって感じだけど・・・なあ、しゃちょー。」


「そうだな。まあうちは便利屋の中でも変わった依頼は多いかもしれないけれど」


社長がそう言った時、律架の顔の横を凄い勢いで何かが横切った。


「きゃっ!!!」


その声に倉橋は律架の後ろ側に目を向ける。


「あ。来たで、しゃちょー」


「ああ・・・。申し訳ないね、橋場さん」


「あ・・・あの・・・?」


「うちの依頼、大体こんな感じで来るから」


倉橋は平然と言いながら、その手には一本の矢が握られていて、その先端に依頼文の書かれた紙が挟まっていた。その瞬間、律架は来てはいけない場所に来てしまったと思った。


「わ・・・わたし、やっぱり帰ります!!」


「あ!ちょっと!待ってや!大丈夫やって!!!」


律架には何が大丈夫なのかさっぱりわからなかった。

急いでお屋敷を出て駅を目指した。その時点で、門限を少し過ぎていた。


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