四月五日『デイリー・テレグラフ』紙
「切り裂きジャックか? ホワイトチャペルの娼婦、惨殺される」
昨夜未明ホワイトチャペルの路上で、女性の他殺体が発見された。被害者の身元は娼婦のセーラ・クルー。仕事帰りに夜道をひとりで歩いていたところ襲われた模様。目撃者は見つかっていない。死因は頸動脈を切り裂かれたことによる失血死だ。凶器はナイフのような鋭い刃物と思われる。現場から凶器は見つかっていない。奇妙なことに、現場には出血の形跡がほとんど残されていなかったという。また周辺住民の証言によると、犯行時刻とおぼしき時間帯、現場付近には濃霧が発生していた。不思議なことに、昨夜のロンドンでそんな霧が発生していたのは現場付近だけだった。ホワイトチャペルの娼婦が刃物で殺されたことから、昨年世間を騒がせた切り裂きジャックの犯行が疑われる。捜査に当たったロンドン警視庁のレストレード警部によると、手口が若干異なるため、模倣犯の可能性が高いとのこと。昨夜の成功で味を占めた犯人が、ふたたび犯行をくり返さないともかぎらないので、夜遅く女性の一人歩きは控えるよう呼びかけている。もし犯行を目撃したというかたがいらっしゃいましたら、ロンドン警視庁か当編集部までご一報ください。
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