十四章 終幕の序曲
平野平秋水の意識が蘇った。
目が覚めたとき。
目の前には白い天井があった。
定番通り、心電図や血圧計の音が耳に入る。
腕などの違和感からして何本か針や管が体に入っているようだ。
――俺、生きているんだ
ぼんやり思う。
銃に撃たれ意識を失いそうになったが、何とか正行たちに妻を任せ救命艇を下すことはできた。
その後、敵は動かなくなった秋水を置いて避難した。
後姿を見て、秋水はゆっくり動いた。
辺りは火の海だ。
出血による意識消失と船の爆発まで時間はない。
死を覚悟した。
だが、足元を見ると床に取っ手があった。
持てる力で開けると空洞になっていた。
非常食を入れていたのか、梯子を入れていたのかは分からない。
しかし、辛うじて秋水の巨体を入れられる箱である事には間違えない。
素早く中に入り蓋を閉め、それから意識を手放した。
目が覚めたら病院の集中治療室であった。
意識がある事が分かると、個室病棟に移された。
医師も看護師も年配ベテランが担当した。
いくら話しかけても無難な相槌のみで能面のように表情が無く、血液を採り、手際よく処置をして包帯を交換して去っていく。
辛うじてトイレには自力で行ける。
後は退屈だった。
まず、場所が分からない。
部屋は外から鍵がかけられている。
テレビのチャンネルを回してみると番組の順番などが地元の豊原県ではないことが分かった。
また、地域の話題や天気などを見ると豊原県を有する深海地方ではなく、関東である事が分かった。
あの船の襲撃は『無国籍の移民船が難破して故障し爆破した』ということになり、兵士たちは『難民』として母国に移送されることになった。
暇であった。
そこで外に出ることにした。
警備員が常駐している入院病棟から抜けることは、秋水からすれば遊びに等しかった。
翌日には、患者着のままだが病院近くの海岸を歩いていた。
潮風が冷たい。
「もう、大丈夫なのか?」
後ろから声がかかった。
驚くこともしない。
「おう、だいぶ楽にはなった。これでへばっていたら爺様のしごきに堪えられないぜ」
声の主、ポーは苦笑した。
普通なら、まだ寝たきり状態が当たり前なのだ。
「常識がないな……流石は『星ノ宮の鬼』だ」
独り言らしいが秋水の耳にはしっかり届いた。
秋水は歩みを遅くしてポーと並んで歩いた。
「悪かったな……常識がなくって……それに、俺たちは鬼とは名乗ってない」
ポーは口に手を当て軽く笑った。
下品ではないが、秋水は何か業腹に来た。
「しかし、難儀な人たちだ……自ら望んで人々の傷や恐怖を背負い、共に歩む……平野平家の者たちと石動肇は難解なことをいとも簡単にやってのけてしまう」
こう評されて秋水は苦笑した。
「まあ……先祖代々、似たようなことをしていたみたいだから俺たちに取っちゃ当り前さ。立派なものじゃねぇよ」
その言葉にポーは黙った。
しばらく、二人は無言で歩いた。
後に知ったことだが、この海岸は病院のプライベートビーチだという。
そもそも、秋水が入院している病院は芸能人や政治家も利用する私立の病院で新聞や雑誌の記者などはもちろん、警察の介入すら拒否する。
秘密厳守であり、『高級』な病院と言えよう。
少なくとも、公立の病院とは違う。
「今から黙って何もかも忘れて、名前すら捨ててどこか遠い場所で生きるという選択肢は考えたことないのか?」
ポーは、秋水を見た。
少し考えた。
不真面目に答えることもできたかもしれない。
だが、秋水は真面目に答えた。
「たまに考えることはあるさ……こんな商売だ。人の嫌な業とか辛い場面に遭遇することはよくある……でも、たぶん……死んだ爺様も、俺も、正行も、石動も、人といるのが好きなんだろうね」
だが、ポーは聞き返す。
「平野平秋水。いや、『霧の巨人』。お前ほどの腕を持った傭兵を各国の軍隊が無視するほど無能ではないぞ」
「だぁかぁらぁ、傭兵や鬼は店じまいして、今は地域密着の『
ポーは、そんな秋水を睨む。
秋水は足を止め、ポーを睨み返した。
ポーも足を止める。
折れたのは……秋水のほうだった。
「俺もさ、不思議なんだよな。それこそ、正行ぐらいの頃は血気盛んに『世界一の傭兵になってやる』と思っていた……いや、親父の裏仕事を疎ましく思っていて否定したかったのかも知れない」
再び、二人は歩き出す。
歩きながら、秋水は自分の体を機械整備のように確認した。
ポーの指摘通り体の各所が悲鳴を上げていた。
たぶん、爆破の影響だろう。
ただ、幸いなことにポーと海岸を歩き話してみて聴覚、視覚、嗅覚などの感覚や脳は正常通りだ。
『あと、少しは様子を見るか……』
今、正行たちがどうしているか知る由もない。
でも、そのためには体を万全にしておきたかった。
再会の場所が平穏とは限らないからだ。
「俺は……」
ポーは話しかけ、少し戸惑い、再び口を開いた。
「今の俺はあくまで私用でここにいる」
この言葉は日本語ではなかった。
ツンドラ語であった。
母国語としていない人間でもない限り、ツンドラ語を理解し話す人間は少ない。
秋水は、多少ツンドラ語を理解していた。
ポーと一緒に仕事をしたときに他のツンドラ人から語学などの手ほどきを受けたのだ。
それは、ポーも承知していて言葉を選びながら訥々と話した。
「今日は、盗聴器もスマートフォンも持ってきていないから安心してくれ」
ポーはそう宣言した。
周りを見ても誰もいない。
細い海岸に男二人が歩いているだけだ。
「俺には、愛する妻がいた。愛する娘がいた」
「今は、いないのか?」
秋水もツンドラ語で返す。
ポーは静かに頷いた。
「妻と初めて会ったのは仕事で訪れたオーストリアだ。当時、俺はピアノの調律師に扮してターゲットに近づこうとしていた」
秋水はポーの教養に舌を巻いた。
「幸い、作戦は成功した。だが、一日余分に滞在期間がある。俺は単純に観光することにした」
ポーは懐かしむように鋭い目を少し細めた。
「時期は春先だったと思う。観光客が少ないドナウ川の川沿いを歩き、アンカー時計の門をくぐり、夜には事前に買ったチケットで国立オペラ座の音楽を聞こうと思っていた。シュテファン大聖堂に向かう前に俺はホテルに腕時計を忘れたのを思い出した」
秋水は黙って聞いている。
「部屋で時計を腕にはめると、昼前で小腹が空いてロビーでケーキと紅茶を頼んだ」
「……」
「美味いケーキだった。俺は食に関しては詳しくないが、それでも、驚いた。甘味の無いゆるいクリームに絶妙に合ってあっという間に食べた。紅茶もすぐに飲み干した。人生で初めて舌と胃と心が満ち足りた」
「それを作ったのが奥さんってことか?」
「ああ……尋常じゃない俺の食欲に厨房からやってきた。恥ずかしかったが、でも、一目で好きになった」
「『闇夜のバタフライ』も、人間味があったのか」
冷やかし同然の言葉をポーは片方の口角を上げるだけで返し、続けた。
「無理して、その日のオペラ座特等席を取った。俺は、『スパイ』として上司と掛け合い、ウィーンに拠点を移した」
そこで、ポーは一息ため息を吐いた。
「彼女の前では俺は『腕のいいピアノ調律師』だった。その腕で世界を飛び回る程度のな……」
また、秋水は驚いた。
スナイパーの限らず、銃を使う人間は耳に障害を持つものが多い。
発射時の爆発音などが鼓膜などを機能不全にさせるからだ。
嘘を現実に見せるために多少は実際に人前で調律をしたはずだから、絶対音感の持ち主なのだろう。
「俺たちは、恋をし、愛し、郊外の静かな教会で二人だけの質素な結婚式をした。子どもが出来た。毎日が幸せだった」
と、ポーの顔が苦渋に満ちた。
「幸せだった……はずだった。ところが、俺の中で幸せより恐怖が覆うようになってきた。平野平秋水、お前も家族がいたなら分かるはずだ。
そろそろ、満ち潮なのか、足元の近くまで海水が近づいてきた。
二人はそろって陸地側に移動して再び歩く。
再び、ポーは語りだした。
「そんな中、妻が病気になった。四方に連絡して金に糸目はつけなかった。『なんでもっと一緒にいなかったのか⁉』と自分を責めた。だが、妻は死んだ……天罰だと思ったよ。こんな俺は『幸せになったはいけない』と言う啓示だろう」
だいぶ日が傾いてきた。
「幸い、俺たちの結婚に反対していた親族がいて娘をそこに預けた。俺は、元の……何も持たない自分に戻った。甘い日々を忘れようとした。だが、残るのだ……」
そう言いながら秋水を見た。
「特にお前たちを見ていて辛くなった」
「何で?」
ポーはしばらく迷い言った。
無感情が売りの男にしては珍しい。
「お前たちはお互いを愛し合っている。尊敬しあっている……あの頃の俺たちのようにな」
その言葉に秋水は苦笑する。
「俺は、迷っている……『自分の選択は正しかったのか?』と……」
「俺たちの世界は生き残った者が勝者であり正しさの証明だ……お前は少なくとも『間違ってはない』」
秋水の言葉に今度はポーが苦笑する。
「納得してない顔だな」
ポーの顔は曇っていた。
「それだけポーは、奥さんと娘を愛していたという事だ。簡単に捨てられないのなら墓場まで背負っていくしかないだろう?」
ポーの目が驚いたように丸くなった。
意外とかわいい。
「変に慰められたり、説教をされたり、同情されるかと思った」
「俺も最近、似たようなことを言って呆れられた」
あの日の夜に、石動が言った言葉を思い出した。
『おやっさんの人生はおやっさんのものだから、自由にしていいんですよ』
「……己の憎しみに身を燃やすもよし、全てを忘れて隠居するもよし……すべては自由さ。少なくとも、お前はその力と金があるはずだ。同時に背負った呪いは解けんかも知れないが……」
と、こんな言葉が口に出た。
「でもな、『自分には大事なものが無い』なんていうのは相手を大事出来ないやつの言うことだ。亡くなった奥さんと別れた娘さんを思うのなら二度と言うんじゃねェぜ」
「……」
自分でも意外な言葉だった。
ポーは呆れているのか閉口している。
「平野平さん」
女性の声がした。
前を見ると、コンクリートの階段の傍で師長らしき白衣を着た年配の女性が立っていた。
横を見ると、いつの間にかポーはいない。
「すいません‼」
この瞬間、わき腹が痛くなった。
数日後。
わき腹の痛みを訴えても相も変わらず医師も看護師も能面な表情を崩さない。
飯を食い、十二分に寝て、体がだいぶ調子を戻してきた。
わき腹の痛みは医師が処方した痛み止めを飲んでいるが、あまり効いてない。
その日の夕方。
秋水はクローゼットを開けると、船に襲撃した時と同じ服と武器が入っていた。
色やサイズは同じだがすべて新品である。
たぶん、病院を抜け出して海辺を散歩している間にポーか彌神あたりが用意してくれたのだろう。
――お前の仕事は終わってない
という、無言のメッセージだ。
秋水も正行達に会いたかった。
きっと、心配しているだろうし、怒られもするだろう。
それでいい。
患者着から服に着替え靴を履いた。
部屋を抜け出し、駐車場に出ると愛車のナディアが隅の方に駐車していた。
ポケットの中に入っていたキースイッチで開錠して中に入る。
特別の変化はない。
ただ、綺麗に掃除されていた。
シフトレバーの溝のゴミや吸い殻でいっぱいになった灰皿には塵一つない。
ほぼ新品同然だ。
脇を見ると整備しておいた銃の入った箱が置いてあった。
辺りに誰もないことを確認して状態を見る。
良好のようだ。
エンジンをかけるとカーナビ(に見せかけた追跡装置)が勝手に起動し道案内のアナウンスをする。
服を用意したものが「ここに行け」と指示しているのだ。
きっと、ここにも整備した人間の手が加わっているのだろう。
――後で石動に頼んで排除してもらおう
場所は星の宮の自衛隊払い下げの土地。
確か、サバイバルゲームなどの訓練場になっていたはずだ。
それから、自分の所在地を見て驚いた。
神奈川県の葉山だったのだ。
これで芸能人や政治家が集う病院の存在理由が分かった。
彼らは最初から地域密着など考えてないのだ。
金の有り余る芸能人や政治家から金を効率よく取る病院なのだ。
立地的にもいい。
病気などを隠すのには絶好の場所だ。
たぶん、末端の職員にも緘口令は敷かれているだろう。
そんなことを考えなら秋水はナディアを動かした。
約三時間でカーナビの案内は終わった。
ほぼ、森の中である。
――そういや、スマートフォンはどうした?
と思っていたが、あっさりダッシュボードの中にあった。
入院中に変な細工をされていないか確認をするが、操作した限り不具合などはない。
正行と石動に電話をかけるが音信不通になっている。
木々の間に車を隠し拳銃を装備して外に出てみる。
何処かで戦闘をしているざわめきが聞こえる。
秋水は傭兵であった。
長年の勘で、そのざわめきが訓練によるものなのか、本当の戦闘なのかは瞬時にわかる。
やはりというか、逃げる兵士が来た。
素早く隠れて兵士を手早くヘッドロックする。
動きに精彩を欠くかと思ったが、思った以上に体が動く。
ただ、わき腹が相変わらず痛い。
相手も悲鳴を出そうとするが、頭部全体締めあげられ声が出ない。
軍服の腕章を見るとバイスの紋章があった。
よく見ると日本人のようだ。
現地スカウトされたのだろう。
「どうして、ここに来た?」
出来るだけ低く、静かに、相手を威圧するように声をかける。
少し脇を緩める。
「……奴らだ」
「奴ら?」
バイスの兵士は涙目で言った。
「木刀を持った体格のいい男と細身で髪の毛を縛った奴だ」
この瞬間、石動と正行の顔が浮かんだ。
大方、『敵討ち』だろう。
『彼ららしい』と言えばそうだ。
――こりゃ、少し急がないとダメだな
そう思いながら兵士の首を解放すると手早く手刀を打ち込む。
突然のことに地に伏し気絶する兵士。
誰かが来なければ、あと数時間は意識を失ったままだろう。
秋水は森を抜け、丘に出た。
そして、石動と正行たちと再会した。
彼らは最初怒り、次に泣いた。
妙に照れくさい気持ちだ。
軽口を叩けば、怒られるだろう。
だから、黙っていた。
彼らの興奮が冷めた頃。
敵も動き出した。
「ありったけの弾丸ぶっ放して大暴れしつつ臨機応変で敵のボス目指して中央突破……俺たちらしく派手に行こうや」
「銃を持っているのおやっさんだけですよ」
「それってなにも考えがないってことじゃん」
正行たちは久々の三人で行動することに胸を高鳴らせていた。
だが、秋水のわき腹の痛みは、いよいよ痛みがひどくなっていた。
崖を滑るように下りながら、文字通り秋水は弾丸をぶっぱなし遠くに見える廃墟と化した司令部に向かった。
廃墟のはずなのに明かりがある。
それこそ、『バイス』が個々を秘密基地にしている証である。
そこに『ジック』と『バイス』の親玉がいる。
だが、わき腹の痛みはますます、酷くなっている。
過去、秋水は尋問や戦闘中に体に多くの傷を負った。
中には未だに体に痕が残っているものすらある。
だが、この痛みは体の内側からじんわりと深く痛む。
――毒?
――まさか……
――自分を殺してどうなる?
いや、以前から時々痛みはあったが事件が起こる前に行った市の健康診断では、何処にも異常がなかった。
入院していた葉山の病院の関係者が買収され毒物を混入したとしても、あの薄い味付けの料理ではすぐにばれる。
「おやっさん、大丈夫ですか?」
ほぼ、一通りの敵を、約五十人以上の敵を倒した。
時に個別に。
時に協力して。
時に援護して援護された。
さすがに、息が上がる。
年齢かも知れない。
いや、違う。
わき腹が痛い。
激痛だ。
「親父?」
正行は心配そうに声をかける。
脂汗が滲む。
今すぐ倒れて悲鳴を上げたい。
何かが体の中で内臓を刺している。
息が上がる。
眩暈がする。
だが、ここは戦場だ。
全てを倒したわけではない。
少なくとも、最後の敵がいるはずだ。
荒い息を整え、深呼吸する。
「大丈夫だ……」
少し、楽になる。
だが、次の瞬間。
建物の最上階の窓辺から徐々に爆発が始まった。
骨組みごと爆破しているのか爆破解体のように見える。
書類の類は爆風と共に、その日に焼かれながら舞い落ちる。
中にいた兵士たちも突然のことで、文字通り蜘蛛の子を散らすように出てきた。
秋水たちには目もくれず逃げていく。
目の前が炎の色に染まっていく。
「ひぃいいいいい、助けてくれぇエ‼」
最後に出てきた男は、軍服のようなものは着ていない。
多少汚れているが、一流のスーツだ。
男は正行たちを見つけ、すがってきた。
「助けてくれ、殺される‼」
「え?」
秋水たちは戸惑う。
「その人間をこちらに渡してもらう」
最後に建物から出てきたのは、同じくスーツ姿のポーだった。
だが、その歩みはゆっくりであった。
「彼はジックとバイスの親玉……ヘルガ・オロフソン。表向きはツンドラ王国対外組織の上層部の人間だ」
縋りつく男に秋水たち三人の目が注がれる。
「そして、彼はツンドラ王国から海外へ密輸をしていた」
「何を……ですか?」
正行が恐る恐る聞く。
「これだ」
ポーは胸ポケットから何かを取り出し正行に投げて渡した。
返答らしい。
慌てて受け取る正行。
秋水、石動も視線を移す。
「牙……? かな?」
正行は戸惑っているようだ。
そのエナメル質の小さな歯は鋭く尖っていた。
「見た目からして肉食獣……ただし、これは子供の歯だな」
「流石だ、平野平秋水……これはツンドラセツゲンヒョウという希少なツンドラ王国にしか生息しない豹の子供の牙だ……」
その言葉を聞いて石動はいち早く察した。
「まさか……」
ポーの言葉には絶望と悲しみがあった。
「親子ともども殺された……牙はアンティークに、毛皮は装飾品や衣類に……野生の生息数は、すでに危機的状況だ」
「ひでぇ……」
正行は声を漏らす。
そして、ヘルガを睨む。
痛い視線を逸らすようにヘルガはポーに向かい叫んだ。
「何だ、何なんだ‼ 貴様は何者だ⁉ 上官の俺に逆らって……」
その絶叫にポーは静かに答えた。
「私の本当の名前はジョン・ポー・ジャンク。ストークマンは養父の名前だ……本当の職業はLIR(Life Investigation Agency)の密偵」
「世界的自然保護団体の一つだな」
石動の脳はすぐに反応した。
「こいつを出して、ツンドラ王国の連中がしている密輸を……」
「いや、違う」
正行の言葉をポーはすぐ否定した。
懐から黒い物体を出した。
背後からの強烈な光に最初、何を握っているのか何かが分からなかった。
よく知っている道具だと分かったのは一分ほどしてからだろうか。
ポーが出したのは、グロック17。
軍用、警察用に開発された自動拳銃である。
そして、ポーは恐ろしいことを言った。
「俺は、この男を殺す」
それから、笑顔になった。
「真っ新な人間になるために……」
その笑顔は爆炎と相まって迫力がある。
その瞬間、秋水は突然、意識を失った。
ポーの笑顔を見て倒れる。
――あいつ、こんないい笑顔できたんだな
意識は、ここで止まった。
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