第3話 大阪夏の陣

 幸村とリュウは茶臼山の遥か上空にいた。

 雲一つない青空。

 上空からは重箱にギシギシに詰めたように配置されている徳川軍十六万の軍勢が手に取るように見渡せた。

「死体に群がるうじ虫だな」

 幸村は髪をかきむしりながらひとりごちる。

 目指すべき徳川家康本陣は天王寺口の南。

 その数約一万五千。

 いや、この際、数は関係ない。

 敵は家康一人だ。

 幸村は地平線の方を見る。

 正面には大和国の山々、その奥の大海原が一望できる。

 首を右に向けると淡路島、四国が見える。

 空を飛んでいるものにしか見ることができない圧倒的で荘厳な景色だった。

「そういえば」

 幸村は竜語でリュウに話しかける。

「おまえに初めて乗った日もよく晴れた日だったな」

 リュウは特に幸村の方を見ずに一言。

「ウン」

 幸村は苦笑するとリュウの首を軽く叩いて言った。

「ほんとに覚えてんのか?」

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