第9話 波乱

入学してから1ヶ月がたった。


入学歓迎の課題である時間を言葉通り生き抜いてみせたわけだが、依然として学園側からの招集や接触は無い。


今年4月に日本軍事要塞学園都市に入った316名の生徒も現在では112名にまで減っていた。

勿論204名の生徒全てが死んだ訳ではなく行方不明を含めての数だ。


つまり、校則にある全校生徒が40人以下になれば無条件で全校生徒が殺される事に現実味を帯び初めたという事だ。入学当初絶え間なく続いた生徒間の争いは、すっかりと消えて新入生は大きく分けて4つの派閥に別れた。


3つの派閥は、学内にある幾つかの軍事施設のうち1つずつを獲得している。


その内2つの組織は銃火器を所有して毎日射撃や軍用車の扱いを練習している。

その情報が入った当初は軍人の真似事だと笑う者もいたそうだが、着実と実力をつけ始めて今では2組織とも統率の取れた大きな組織にまで発展した。

ただ、組織どうしで争い続けて死傷者を多く出した事から依然として冷戦状態が続いている。

だが、相手の言葉を聞かず、仲間以外が陣地に近づくだけで全勢力を持って威嚇する関係は死傷者を出したというだけではなく考え方が圧倒的に違う事が大きな要因らしい。


その中でも1番警戒されている組織がクロスキラー。

統括者はジョーカーと名乗る者で、仲間ですら素性を知らされていない謎の多い人物だ。

皆がこの者の下で死ぬ事を望んでいるらしいく、中には神と呼び崇めているものもいるらしい。

宗教じみて気味が悪くもあるが、その高い信頼と優れた統率力は脅威と呼ぶに相応しい。

それだけでなく、目的遂行の為なら敵味方関係なく何人死んでも成し遂げるというのがジョーカーの信念らしい。



そして、もう1つの派閥は紅という女性のみで結成された組織だ。

その組織を統括する鍵山は幾つかの規則を作り、破った者には相応の罰を与える。

噂によると未だ規則を破った者はいないらしく、統括者である鍵山は仲間からの高い信頼を獲得している。


俺の耳に入った規則は、仲間同士の争いを禁ずる、日々訓練に励む事、自身の命を大切にする事。

この人道的な性格が信頼される要因なのだろう。



そして、3つ目の組織は反抗心むき出しの古典的な不良グループで組織名は夜桜組。


この組織だけは活動内容の一切が不明で、分かっている事は、統括者が大将と呼ばれている事と名前が光月永遠という事のみ。

そして、食料運搬以外は建物外に出てこない事から周りにビビってると思われている。



そして、最後の派閥はこの3つの組織に属さない者達だ。

多くで群れることを拒み、自由にやっているもの達。

俺達もここに分類されるが、このひと月で根城にしている地下室は人数が増えた。

俺を含めた6人は地下室同盟という適当な名前を付け組織化した。

やっている事は他の組織と大きくは変わらず、食料の確保と武器の調達に少しの訓練。

他組織と違うところは当初の目的である兄の情報を探る事と、翔瑠の友達の運ばれた場所の特定などだ。


ひと月の間に成しえた事は翔瑠の友達のいる場所を特定した事。未だ救出できていない要因は単純に警備が固く、正面から行けば確実に全滅するという事。

少しでも勝率を上げるために俺達はこの間に出来るだけの情報と武器を集めた。


—地下室内に6人が集まり、喋ることなく各々が武器の手入れをしている。



張り詰める空気。



本日、綾の救出作戦が決行される。




「行こう……作戦開始だ」

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子供PЯOJECT 華蓮 結愛 @yua-ur

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