第8話

 あの雲ひとつない空に浮かんでいた太陽は気づけば沈んでいた。

 暖かかった昼に比べて夜は未だ真冬の寒さが続き、体の動きと頭の回転を鈍らせる。


 さっきまでは騒がしかったこの学園都市も多少は静かになったようだが地下室内は重苦しく異様な空気に包まれている。


 何故か監視カメラに映っていた男は地面に膝をつき、世界でも滅んだかのように絶望感満ち溢れる表情で俯いていた。その男を連れてきた問題児様は腕を組んで、何時ものやる気のない目を閉じて考え込んでいる。


「あのー、えっと……何かあったんですか?」


 できれば関わりたくはなかったが重い空気を何とかしたく口を開いてしまった。


「さっきの戦車って乗り物に友達連れてかれちゃったんだってぇ」


 は?何言ってんのこいつ!?連れてかれたって……?


「えーっと……その友達はなんで連れてかれたのかって、聞いても……?」


 膝をついて俯いていた男は、はっ!と何かを思い出したように立ち上がり一瞬焦った表情になったが、すぐに冷静になった。


「俺達は寮を探して彷徨っていた所……いきなり襲われた……」


 男はこの後も話を続け入学した経緯や連れて行かれた友達とは幼馴染だった事、そして理由もなく十数人に襲われ友達だけが連れ去られた事を。


「ここに至る経緯は分かったんだけど、友達に関しては目的が……」


 そもそもこの学園は情報が無さすぎるんだよ。

 話を聞くに軍服らしき服を着ていて何者かの指示に従っていたらしい。トランシーバーでの連携が取られていたことから学園の軍隊が動いているのかもしれない。


「そういえば……あいつら能力がなんとかって……。確か、カバラって言ってた」


 能力?カバラ?

 聞き覚えは無くはないが思いつくのはこれしかない。

 日本最古の秘密結社の八咫烏。あまり詳しくは知らないけど身寄りのない子供を拉致してカバラという超能力を使えるようにする為の英才教育を施す。


 ってまぁ都市伝説なんだけど……。


「カバラってギャンブルか?」


 隼人の存在を忘れてた!ってかそれはバカラだから!!


「あー、あのトランプの……あいつギャンブルしないはずなんだけどな?」


 こいつも隼人と同じ匂いがする。俺は心の中で突っ込みすぎて疲れたよ。


「ギャンブルはバカラだよ、カバラは超能力みたいなものって聞いたことがある」


 まー、ほとんど何も知らないんだけど。


「超能力!?すげぇー」


 やる気のない隼人が見せた初めての高テンション!?終始ジト目だったのにそんなに目開くのか!


「じゃ綾は超能力使えたのか!?」


 いや。だからただの都市伝説なんだけど……。


「超能力が使えるなんてありえないよ、カバラがなにかは分からないけど間違いなく手掛かりにはなると思う」


 超能力を否定したせいなのか2人はあからさまに落ち込んだ。


「歩ぅー、その綾って子一緒に探そぉ。」


 こいつは何を言ってんだ!?自ら面倒に巻き込まれに行く奴を馬鹿って言うんだ!!


「いや、これ以上迷惑かける訳にはいかない。二人ともありがとう落ち着いたよ」


 なんて礼儀正しくいい人なんだ、不良にしとくのはもったいない。ここはお言葉に甘えて……


「大丈夫だよぉ、歩はこう見えて頼りになるんだぞぉ。皆で探した方が早く見つかるし」


 男は少し考え込む仕草をしたが「ありがとう、巻き込んでしまってすまない」といい了承した。隼人は俺の方を向き親指を立て嬉しそうにしていた。俺は……もう、どうとでもなれという気持ちです。


「改めまして、俺の名は翔瑠。これから世話になる」


 こうして、地下室に一人増えた。

 早速隼人は翔瑠に話しかけてるが会話の内容が喧嘩なので俺は気付かれないように距離を取ったが、楽しそうに話す二人を見て俺も少し嬉しくなった。

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