第5話

 1つしかない最後の希望だった退学して一般家庭に戻る手は虚しく消え安全な場所を探すべく1時間以上歩いている。

 相変わらず周囲至る所で喧嘩が繰り広げられていて心無しか入学式前よりも激しくなっている気がする。

 トラブルに巻き込まれることを避ける為に周りの獣さながらなヤンキーに目をつけられないように、できる限り目立たないように歩き続ける。



「安全な場所なんてあんのかなぁ。不良が来なさそうで一夜を過ごせるところなんて……」



 全国の危ない人を集めた無法地帯の監獄学園に安全な所など無いのではと弱気になっていた。



「おい」


 等々最悪の事態が起こってしまった!

 おい?それはもしかして、この喧嘩なんて言葉すら知らなそうな世界最弱にしか見えない俺の事かい?いやでも間違いなく俺を見てる……ここで無視したら間違いなく喧嘩になる……。



「俺……ですか?」


「ん?お前以外いないだろ?」


 話しかけてきた男は見るからに不良だけど、戦意どころか生きる気力すらなさそう。


「俺入学したばっかでどこに寮があるかとか分かんなくてさ……お前しらね?」


 すぐにポッケから地図を出し「あっ、えーっと」と少し焦りながら探しては見るものの、俺自身もそれらしき場所がいくつもありすぎて1時間ほど前から探している途中だと話した。


「そぉか……んじゃ俺も一緒に探していいか?仲いい人もいなくて困ってたんだぁ」


「えっと、俺も仲良い人いないし、人手があるのは助かりますが」


「そんじゃ決まり。俺隼人君は?」


「三神歩って言います。よろしくお願いします」



 どうしよう、面倒くさいことになった。悪い人ではなさそうだけどヤンキーの友達なんて怖すぎるし共通の話題も思いつかないんだけど。



「歩はさ~なんでここにいんの?歩悪そうに見えねーしヤンキーでも無さそうなんだけどぉ」



 速攻バレた!?このヤンキー見る目ありすぎるだろ!いや、誰がどう見てもヤンキーには見えないか。



「隼人の言う通り俺はヤンキー所か喧嘩もしたことないんだ」


「そんなん見りゃ大体わかるし、強いやつの匂いもしない。そんな優等生がなんでまたこんな学校に?」


 聞かれて嫌なこともないし話すか。


「4年前ここに入学した兄が帰ってこないんだ。心配した両親が兄を見つけるために無理やり俺を入学させた。」



 喋りながら悲しくなって自然と俯いた。



「なんか大変そうだな。その兄貴はまだこの学園に?」


「……」


 この沈黙に隼人は首を傾げこっちを見て話すのを待っているようだった。俺は別に話したくない訳ではなく、以前調べたこの学園の噂などを思い出したからだ。



「調べたんだ、ここに来る前に」


「それで、ここにいる可能性が高かったの?」


「いや、調べたのはこの学校についてなんだ」


 少し重い空気が漂い隼人の目が真剣になっていった。


「この学園に入学した人は俺の兄だけじゃなく全ての生徒の行方が不明になってた」


「ん?ここ卒業したら俺らは軍に入るってきいたけど?違うってこと?」


「俺もそう聞いてるけど違うかもしれない。日本にある軍に問い合わせたし、外国の軍の名簿リストも手に入れたけど入学した生徒は誰一人として名前がなかった」


「それって、ん?どういう事だ?」


「おそらくこの学校には何かある。隠蔽していることも多いはずだ。例えば外で得た情報には死者がでたことは無いが、ここに来てから何人か死人を見てる……」


「まぁ、間違いなく去年も一昨年も死人は出てるだろうな」


「それだけじゃない。この学園は……陰謀が渦巻いていると思う。」

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