B面一曲目 プレゼンテーション

 宮城県仙台市の中心部に『芭蕉ばしょうつじ』と呼ばれる十字路がある。

 江戸時代には仙台藩城下町の中心をになっていた辻であり、現在でも日本銀行の支店や地元地銀の支店などが立地していて、いかにも「金融街」という重い雰囲気をかもし出している。

 しかし、アーケードのある中央通商店街からは道一本分西にはずれており、南には現代の動脈である青葉通りが併走しているので、平日昼間の人通りはまばらで、車通りも多くはなかった。

 辻の名前の由来について、これといった定説はない。

 松尾芭蕉が松島を訪れた史実と混同されることがあるが、無関係である。

 最も有力な説は「伊達政宗の間諜であった芭蕉という名前の虚無僧こむそうが、恩賞として辻の四隅の建物をたまわった」というものだが、正直言ってこの説のほうが松尾芭蕉説よりも、胡散うさん臭く聞こえて仕方がない。


 さて、その芭蕉の辻を西に向って進み、晩翠ばんすい通りの一本手前にある十字路を左折する。

 その先の左手に古い雑居ビルが出てくるので、外階段を昇って三階まで上がると、踊り場の目の前に事務所のスチールドアが出てくる。

 その、どこにでもありそうなドアには、明朝体の縦書きで「住宅問題研究所」と書かれた素っ気ないプラスチックの札がついているだけなので、ぱっと見、どこかの危険な団体の関連企業にも見える。

 むしろ、そうして来客を拒んでいるかのような雰囲気すらある。

 この味も素っ気もない危険な香りのするドアを開け閉めするのは、九割九分九厘がここの従業員であり、顧客がドアの前に姿を見せることはまずない。

 そして、従業員の殆どが業務受委託契約に基づき業務を遂行しているから、ここには用がない。

 仕事の依頼に関するやりとりであれば、電話かメールで十分だからだ。

 結果、『研究所長』の肩書を持つ経営者と、その秘書兼雑用係の二人だけが常時ここから出入りしていた。

 ただ、まれに業務受委託契約を締結している受託業者がやってくることがある。

 その時、仙台駅前方面から歩いてやってきた二人連れの男性がそうだった。


 一人目の名前は、間島元まじまはじめという。

 身長百九十センチ前後の長身で、痩せて見えたがよくよく観察してみると全身の要所要所に、必要な量の筋肉がついていることが分かる。

 しかも、その筋肉は見せかけのものではなく、実働を前提に鍛え上げられたものだったので、実際にフル稼働した場合には、相対あいたいした相手が可愛そうに思えるほどの破壊力を生み出す。

 長めの癖のない前髪に常時サングラスをかけているので、一見しただけでは容姿が印象に残り難い。

 しかし、近づいてしげしげと眺めてみると、大抵の者が言葉を失った。

 浅黒い肌に彫りの深い顔立ち。

 虹彩は濃い茶色で、遠くから見ると黒一色に見える。

 背が高くて筋肉質だと賢く見えないものだが、彼の瞳には深い知性の輝きがあり、その唇は我慢強い性格を表すかのように強く閉じられていた。

 一瞥いちべつしただけでは本質の分からない、奥の深い男である。


 もう一方の男の名は、間島末まじままとめという。

 身長百六十センチの後半で、同じく痩せ形である。

 ただ、彼のほうは見た目通り、力を加えたら簡単に折れてしまいそうなほど華奢きゃしゃだった。

 ただ、パワーはなくてもスピードはあり、先程からしきりに背の高い方の周囲を衛星のように回っていた。

 髪は短めだが、癖毛なのであちこちで跳ねている。

 大きな瞳がくるくると縦横無尽に動いて、彼が好奇心旺盛な性格であることを如実に現わしていた。

 こちらは見た目通りの、裏も表もない極めて分かりやすい男である。

 二人は雑居ビルの階段を軽い足取りで三階まで登ると、ドアの前に立った。

 途中で『藤崎』に立ち寄ったため、末の左手にはロゴの入った紙袋がぶら下がっている。

 従業員といっても、事務所の合鍵までは渡されていなかったので、末は素直に呼び鈴を押した。

 すぐに中から「はぁい」という気怠そうな女の声が聞こえてくる。

 事務所というよりは、まるで昼下がりの団地の一室のような声だ。

 ドアが押し開かれて、中から一人の女性が姿を現した。

 年齢は三十二歳。

 天然パーマの髪を肩上の長さで切り揃え、毛が跳ねないように丹念に整えてある。

 眉毛は緩やかな弧を描くようにすっきりと整えられており、二重瞼の大きい瞳はマスカラの塗られた豪勢な睫毛で覆われている。

 すっきりと通った鼻筋に大きめの口。顔全体のラインは細めで、顎のところで無理なく収斂していた。

 自分を磨くことに熱心な女性であったが、それが嫌味にならないのは本来の素材の質が極めて高いからだろう。

美幸みゆきさん、こんにちは。お久しぶりです」

 末がそう、明るく元気な挨拶をする。

「こんにちは、スエ。いつもと同じく元気そうじゃない。ゲンも相変らずだね」

 美幸はゆったりと落ち着いた声で答える。

 元は、黙って頭を下げた。

「所長は外出中だけど、もう少ししたら戻ると思うから、中で座っていてちょうだいな」

 そう言って、美幸は二人を中に招き入れた。

 ドアを入ってすぐの左手側は、四畳半ぐらいの狭い応接スペースになっている。

 商談用と思われる簡単な机一つと椅子二脚が置かれており、壁にはどこにでもあるような丸い壁掛け時計が無造作にかかっていた。

 その他に、調度品の類は一切置かれていない。

 壁紙はサンゲツのSPシリーズ、床のタイルカーペットは東リのGAシリーズで、天井には吉野石膏のジプトーンが貼られていた。

 要するに、よくある事務所のコストミニマムな内装仕上げである。

 部屋には窓もなかったので、素っ気ないことこの上なかった。

 初めてこの事務所に来た者は、必ずここに通される。

 そして、研究所長が認めない人物はその後もここだ。

 間島兄弟は研究所長の了解が出て久しいので、美幸は立ち止まらずに目の前にある、これもよくある事務所のスチールドアを開けた。


 その先は、素っ気なさとは真逆である。


 壁は珪藻土の塗り壁、床は無垢のオークを使ったフローリングで、天井には杉の柾目まさめ板が嵌め込まれていた。

 傷がつきやすく手入れが難しい無垢のフローリングを、事務所の床に使うというのは非常識極まりないのだが、間島兄弟がいつきても傷一つない状態で維持されていた。

 内装からすると純和風だが、調度品はそうでもない。

 基本的には濃い茶色の輸入家具で統一されている。

 研究所長という札が置かれた、重厚なデスクがそう。

 美幸が座っている入口近くの机もそうだ。

 一般的に高級家具と言えばマホガニーやチークだが、ここの住人はそれと比べて知名度の低いブラックウォルナットがお好みのようである。

 部屋の中央には現地から直輸入したと思われるペルシャ絨毯が敷かれていて、その上には黒革のソファ一台、アームチェア二台、センターテーブルという応接のフルセットが置いてある。

 照明はすべてLEDであり、他のところも個々に洗練された小物類が使われていた。

 全体の色の調和を乱さないような配慮も感じられたが、研究室長の机の上にある派手な原色のジェリービーンズを入れたガラスの器だけが、異彩を放っていた。


「今、お茶を入れるからね」

 そう言って、美幸は奥にあるキッチンに引っ込んでいった。

 末はその後ろ姿を眼で追う。

 そして、元のほうに向き直ると目を輝かせて言った。

「美幸さん、やっぱりすごいよね!」

「そうだね」

 元が今日初めて声を出す。落ち着いた深みのある声だった。


 美幸が念入りに磨いているのは顔だけではない。身体のラインも同様である。元の武骨で実用的な鍛え方とは異なるが、美幸も常に全身のコントロールを心掛けていた。

 無駄な贅肉ぜいにくはいらない。

 しかし、痛々しいほどの痩身そうしんも勘弁。

 その間にある狭いゾーンに維持するために、彼女が人一倍努力していることは周知の事実である。だから、仕事の時間になると気怠そうな声しか出なくなるのだろう、と末は思っていた。

 今は冷房の効いた室内なので、プラダのスーツを上下かっちり着こなしている。お陰で微妙に身体のラインが隠されているので、末は安堵した。

 薄着の時の美幸は末にとって恐怖の対象である。なにしろ、その姿を一瞥しようものならしばらくは目の奥に肢体がちらついて、日常生活に支障が出るのだ。


 しばらくすると、ティーセットを持った美幸が戻ってきた。

 器はロイヤルコペンハーゲンのブルーフルーテッドプレイン。彼女はそれを、慣れた手つきでセンターテーブルに並べる。

 薔薇に似た芳醇ほうじゅんな香りが、末の鼻腔びこうをついた。美幸が「お茶」と呼ぶのは最高級のセイロン・ティーであり、しかもスリランカのハイ・グロウン・ティーであるウバしか使わない。ただ、これは研究所長の趣味であって、彼女自身はそこまで拘ってはいなかった。

 三人は黙って紅茶を飲む。

 真夏なのにホット。しかも、あまり紅茶に思い入れのない三人である。最上級の紅茶が、高速道路のサービスエリアにある給茶機のお茶程度の扱いで、消費されていった。

「所長から用件は聞いているのかな」

 しばらくして、美幸がそう末に尋ねた。

 末は頭を捻りながら、

「聞いていません。用事があるからこい――それだけが留守番電話に入っていました」

 と答えた。末は美幸が相手だと、言葉遣いが自然に丁寧になる。 

「ふうん。それなら先に概略を話しておいたほうがいいわね」

 そう言うと、美幸はカップから一口だけ紅茶を飲む。末にはそんな美幸の仕草が、気怠げで、それゆえ優美に見えた。

 右手に持ったカップを左手のソーサーに戻すと、美幸は少しだけ湿り気の残る唇で言った。

「まず、今回のクライアントは三友みつとも不動産です」

 元と末は思わず顔を見合わせる。

 三友不動産といえば、財閥系の不動産会社で分譲マンション大手である。

 基本的に不動産会社は、元や末の仕事とは接点がない。もちろん、三友の物件で生じた問題を不動産賃貸会社から依頼されて取り扱ったことはあったが、御大が直接乗り出してくるとなると話の筋と桁が違う。

 末は当然の疑問を美幸に投げかけた。

「三友レベルだったら、社内に担当者がいるはずではありませんか」

「もちろんそうだけれど、役に立たなかった。三友と深い関係にあるのは陰陽師だから、そっちの不得意分野だったようね。そこで専門業者に外注することにした。物件がある仙台の業者で、実績があって、口が堅く、やり方も手堅い、費用対効果のバランスが優れているところを、不動産業者ルートで探して、うちに依頼があった」

 美幸はカップとソーサーをセンターテーブルに戻すと、元と末のほうに上体を傾け、組んだ両手の上に顎を載せる。白いブラウスの胸元が大きく開いて、そこから深遠な谷間が覗いた。

 末が小さく息を吸い込む。

 彼女はその様子を見ると微かに笑って、話を続けた。

「ただ、今回の案件の報酬は当研究所から君達に支払われます。正式な外注契約を結ぶ前のプレゼンテーションという位置づけなので。めでたく契約締結となるか否かは現場での実績により判断されます」

 美幸の瞳の奥に光が灯った。 


 住宅問題研究所は、その名の通り住宅にまつわる諸問題を解決するコンサルタント業を営んでいる。

 ただ、その「諸問題」というところが問題で、実際の依頼内容は極めて特異な分野に限られていた。

 彼らの顧客の九割九分は不動産賃貸業者である。そして、依頼内容の九割九分が「出るのでなんとかしてほしい」というものだった。

 要するに心理的瑕疵物件の王者、『幽霊屋敷』である。

 例えば、賃貸借契約を締結した後で入居者から次のような苦情が出る。

「夜中に物音がしたり、誰か他の人の気配がする」

 そんな入居者からの苦情は意外に多い。大抵は手慣れた業者が笑いながら、

「そんなの気のせいですよ。それに事故物件の場合は業者に説明義務がありますから」

 と説明すれば、不承不承かもしれないが引き下がる客は多い。仮に、納得しない者が近隣住民に聞きまわったとしても、大抵の場合は事故そのものがないため、諦めて我慢するか自主的に転居することになる。業者にとってはそれだけのことだ。

 ただ、これを放置していると近隣で変な噂が立つ。

「あそこの部屋は出る。入ってもすぐに出てゆく」

 こうなるとその部屋に限らず、物件全体に入居者が入らなくなるから、大家と業者にとっては死活問題だ。それに、これは不動産関係者にとって常識以前の話なのだが――


 理由が入居者の気のせいであることは、思ったより少ない。

 多くの場合、実際に何かがいるので、それを取り除く必要がある。


 よく考えてみて頂きたい。

 日本のように、狭い国土に人間が密集して住んでいれば、過去にその土地で死んだ者が高い確率で存在する。動物まで含めると、間違いなくそこで死んだものがいる。それが太古の昔から蓄積している訳であるから、いるのが当然、いないほうがおかしい。

 そして、死んだ後にこの世に留まるだけでよければ、一般に考えられているような難しい話ではない。

 死後も自由に移動したいというのならば、それなりの素養や物語が必要になるが、その場に留まるだけでよければ、一般人でも容易に地縛霊になれる。この世への未練もたいして必要ない。それこそ「お腹が空いた」程度の未練でも、往生できずに地縛霊として留まることは可能である。

 そして、その程度の地縛霊には何の力もないから、普通の人であれば同居していても何も感じない。かなり霊感の鋭い者でなければ気配すら察知できないので、実害は起きようもなかった。

 さらに、その程度の地縛霊であれば除霊もさほど難しくはない。安易にこの世に留まってしまった低級地縛霊は、大体が忸怩たる思いを抱いており、空気の読める者も多かった。神主や僧侶に見えるよう身なりを整えて、それなりの声量で祝詞や般若真経を唱えれば、

「あ、これは往生しないと不味い雰囲気だな」

 と、霊のほうで勝手に事情を斟酌して往生してくれる。だから、殆どの場合はそれなりのお祓いを行なえば、問題は解決できた。


 それで片付かないのが、強い感情によってこの世に縛られた者がいる場合である。

 普通の人には見えない。感度の良い人であっても、空気のそよぎや微かな物音、気配ぐらいが感じ取れる程度だが、さすがに霊の想いの強さによっては入居者に影響が出る。

 気配で終わらず、頭が痛い、身体が怠いなどの身体症状に現れることもあれば、いらいらして攻撃的になる等の心理面に影響が出ることもある。

 このクラスの上級地縛霊、浮遊霊になると、もう経文をいくら唱えても成仏することはない。霊を縛る「想い」のほうを断ち切る必要が出てくる。

 そのための専門業者が「住宅問題コンサルタント」だった。

 この妙に一般的な名称は、領収書を発行する際の便宜を考えて、業界全体で取り決めたものである。

 年号が昭和から平成に変わって以降、なぜか新規に参入する業者が増えていた。

 また、狭い国土という地理的背景が類似しているため、イギリスにも同じような業者が多い。

 欧風建築を得意とする建築会社の中には英国系業者を好んで起用する例も見られたが、日本人の心象に馴染まないせいか最終的な問題解決で詰めが甘くなる。そのため、外資は今のところ大きな勢力にはなっていなかった。

 住宅問題研究所は同業者の中でも最古参の部類に入る。設立は高度成長期の昭和三十五年だ。

 第二次世界大戦が終わり、病人が病院で死ぬようになると、日常生活の中で死者の息遣いを感じる機会が激減した。それは死を別世界の出来事として恐れる心象に繋がり、地縛霊の急増に繋がる。

 また、高度成長期になると次第に家屋内の人間関係が希薄になり、他者の存在が過敏に感じられるようになっていた。霊は昔から存在していたが、その存在を隠していた人の息吹という雑音が減ったために露わになったのだ。

 さらに団地やマンションなどの密集した住環境により、個々の霊が及ぼす悪影響の規模が大きくなっていった。建物一棟がその影響下に置かれることも珍しくはない。

 そこに着目した研究所長の父親が、諸問題解決のために事務所を開設したのが始まりである。

 研究所長の父親自身は何の力も持たなかったが、分野毎に力のある専門業者と業務提携や受委託契約を締結するやり方で間口を広げてきた。歴史によって培われたそのネットワークは、対応可能な分野の広さでは業界トップクラスである。主力となる仏教、神道の系列は当然のことながら、密教や陰陽道といったマニアックな分野もフォローしていた。

 さらに、研究所長は個別の事象を扱う専門業者を発掘してラインナップに加えることに長けており、場合によっては「今後必要となる分野」にあわせて業者の育成すら行っていた。

 元と末は現研究所長による育成組だった。


「所長は、先方の概略説明を聞いた途端にスエ君に連絡を取っていましたから、今回の事案は君達の得意分野に違いないと思いますよ」

 そう言って、美幸は再びお茶を飲み始めた。

 末は美幸の取り澄ました表情を見つめながら、

「お仕事を頂けるのは有り難いことですが、僕達にぴったりの案件という点がなんとも――」

 と言って、うんざりとした顔をした。

 その末の表情を横から見た元の眉間に、微かな皺が寄る。元は、生活維持のためとはいえ、末がこの仕事を続けることに反対していた。どこかで一般人の普通で平凡な生活に軌道修正すべきだと、彼は常々思っている。

 その二人の様子を、美幸はティーカップごしに眺めていた。彼女は、元と末がこのまま仕事を続けることには問題があると考えている。

(二人は優しすぎるから、どこかで無理をするかもしれない)

 そう考えている彼女自身が十分に優しすぎるのだが、本人は客観的事実と現状から冷静に今後を検討した結果だ、と考えていた。


 三人が各々の考えに沈んでいると、玄関の扉が開く物音がした。


 規則正しい靴音が近づいてきて、控室に続く扉が開く。

 その向こう側から初老の男性が姿を現した。

 研究所長――三島龍平みしまりゅうへいである。

「こちらから呼び出しておきながら、遅れてすまなかった」

 そう言いながら、三島所長は規則正しい足音でデスクに歩み寄る。

 その間に美幸は紅茶をカップに注ぎ、彼が机に座ると同時にそれを机の上に置いた。

「香りが少々飛んでしまいましたが、とりあえず一杯」

「ああ、すまない。私もそこまで偏執狂ではないから、とりあえずで構わない」

 三島所長はティーカップを持ち上げると、いかにもたまらないという表情で最初の一杯を口に含ませ、ゆっくりと嚥下した。

 ぬるめの紅茶が飲み終わる頃、美幸はキッチンから新たな紅茶を運んできた。

 三島所長は熱めのそれを、至福の表情を浮かべながら口にする。


 百八十センチを超える長身痩躯ちょうしんそうく。それを、英国セヴィルロウ通りのテイラーで仕立てたスーツで包んでいる。

 五十代前半にしては見事なシルバーグレイの長髪。その下から細い目が覗き、その眼光は鋭かった。

 彫りの深い顔立ちから、彼がハーフ乃至はクォーターであることがうかがえるが、実際には日本人が三、英国人が一のクォーターである。

 その風貌から、一見して狷介な人物と判断されることが多く、確かに初対面の相手と気に入らない者には狷介な人物である。しかし、彼は一度自分が気に入った人物にとことん惚れ込む癖があり、美幸のことを公然と「自分の女神様」と呼び、元と末のことを「自分の子供たち」のように考えていた。

 それでいて、仕事に関することになると厳格かつ非情である。無為無策にはとことん厳しい。お陰で美幸、元、末はその筋では一流の人材として鍛え上げられていた。

 本人はその血筋から、和風のものと英国風のものを非常に好む。内装は和風、小物は英国風、生活スタイルは和風だが、英国風のお茶の週間だけは欠かさない等、モザイク状に分野で分かれている。

 その中で、相変らずジェリービーンズだけが宙に浮いていたが、それについても彼なりの拘りがあるようで、美幸はたまに米国のメーカーから直送されてくるジェリービーンズの小包を受け取っていた。


 三島所長は一杯と半分のウバでやっと納得したらしい。

「概略は美幸君から聞いているかね」

 と言いながら、元と末のほうを見た。

「うん。三友絡みという大筋はもう聞いたよ。まだ、肝心の具体的な依頼内容は聞いていないけど」

 末は急に砕けた言葉遣いになった。

 これは以前、研究所長から「私と話す時には改まった言い方はしないでくれ」と言われたためである。

「大変宜しい。僅かな時間も無駄にしない君達の職務に対する忠誠心は大したものだ。感嘆に値する」

 三島は目尻を下げ、両腕を大きく広げて笑った。この大袈裟な褒め方は三島の癖である。

 言われている時には末も悪い気はしないのだが、後で何だか騙されたような気分になることが多い。

「具体的な依頼内容については、ここで話を聞くよりも現地を実際に見たほうが話が早い。今、地図を渡すから早速現地に向かってほしい」

 そう言いながら、三島所長は目の前のパソコンを操作している。地図を印刷するのだろう。

「見たほうが早いって――もしかして、所長は今まで現地を直接見に行っていたの?」

「そうだ。その帰り道にエリーゼが渋滞に捕まってしまったので、戻りが遅れてしまった」

 エリーゼとは、英国の自動車メーカーであるロータス社が製造、販売しているロードスターである。

 エンジンは日本のトヨタ社が提供していたから、そういう意味ではいかにも三島らしい車だった。

「それで、現地はいかがでしたか」

 美幸が質問した。彼女も彼の目的が事前の現地確認とは知らなかったらしい。

「さすがに能力のない私には何も見えなかった。ただ、先方の担当者に案内されてマンションの正面エントランスから中に入ろうとした時に、変な感じがした。そうだな――」 

 三島所長は、両腕を平泳ぎのように中央から両脇に向けて広げる。

「――なんだかぬるりとした生温かいものの中を、掻き分けていくような気分だった」

 その言葉を聞いた末の背筋に、悪寒が走った。

 建物全体に影響が及んでいるということから、地縛霊の可能性が高い。

 しかも、それが触覚に及んでいるという。

 通常は視覚や聴覚までの影響に留まるから、これは半端な相手ではない。


 *


 事案の現場は長町だった。

 JR仙台駅から各駅停車に乗って福島方面に向かうと、一駅目がJR長町駅になる。仙台市営地下鉄南北線でも行けるし、そちらのほうが早いのだが、末は地下鉄を好まなかった。彼は地下道も好きではない。そのため、二人は雨が降っている時でも必ず屋外を歩くことにしていた。

 さて、三島所長から受け取った地図では、その駅の東側に立つタワーマンションが目的地になっていた。長町駅の東側にはもともと貨物操車場があり、その跡地を使って大規模な駅前再開発事業が行われている。超高層のタワーマンションは、その開発計画の目玉だった。

 元と末はJR仙台駅の東口近くに住んでいたから、長町方面には用がない。北欧発祥の大規模家具販売店がJR長町駅前にあり、大人気であると聞いたことはあったが、そこの家具を買って自宅に置こうものなら、研究所長が黙っていなかった。

 彼は「一流の人材は一流の物に囲まれて生きるべきだ」という信念の持ち主である。従って、安さに価値を一切認めない。「安価なのに高品質という言い方は、本当の高品質を知らない者の戯言たわごとに過ぎない」と、切って捨てるほどである。元と末は、逆に高価な物に囲まれて生活するのは気詰まりだったから、その間をとって自ずと必要最小限のものしかおかないシンプルな生活スタイルに落ちついた。

 三島所長の地図によると、タワーマンションまでは長町駅から徒歩で二分である。こうなると歩数で表記してもらったほうが分かりやすいほど近い。超高層マンションだから遠くからも見えるだろう。そう考えて、末は電車が広瀬川の鉄橋を渡る前から駅の東側を眺めていた。

 しかし雑多なものが視界を遮るため、なかなか遠方が見えない。

 街並みが切れて操車場跡地の広々とした空間が目の前に広がる。

 その向こう側には大規模な商業施設が済ました顔で並んでいる。

 さらにその向こう側には、空に向かってそそり立つものがある。


「えええ――?」


 末は自分の目を疑った。

 思わず声が出てしまい、顔が赤くなる。隣に座っていた老婦人が彼の視線の先を追っていたが、何も変わったところがないので訝しげな顔をしていた。

 末は元を見る。元には末と同じものがえているはずだが、彼には動じる様子はなかった。

 その姿に末も心が落ち着く。大丈夫、元と一緒だから問題ない。

 電車は長町駅のホームに滑り込む。改札口を出て東出口に向い、外に出る。

 元タワーマンションらしき物体は目の前に見えた。


 そして、どう見てもそれは屹立する男根だった。


 確かに、超高層タワーマンションは男根の象徴に見えないこともない。そう主張する哲学者や心理学者もいる。しかし、リアルな男根がそのサイズで屹立する姿というのは、どうにもシュールである。

 亀頭は完全に露出し、陰茎には太い血管が隆起している。

 表面は見事に赤黒い。それが真夏の昼の陽光を浴びて粘度の高そうな反射光を放っている。目の中でどろりと溶けそうな光だ。

 よく見ると、表面がびくりびくりと微妙に蠕動ぜんどうしている。

 青空を背景にして炎天下の中に直立する暑苦しいはずのそれは、かえって清々しさを感じさせるほど潔かった。

 ただ、三島所長が語った「なんだかぬるりとした生温かいものの中を、掻き分けていくような気分」という言葉を思い出し、末は気分が悪くなる。

 周囲を若い女性達が連れ立って歩いてゆく。家族連れも多い。皆、楽しそうだった。それもそのはずで、この男根は普通の人には見えない。元や末のような特殊な視覚を生まれつき持っている者にしか見えない。

 魔眼あるいは邪眼と呼ばれる能力である。

 ただ、末はこんなものが視える能力なんて欲しくはなかった。

 ただ、視える能力があることで生活が維持できている訳だから、末も贅沢は言えない。

 彼は溜息をつく。元はそんな末の肩を叩き、末は頭を上げて元に微笑む。二人はゆっくりとした足取りでタワーマンションに近づいていった。

 接近すればするほど、男根の馬鹿げた巨大さが滑稽さを生み出す。斜め下から見ると、亀の頭の切り立った部分が滑らかな曲線を描いて抜けるような青空を背景として空間を切り取っていた。そのラインが美しく見えないこともないので、末は苦笑する。もう、ここまでくると笑うしかない。

 また、末は臭覚に影響がないことを本気で喜んだ。見た目だけでなく臭いまで再現されていたらと思うと、背中を変な汗が流れた。

 事前に電話連絡を入れておいたので、根元には事案の担当者と思われる、真夏なのにスーツ姿の男性が待っていた。こちらの接近に気づいた時、彼の眉が僅かに持ち上がったことに末は気づいたが、これはいつものことなので特に気にしなかった。

 その隣には、こちらも真夏なのに黒い和服姿の若い女性が立っていた。着物には晴明桔梗の紋が縫い込まれていたので、末にもその素性が分かった。彼女は遠目で見ても分かるほどに項垂うなだれていた。

「わざわざ御足労頂きまして申し訳ございません。本件を担当しております三友不動産カスタマーセンターの緑川みどりかわと申します」

 男性は先程の動揺を寸毫すんごうも見せることなく、見事な所作でお辞儀をしながら言った。

 しかしそれは、心の内と外を分離することに慣れた者の、形式的な動きと台詞に他ならない。不動産業者に多いその手合いを、末はすっかり見慣れていたから、

「こちらこそ、お忙しいところに急にお邪魔して申し訳ありません」

 と、あえて知り合いの家をお昼時に訪問した親戚のような切り返し方をした。

 緑川は一瞬だけ動きを止めたが、すぐに立ち直ると隣にいる女性を紹介した。

「弊社の住宅問題コンサルタントをお願いしております、依代道子よりしろみちこさんです」

 既に項垂れていた依代は、無言で更に頭を下げる。

 三友に出入りしているぐらいだから、彼女も相当な術者に違いないのだが、今回は相手が悪かった。どう見てもこれは上級地縛霊の仕業である。となると、一般的な術式ではどうにもならない。相手に合わせたオーダーメイドの対応が必要になるが、宗教的な背景を持つコンサルタントが最も苦手とする対応だった。

「それで、現場はどこですか」

「はい。あの――」

「大丈夫ですよ。我々は協会の憲章を遵守しておりますから」

 住宅問題コンサルタントには同業者の協会があり、その憲章に沿って業務を遂行する義務がある。クライアントが明らかに法を逸脱した行為を行っていない限り、クライアントの利益を最優先しなければならないし、守秘義務を負っていた。

「そうでしたね。大変失礼致しました」

 緑川は物分かり良く謝罪したが、腹の中では何を考えているか分からない。

「それではご案内します」

 そう言うと、緑川は男根の肉壁に無造作にのめり込んだ。

 視えないことが羨ましくなる。末は躊躇ちゅうちょしながらも、自動ドアがあるらしき肉の壁に向かって足を進めた。


 *


 現地に向かう途中で、緑川から説明された事案の背景は以下の通り。

 発端となる事件は一ヶ月前に発生した。

 マンション最上階の部屋を購入した男から、妻と連絡が取れないので部屋に様子を見に行ってくれないか、という電話が常駐している管理人のところにあった。聞けば男は中国に単身赴任中で、一週間前から妻と連絡がとれないと言う。マスターキーを使ってもらって構わないという了解を得て、管理人はすぐさまエレベーターで最上階まで向かった。

 彼は複数のマンションでの管理人を務めた経験を持つベテランである。分譲型タワーマンションで勤務したことも何度かあったから、最上階を購入する者の生態を熟知していた。

 まず、購入者の大半は利殖目的の中国人である。また、仙台市内であれば震災後の復興バブルで急に羽振りの良くなった建築業者が多い。従って、購入者は住まずに賃貸に回されることが多かった。そこに入居するのはやはり金の余っている自営業者が多く、プロ野球選手や芸能人のような有名人から、非常に限られた範囲で名の知れており、セキュリティの問題からなるべく玄関から離れて住みたい者まで、業種は様々である。しかし、彼らは例外なくトラブルが発生した時の処置を、お願いするのではなく、借りている者の当然の権利として無遠慮に横柄な態度で申し付けてきた。

 購入後に実際に住んでいる者の場合は若干言葉遣いは丁寧ながら、それでも特権階級という意識が抜けないので、上から目線であることが多い。ところが、電話をかけてきた男の物腰は信じ難いほどに柔らかであったため、管理人は驚いた。

 驚いたが、管理人である間は入居者のプライベートを斟酌しんしゃくしないことにしていたので、彼は頭を捻りつつ最上階の部屋に向う。

 最上階には一室しかない。エレベーターを降りた途端に玄関があるから、すぐさま呼び鈴を鳴らしてみたが、応答はない。さらに数回押してみる。男は「妻は専業主婦だ」と言っていたが、やはり応答はない。

 彼は数多くのトラブルを処理してきた強者つわものなので、このようなケースの着地点も熟知していた。うっすらと嫌な予感を抱えながらも、管理人はマスターキーを使って玄関を開けた。


 *


 管理人からマスターキーを預かっていた緑川は、速やかに玄関を開けた。

 三和土たたきで靴を脱ぐと置いてあったスリッパに履き替え、リビングまで元と末、そして依代を案内する。

「こちらが現場です」

 緑川の眼前には私物が取り払われて、内装のやり直しとクリーニングが完了した真新しい部屋があった。入居期間が一年未満と短かったので、内装のやり直しすら必要ないぐらいだったが、事が事だけに念を入れてすべて張り替えてある。すべての痕跡が綺麗さっぱり消えているはずだった。

 ところが、箝口令かんこうれいを念入りに敷いても、このような事件は人伝ひとづてに流れてしまうものである。夫だった男が売却した時点で、価格は購入金額の半額まで落ち込んでおり、それにマージンを上乗せしたお手頃価格で情報開示しても、内覧すら入らなかった。

 おかしいと思った緑川が事故物件公示サイトを覗いてみると、しっかり登録されている。

 普通、購入者自身は資産価値が下がることを恐れてこんな真似はしないものだが、購入者の子弟には調子に乗って投稿する馬鹿がいる。昔は「間に一人でも入居者がいれば、事故物件として告知する義務はない」と言われていたが、コンプライアンスが五月蝿い昨今はそうもいかなかった。不動産協会の推奨は十年である。ともかく、業者としてはさっさと売り抜けたいところだ。

 しかも、事故の一週間後から住民の中に、

「なんだか息苦しい、肌がねばねばする」

 といった苦情が出始めた。施工ミスがないか調査してほしいという管理組合からの申し入れまであった。

 それで、売主である三友不動産が事態収拾に乗り出さなければならなくなったのだが、肝心のコンサルタントが現場を見るなり、

「これは……私の力では無理です」

 と匙を投げる始末である。

 緑川は苦々しい思いを内面に隠し、外見上は穏やかな笑みを浮かべて、

「状況の説明を致しましょうか」

 と言いながら、元と末を見て――驚いた。

 末は顔面蒼白になっていた。

 唇が小刻みに震えている。

 元は眉間みけんに皺を寄せていた。

 両拳が握られて白い。

「あの――どうかしましたか?」

 二人の急激な変化に唖然あぜんとなる緑川を無視し、末は震える声で依代に問いかけた。

「依代さん、貴方はどこまで気がついているのですか?」

わたくしには何も視えておりません。ただ、空気が重く澱んでいることが分かるぐらいです」

 依代は悔しそうに言った。

 彼女にとってはいたく自尊心を傷つけられる問いかけに違いない。

 しかし、末はその答えに安堵した。

 彼女が視て何とかできる状況ではなかったからだ。


 元と末は、リビングに二人の人物がいるのを視ていた。


 リビングの中央にある応接セットのソファの上で、女が男の上にまたがっている。

 ガラステーブルの上には酒瓶が林立しており、

 床には栄養剤や精力剤の瓶が散らばっていて、

 持続力で有名な錠剤の抜け殻が放置されていた。

 女は叫びながら激しく腰を振る。

「私の何が悪いの――私の何処がいけないの――」

 緑川や依代には見えない。

 ということは下になっている男も霊のはずだが、彼は無残に干からびていた。

「緑川さん、この部屋で亡くなっていたのは二人ですか?」

 末は絞り出すような声で緑川に尋ねる。

「いえ、奥様一人だけです。酒と薬物の乱用による心不全で事件性はないというのが警察の結論でした」

 緑川は後半部分を早口でまくし立てた。

 急に二人いたのかと問われたので、事件ではなく事故だと主張したかったのだろう。

 しかし、それは今の末には不要な情報だった。

 彼は目を細める。

 つまり、女のほうはこの部屋にいた妻の地縛霊だが、男のほうは浮遊霊の可能性がある。

 ここに漂ってきたところを捕えられたのかもしれない。

「私の何が悪いの――私の何処がいけないの――」

 喘ぎ声の中に混じる、悲鳴のような言葉。

 女の腰の下で男が消えてゆく。

 性欲を満たされて成仏してゆくところだろうか――いや、違う。

 あれは吸収されてゆくところだ。

 女の股間に男の気配が吸い込まれる。

 激しい腰の動きが宙を切る。

 最後には女だけが残り、彼女は両掌に顔を埋めて、背中を丸めて泣き始めた。

 果たして何人分の霊が今まで吸い込まれたのだろうか。

 その結果が屹立する男根だとしたら半端な数ではない。

「兄さん、これは僕の仕事だと思う」

 末はそう言い切ると、リビングの床に胡坐あぐらをかいて座り込んだ。

 元は無言で末の背中側に回り、同じく胡坐あぐらをかいて座り込む。

「あの……私がいても大丈夫なのですか」

 依代が申し訳なさそうにそう言ったので、末はにっこりと微笑んでから言った。

「ああ、大丈夫ですよ。僕らは別に秘儀や禁呪は使いませんから、見ていても何もプラスにはなりませんけど。それに、他の術者がいても同期して混乱が生じることはありません。むしろ、他の術者が傍にいてくれた方が助かります。はらえをお願いしても構いませんか」

「まあ、神道系も少しは齧っていますから出来ますが――」

「ではお願いします。これは急いだ方がよい事案なので、これで」

 早口でそう言い切ると――


 末は即座に内面を反転させる。


 目を閉じることもない。

 精神集中すらいらない。

 呪文なぞ無論唱えない。

 ただ、身体をひるがえして自分という殻を脱ぎ捨て、内面を外に露出するだけである。

 簡易版の幽体離脱だと考えればよい。

 それを意識が覚醒した状態で行なうのだ。

 泣いていた女が末の存在に気づいて、頭をゆっくりと上げる。

 彼女の瞳に怪しげな光が宿った。

「貴方、どこから来たの?」

 言葉が粘性を伴って唇から洩れる。


 末は彼女に向かって微笑んだ。

 それは救済を始める合図だった。

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