赫、赫と
赫いピラカンサス、鮮やかに燃えて
秋が尽きる前に燃えてその杯から
あふれ滴る毒を孕んだ赫い果実
あのひと粒 ひと粒 ひと粒に
父や母や兄たち 道行くひと
そしてわたしとあなたが重なり
それをつぐみが啄ばみ飛び立つ
赫い味をたしかめ吐き出す
噛み砕かれたそれは醜く
毒を孕んで唾液に濡れて蠢く
心のなかの小さな棘が人を拒むのは
ちいさな妬みや羨望が眩しいからだ
毒のような炎が無数の棘となり
誰もが痛みに苛まれている
つぐみは赫い実を啄ばみ
わたしは赫い火をつかみ
炎はひろがる その意思に
かかわらず かかわらず……
母胎に包まれていた
遠い記憶 握り締めた
こぶしから滴り落ちて
わたしは 冬の大気に
静かに燃える柱になる
火の粉はつぐみへと姿を変え
あなたの庭に種を落とすだろう
いま そらは晴れ どこまでも
拓けていく わたしは冬を抱く
新しい春をこの身に宿すために
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