12

 瑠璃がたどり着いた場所は、崖だった。

 この場所に、森を抜けて、湖を越えたところに大きな崖があることを、瑠璃はずっと昔から知っていた。

 先生から「危ないから絶対に湖の奥までは言ってはいけない」と言われていたのだけど、子供のころ、(六歳か、七歳くらいのときの話だ)瑠璃は森の中で道に迷って、この崖のある場所までたどり着いてしまったことがあった。

 崖があるのだから、この先には進めない。かといって、戻ると言っても、背後には暗い森しか見えない。どこに宝石の国があるのかも、わからない。

 だから瑠璃はその場で、わんわんと泣いてしまった。泣くことしか、当時の瑠璃にはすることができなかった。

 すると、森の草木ががさがさと動いた。

 瑠璃は驚いて泣き止んだ。

 熊や猪や、あるいは腹を空かせた狼が、瑠璃の鳴き声を聞いてやってきたのかもしれないと思った。

「瑠璃」

 そんな翡翠の声がした。

 見るとそこには確かに翡翠がいた。

 翡翠はいなくなった瑠璃を探して、先生や琥珀と一緒に瑠璃を探しに森の奥にまでやってきてくれたのだった。

 そして、三人の中で一番最初に、瑠璃を見つけてくれたのが、翡翠だった。

「翡翠!!」 

 瑠璃は言った。

 それから瑠璃は、その場から走り出して翡翠の小さな体の中に思いっきり抱きついた。

「瑠璃!」

「瑠璃ちゃん!」

 そんな先生と琥珀の声が聞こえた。

 見るとそこには、翡翠の背後には、確かに先生と琥珀がいた。

 二人は本当に安堵した表情をしていた。

 そんな二人の顔を見て、「瑠璃、大丈夫?」と優しい声で言ってくれる翡翠の微笑む顔を見て、瑠璃は自分が愛されているのだと、このとき、確かに感じたのだった。

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