11

 三人は森を抜けて、凍った湖のところまでやってきた。

 空と大地が、まるで幾億の明るい星で埋め尽くされているかのような、幻想的な風景がそこにはあった。

 でも、琥珀はその風景を見ても、あまり感動しなかった。

 むしろ、その美しさに戦慄を覚えたりした。

 この天国のような世界が、本当に、あの遠い空の向こう側にある天国の世界にまで通じているかのように、琥珀には思えたからだ。

 見た限り、瑠璃の姿はどこにもなかったが、「琥珀、先生。これ、見てください」と翡翠が言って、二人が翡翠がしゃがみこんでいる場所を見ると、そこには地面の上になにか重いものを引きずったようなあとが残っていた。

「これは、……もしかして瑠璃のトランクのあとかな?」先生が言う。

「はい。そうだと思います」翡翠が言う。

 瑠璃はこの場所を通ったのだ。

 それも、そんなに時間がたったわけではない、少し前にこの場所には瑠璃がいたのだ。

 瑠璃はトランクを持っている。

 重い荷物を持って移動している。

 なら、今すぐに追いかければ瑠璃の姿が見えるかもしれない。

 琥珀はすぐに、凍った湖の上を歩いて移動しようとする。

 その場所に、瑠璃の残していったトランクのあとが続いていたからだ。

「琥珀。待ちなさい。湖の上を歩くのは危ない。氷が割れて、暗い湖の水の中に落っこちてしまうかもしれない」先生が言う。

「でも、先生。瑠璃はこっちのほうに歩いて行っています。だから私もこっちの道を歩かないと。……でないと、もし、瑠璃が湖の中に落ちていたら、瑠璃を助けてあげられない」琥珀は言う。

「そんなことはない。瑠璃は湖の中になんて、落ちていないよ」先生は言う。

「少しだけ遠回りになるけど、湖の周りを丸いて向こう側に移動しよう。琥珀、それに翡翠もそれでいいね」

 優しい声で先生は言う。

「……はい」

「はい」

 その声に二人はそう言って、従った。

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