10

 琥珀、瑠璃、翡翠の三人の中では翡翠が一番大人に近い場所にいた。

 翡翠はいつも冷静で、寡黙で、なにかをしっかりと考えて行動していた。これから自分たちに訪れる未来のことも、三人の中では一番翡翠が現実的な考えたかをしていた。

 二番目が琥珀で、琥珀は子供っぽくて、おっちょこちょいで、すごく頼りないけど、でも現実に絶望していたわけではないし、未来に希望を持っていないわけでもなかった。

 三人の中で外見は一番大人っぽかったけど、実は一番子供だったのは瑠璃だった。三人の中でるえいが一番、純粋だった。瑠璃が一番、透明で純度の高い存在だった。

 瑠璃はきっと、一生、この宝石の国の中で生きていきたいと考えていたはずだ。

 外の世界になんて行きたくない。

 私は大人になんてなりたくないって、瑠璃はきっと思っていたんだ。

 ずっと、ずっと、笑顔の裏でそう思っていた。

 そして頭の中でカウントダウンをしていた。

 私たちの年齢。宝石の国を出ていかなくてはならない時が来るのを、ずっと頭の中で数え続けていたんだと思う。

 そのカウントがゼロになった。

 だから、瑠璃はいなくなった。

 宝石の国を出て行くくらいなら、私はもっともっと遠い場所に一人で行くって、……ずっと前から、きっと瑠璃は決めていたんだ。

 ……そうなんだよね、瑠璃。

 琥珀は夜空に輝く半月に向かって、そう心の中で語りかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る