夜空には大きな半月があった。

 琥珀はそんな月を森の中から見上げていた。

 琥珀と瑠璃と翡翠は孤児で、ずっとこの宝石の国で一緒に暮らしてきた。生活は苦しかったし、自分たちが恵まれているとは思わなかったけど、でも琥珀は幸せだった。

 だってこの場所には瑠璃がいるし、翡翠がいるし、それに優しい先生も可愛い子供たちいてくれるからだ。

 だから琥珀は幸せだった。

 こんな生活がずっとずっと、一生続けばいいなって思っていた。

 でも、そんな夢みたいなことは起こらないのだ。

 みんな成長する。

 みんな大人になる。

 宝石の国にいる子供たちだって大人になる。

 私も、瑠璃も、翡翠も大人になる。

 大人になったら離れ離れになる。

 みんな、ばらばらになる。

 それがすごく嫌だった。

 ……それが、すごく辛かった。

「でも、それでも君たちはその現実を受け入れなくてはならない。君たちはこの家を出て行って、みんな一人一人がきちんとした大人にならなくてはいけないんだよ」

 とても優しい声で先生は私たちに言った。

 その言葉は、間違いなく正しい言葉だった。

 琥珀は先生の言葉を聞いて、自分は大人にならなければいけないと思った。

 いつまでも、好きな絵ばかりを描いている生活はできないのだ。

 どこか街に出て、働いて、お金を稼いで、自分で自分を養っていかなくてはいけないのだ。それが大人になるっていうことなんだ。

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