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琥珀と翡翠と先生が、そうして森の奥深いところで瑠璃のことを探していたころ、瑠璃はすでに深い森を抜けて、その向こう側にある凍った湖の上に立っていた。
湖の氷には夜空の幾億の星が反射して、まるで世界は上も下も輝く星で満たされているような、そんな宇宙に立っているような幻想的な風景が広がっていた。
でも、現実はそれほど美しいものではない。
もし、瑠璃の立っている場所の氷が、瑠璃の命の重さに耐えきれずに割れて仕舞えば、瑠璃は冷たい冬の湖の中に落下して、そのまま、二度と地上には戻ってこられなくなってしまうだろう。
そのことはもちろん瑠璃にはわかっていた。
わかった上で、瑠璃は荷物を詰め込んだトランクを引きずりながら、凍った湖の上を歩き始めた。
「駅はどこかな? 天国行きの電車が出る駅はどこにあるんだろう?」
瑠璃はそんな独り言をつぶやきながら、きょろきょろと周囲を見渡すようにして、氷の上を歩き続けた。
瑠璃の見上げる夜空には美しい半月が輝いていた。
その半月を見て、綺麗、と瑠璃は思った。
今頃、琥珀や翡翠も、この半月を見ているのかな? そんなことを瑠璃は思った。
幾億という星々が輝く奇跡の夜だ。きっと、この星空を二人とも見ているはずだ。瑠璃は、その夜空に輝く半月に向かってお祈りをする。
どうか、琥珀と翡翠が、幸せになれますように……。
瑠璃は祈る。
青色の夜の中で、……瑠璃は、祈る。
それから瑠璃は目を開けて、再び駅を探して歩き始める。……駅はどこかな? 天国行きの電車が出る駅はどこにあるんだろう? 瑠璃はおまじないのようにその言葉を頭の中で唱え続けていた。
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