すると、そこにはもう先生がいて、先生は瑠璃の捜索用に手持ちのオイルランプを三つ、用意してくれていた。先生の用意したオイルランプにはすでに三つとも火が灯っていた。

「二人とも準備はできたようだね。では、森に行こう」

 二人は先生に返事をして、それぞれランプを一つ手に取った。

 それから三人は玄関のドアを開けて、寒い冬の夜の中に瑠璃を追って出かけて行った。


 宝石の国を出ると、いきなりとても強い北風が吹いた。それは大地の上に積もった雪を巻き上げて、それを暗く遠い世界にまで運び、同時に一瞬で三人の体温を大きく奪い去っていった。 

 ……寒い。

 琥珀は思った。

 こんな気温の中で、森で迷子にでもなったら、もう二度と宝石の国に帰ってこられなくなる。寂しくて、手が凍えて、足が震えて、きっと一歩も暗い森の中で動けなくなってしまう。

「二人とも、私とはぐれないように注意して行動すること。いいね」

 二人は頷いて、先生のあとについて森に向かって移動する。

 幸いなことに今日は信じられないくらいに星が綺麗に輝いている奇跡の夜だったから、今のところ、ランプの灯りはなくても、世界には十分な光が溢れていた。

 でも、森の中に入ったとしたら、そうはいかないかもしれない。

「さっき確認したら、ランプが一つなくなっていた。きっと瑠璃が持って行ったんだと思う。どこかに灯りが見えたら、それがきっと瑠璃だ」先生が言う。

 先生の言葉を聞いて、二人はオレンジ色の光がどこかに見えないか注意をしながら、雪の積もったままの草の大地の上を歩いていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る