本店

 本店へ行って驚いたのは、17時と言っても17時に帰れる訳じゃなく、17時にレジを閉めて事務所で精算をしてから帰るので、頑張っても20分から30分はかかること。

 17時にレジを閉めるのも忙しい時は、ずれ込んで、なかなか直ぐに帰れない事もあり、その時にならないと何時に帰れるかわからない状態だった。

 そんな中、本店の短時間のパートさん2人は13時丁度に毎日帰っていて、考えたら私も短時間なのに、長い時間にさせられて、応援呼ぶ前に短時間のパートさんに少し長く働いてもらう事を考えないのは何故なんだ。。と少し腹が立った。

 しかも数日と言っていたのに1週間経ってもまた支店に戻っていいとは言われず、いつまでなのか聞こうと思っていたら本店の店長に呼ばれ、このまま本店て仕事をしてほしいと突然言われた。いやどう見ても本店なんて人が多いし、支店の方が大変だからと思って、また向こうに戻りたいですと言ったら、信じられない言葉が帰って来た。

「神崎さんが戻りたいと言っても、もう向こうでは新しい人が決まってるから、戻る場所はないんだよ」

 と言われ、頭が真っ白に。。。

 いつの間にそんな事に。。と思いながら

「本当なんですか?」と聞くと、

「そう。心配しなくても向こうは人員を確保してるから大丈夫だから。でもこっちで働くなら短時間じゃなくて長時間勤務になって貰わないと困るから。」と言われ、何が何だかわからない状態でOKしてしまった。

 でもこの時、一度考える時間を貰って須藤さんと話をするべきだったと後になって思った。

 その後、何故手伝いに行った私の代わりの人を、新しく支店に入れたのか話を聞こうと思って須藤さんの所へ行ったら、そんな話は全くないと言われた。

 あの人は息をする様に嘘をつく人だから騙されたんだと。でももう決めてしまったなら戻れない。もう向こうの人だと言われた。

 本店は大きい店だから、レジと、たまにカウンターの仕事をするだけだから楽だったけど、休みは週1回のシフトとして渡される時と、なかなか決まらない時は急に明日休んでと言われたり、忙しい時は来週の休みはスルーで。と言われる事もあった。

 スルーでと言われたらその週は休みがないと言う事だった。

 年末の12月は最終の休みが12日とかで、あとは元旦まで休み無し。

 そしてこの店では年に2回のキャンペーンがあり、夏はギフト商品やタバコ、ビール、米など。冬はそれに加えてお供え餅、クリスマスケーキなどを売らなければならない。しかもノルマは20万超え。最初見た時は桁を間違えたかと思ったほど。

 しかもグループにして競わせるという悪どいやり方。それに加え、ここのスーパーは温泉も経営しているので、温泉のチケット1冊2980円を10冊。それも年に2回売らなければならない。私はイラスト付きで、人気の為残り少なくなってます。お早めに。とか適当に書いて、本当はダメだけどコッソリレジに貼ったりして売り捌いた。ビールやら米やら大きい物を売れと言って、配達は自分でやれと言う。車のある人はいいけど、車のない私はタクシーで運んだ事も。。それも休みがない時は仕事が終わった後で。

 そんな中でも80万とか、物凄い金額を売る人もいたので、会社としては美味しくて止められないのだろう。今もまだ続いているけど、法律的にはどうなのだろう。


 よくわからなくて不思議だったのは、レジで割り箸がなくなってきて、資材を見ても全然無かったので、そういう時は支店では売り場から出してたので、自腹で割り箸を買ってレジに配ってたら、店の従業員に、

「その割り箸どうしたの?」と聞かれ、

「割り箸が少ないから買って入れてるんですけど。」

 と言ったら、「なんで?お惣菜でお弁当作ってるみんなだって、割り箸無くても我慢してるんだよ。どうして我慢出来ないの?だいたいそんな売り場から出して、衛生的にどうなのかって話なの」衛生面でどうって、剥き出しの割り箸を配ってる訳じゃないし、じゃぁ、お客様が買っていく割り箸はみんな衛生的じゃないって事なのだろうか?

 この人は何を言ってるんだろう。割り箸が無くて我慢するのはお客様だろう。。と思ったけどとりあえずはいはいと言って、割り箸は全部回収して持って帰る事にして、レジ同士で少ない割り箸を、やり繰りした。

 別の日、他の従業員が「お花包む紙がないから何処?って聞いたら我慢してって言われたんだけど。何?我慢って」と怒っていて笑ってしまった。とりあえず同じ感覚の人がいてくれて良かった。


 レジには二人の小さい子供を持つ20代の若い女の子がいて、子供が小さいからあまり残業はしたくないけど、全然出来ないと言うと仕事をもらえないかと思い、出来ると言ってしまったがために、どんどん残業が増えて辛いと言ってる子がいて、ある日仕事に来た時に、実は夜仕事してる間に子供がお腹を空かせて何かを食べようとした時に火傷をしてしまったから病院に連れて行きたい。今日はこのまま帰らせてほしいと頼んでいた。

 それは早く帰してあげないと。。と思っていたら、会社の対応は、今日は売り出しだからレジはやって貰わないと困る。

 代わりに事務所の人を行かせるから、家の鍵と、何処に保険証があるか教えてと言っていた。

 いやいや、それでなくても子供は火傷して心細い思いで待ってるのに知らないおじさんが来て病院行くよとか怖いよ。第一、病院でどう説明するんだよ。

 その後もその子のシフトは残業が多いし、日曜、祝日の休みも全然なかった。

 だけどいつも時間ギリギリに来て13時で帰る短時間のパートさんは毎週日曜日と祭日も休みをもらってる。それはあまりにも不公平ではないか。でも聞いた話によると、世間にはスーパーの悪い噂が広がり働く人がいないので、とりあえず来てもらうにはどんな条件でも呑むしかなかったのだとか。

 過労で倒れて救急車で運ばれた人が何人もいて、トイレで自殺未遂を起こした人もいたり、奥さんが癌で危篤だから帰してほしいと言っても帰してもらえず、葬式の場でも「いつから働ける?」と聞いてくる様な会社だ。

 どこからでも噂は流れていただろう。

 だけどやはり小さい子供の事を考えると、黙っていられなくて、私が一緒について行くから訴えに行こう!と私は彼女と一緒に店長の所へ行った。

 そして、私は店長にこう言った。

「いくらなんでも残業が多すぎないですか。それに不公平すぎます。

 毎週日曜日休んでるパートさん達に、そのうちの1日でも彼女に譲って貰うことは出来ないんですか?ここはスーパーですよ。日曜、祭日は忙しいのがわかってるのに、全部休みっておかしいじゃないですか?」

 それに対しての店長の答えは

「それはあなたの考えでしょう?彼女達は日曜、祭日休みの条件で入ったんだから、それでいいんです。残業が出来ないなら、じゃぁ神崎さんが代わりにやったら?」

 もう終わってる。

 正義っていったい何なんだ。。。

 結局それから店長の思うつぼで、私のシフトに夜の時間も加わった。

 それで少しは彼女の遅い時間のシフトは減ったけど、それでもしばらくして、やはり辛かったのだろう。彼女は結局仕事を辞めて行った。

 本店の仕事にも大分慣れて来た頃、私はまた店長に呼ばれた。

 その内容は、元いた支店がやはり人がいなくて大変なので戻ってくれないかと言う話だった。こっちに来いとかあっちに行けとかどうなんだ、いい加減にしてくれと言おうとしたら、須藤さんがどうしても神崎さんに戻って来てほしいと言ってると。。。

 今思えばそれも本当なのか怪しい話だが、須藤さんがそう言ってるならと、元々私が居るべき場所だし、戻る事にした。

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