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アラモード王国史
【アラモード王国】
大陸中西部南端に位置した魔法国家。
西部に山脈と魔界、北方に樹海と『天竜山』、東方に砂漠という環境であることから、南の海路を用いた貿易が盛んで、海運技術に優れる。
魔族界との防衛ラインを維持するために莫大な予算が必要であるため、国政が圧迫されており、この戦線維持のための徴兵精度も民衆からの不満を煽っている。
しかしながら、最大の問題は、そうした負担を重税と徴兵という民の苦難に託し、貴族たちが芸術振興に明け暮れている点である。
――という状況が長く続いた結果、民衆の我慢も限界に達し、反乱が勃発。
一時は軍が抑え込むも、民が徴兵を拒否したことで魔界戦線が崩壊。魔族の大規模侵攻を招き、国家崩壊に至る。
すべての原因は、300年にわたって続いた仮初の平穏が、安全圏に暮らす貴族たちの危機感を奪ったことだったのかもしれない。
貴族たちは先んじて海路での脱出に成功したが、成人の儀式のため、西部にある太陽の神殿に滞在していた王女カスタードは、真っ先に侵攻の波に呑まれた。
その行方は杳として知れぬまま――
◆国史
はじめに混沌があった。
やがて清浄なるものが天に上り、太陽となった。
太陽は人間に宵闇を統べる業を授け、以て国家の誕生となる。
太陽から王権を授かった男は始祖カラメルと呼ばれ、南アラモード地方の伝承では半神ともされる。
始祖カラメルの代から数えること1200年、その子孫3名がそれぞれに王権を主張し、3つの勢力が対立。
ひとつは、太陽の神殿を抱く北西アラモード。ひとつは、強固な城塞都市を誇る北東アラモード。ひとつは、肥沃な扇状地を抑え、海運を手中に置いた南アラモード。
北東が北西を呑みこみ、北アラモードが成立したことから、信仰・軍事の北部と経済・産業の南方という構図が長く続いた。
南北400年の小競り合いの後、北がこれを統べ、以て現・アラモード王国の誕生となる。北東の首都をそのままアラモード王国の首都とし、北西の首都であった地は太陽の神殿を擁する『聖地』として扱う。南の首都であった街は、第2都市として災害時に国政を移転できる機能を備えるよう、方針が定められた。
また、この国家統一の年をアラモード歴0年と制定。
[211年] 魔教団の乱
太陽信仰を否定する魔教団が発生。魔法は太陽が人々に与えた奇跡であるという旧来の考えに対し、知性による魔法の探求を掲げる。
魔法への自信が特権階級意識となり、暴徒化してしまったため、兵力差で半ば力づくに鎮圧されたものの、この理念そのものは大きな影響を与える。
以後、残存勢力の感情のはけ口として『国家魔術院』を設立したこともきっかけとなり、魔法探究の時代が訪れる。
これにより、アラモード王国は大陸屈指の魔法大国となる。
[517年] 魔王誕生
魔王誕生に伴い、魔国および魔軍が成立。
これまでの常識では一部の種族を除いて単独行動を好むとされていた魔族が集団で侵攻してきたことで、虚を突かれた人類は、大陸西方の土地を奪われる。
崩壊した国家の民の一部がアラモードに流入。階級制を重視する社会であった西の民が国政に食い込み、社会構造が緩やかに変化。貴族社会が到来する。
[780年] 第1次火竜戦役
1000年に一度目覚めるという、天竜山に住むドラゴンの襲来により、人類軍魔族軍、双方が大打撃を受ける。
以後、数百年に渡って人魔間の戦争は沈静化。
[961年] 始祖再来伝説の流布
1000年の節目に始祖カラメルが復活し、新たな時代を導くとの噂が国中に流れる。
国は「アラモード歴は始祖誕生から1600年後の、国家統一を起点とするものであり、1000年という数字には始祖と直接的なつながりがない」として否定するものの、加熱するムーブメントは抑えられず。
始祖の導きに対する期待は現国家への不信に転じ、各地で小規模な反乱が頻発。
古代回帰の動きが強まったことで、魔法探究の方向性も変わり、新たな魔法技術の開発ではなく古代魔法の再現など、歴史主義的な気風を帯びる。
この時期、考古学が発達した一方で、遺跡からの盗掘品が高く売れることにより、墓荒しの横行が社会問題化した。ある詩人が残した「小麦を焼くより墓荒らせ」という言葉はあまりに有名であり、現代でも反社会勢力が好んで用いる合言葉となっている。
[1000年] 芸術の時代
案の定始祖が復活することはなく、ゆるやかにムーブメントは過ぎ去った。しかし、古代探究というトレンドだけは継続し、神話や歴史に題材を求めた芸術運動が活性化。
芸術文化の発展に伴い、人体や建築への興味も強まったため、結果として総合的な学術レベルが飛躍的に向上する。
アラモード王国には他国から貴族が留学する機会が増え、外交において非常に強い立場を得る。
[1480年] 第2次火竜戦役
前回の火竜戦役から1000年経過せぬうちにドラゴンが襲来。予想外の出来事に虚を突かれる。
今回は、魔界との境界より内側に襲来したため、人類が多数死滅するのみならず、魔族の侵攻をも招く。
芸術振興により各国との関係が良好であったため、多数の援軍を得たアラモードは、辛くも侵攻を跳ね除けることに成功した。
ただし、国土の17%、国民の20%を失うという甚大な被害により、国力は大きく低下。国民全体のトラウマとして歴史に刻まれた。
この後、ドラゴンに対する恐怖が国内に蔓延。どんなに頑張ってもドラゴンがすべてを奪っていくなら意味がない、という悲観的な考えが横行し、自殺率が増大。あらゆる生産業のモチベーションが大きく低下。
さらに、文化的な停滞は国際社会での地位低下を招く。
これを受けた王宮は、ドラゴンによる打撃を受けても魔族の侵攻が同時には発生せぬよう、魔界との境界において大防壁の建築指示を開始。国家的事業として、国中から労働力をかき集める。
これをきっかけに、防衛戦線の拡充・維持のため国民に労苦が強いられることとなり、上述の滅亡につながった。
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