96.赤と漆黒の白銀
シャミルは崖の傍にある茂みに身を潜ませ、リンゲンの街の中央広場に陣取る、
宗谷は
『……
シャミルとの視界共有により映し出された、赤い角の悪魔。白銀の体色を持つ巨躯が、薄らと金色の輝きを帯びているのが確認出来た。
『
『
『
宗谷は呟きながら、六英雄最強である、白い聖女フィーネを思い出していた。彼女ならば今の絶望的な状況を、個の力で打破出来るくらいの絶対的な力を持っている。
(
宗谷は怒りの感情を堪え、端整な顔を僅かに歪めるに留めると、黒眼鏡を指で軽く抑えた。そして共有された視覚に映りこむ、二体の
『シャミル。中央広場に描かれている
宗谷は、勇者ランディ率いる
『成る程。
『だが『色付き』を召喚するには、強度の高い魂が必要だ。簡単ではない。僕が最近直面したケースでは、
『……自らを生贄に。中々の狂信者ですね』
二人が描かれた
数は六体。全ての個体が爆発を引き起こす
『……
シャミルが戦力状況を簡潔に伝えた後、言葉を一旦区切った。
『……
続けて消極的な提案するシャミル。眼前に映る悪魔の群れに対する恐怖心からか、宗谷はそのテレパシーに若干の揺らぎを感じていた。集中が乱れているのかもしれない。
『止むを得ないな』
宗谷は死に戻りと呼べる祝福を、女神エリスから受けている上、上級悪魔である『色付き』との闘争に慣れている事もあって、比較的冷静に状況を分析出来ていた。そして、現段階で戦闘を挑む事は無謀と判断した。
今、灰塵と化した崖下のリンゲンの街に侵入する事は、
大人しく救援を待つ、それ以外の選択の余地は現状無さそうに思えた。
(……確か、イルシュタットに居る
宗谷が面識のある
それに加え、三名の冒険者の存在を、鍛冶師ドーガの工房で、セランと酒を酌み交わした時に聞いていた。
(
宗谷は二十年前、レイとして活動していた頃に、ランドという名の男と面識があった。白兵戦闘を好む豪快な
(……ともかく、セランくんの言っていた
都合の良い皮算用である。宗谷はその事を自覚していた。
だが救援メンバーに能力の高い者が揃わないのならば、いずれにしろ街に踏み込める状況ではない。宗谷は再び戦術的な思考を巡らせつつ、再び悪魔たちの監視を続けた。
中央広場に現れた六体の
『……喧嘩? シャミル、連中の声は聞こえるか?』
『いえ、少し遠過ぎますね。……私が近付きましょうか? あるいは魔法を』
『無理はするな。気取られると
違和感を感じた宗谷が、崖の茂みから動こうとするシャミルを諫め終えたと同時の、一瞬の出来事だった。
その不意打ちをまともに受けた、漆黒の角の
『は……仲間割れ!?』
驚愕するシャミル。この行動は宗谷にとっても予想外だった。
同格の『色付き』同士が、反目し合う事は基本的には無い。魔族の絶対君主である、
二体の
よろめきながら立ち上がる、漆黒の角の
対する
『……あの
宗谷の頭の中に、二つの可能性が思い浮かんでいた。
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