49.ささやかな宴の始まり
「無事、
宗谷はスーツの胸ポケットから、出来上がったばかりの
「おー、ピカピカだな。はは、これで二度と燃やさずに済むわけだな」
「流石に
宗谷は茶化すメリルゥの言葉で、
「わたしが
「まあ、急いで駆け上がるつもりはありませんが、依頼制限もあるので、さらなる昇級を目指すつもりです。……おや、来たようだね」
ウェイトレスが、木製のジョッキに注がれた
「ソーヤは、
「ここでも、最初は
宗谷は普段
「ミアはアルコールはダメで、ミルクなんだってさ。教義の問題って言ってたか? 厳しいんだな、
「……すみません、御二人に付き合えなくて。二十歳を迎えていれば
ミアは、ミルクの入ったコップを手にしながら、申し訳無さそうに二人に伝えた。いずれにしろ、未成年と言える年齢の彼女は、アルコール等は飲まない方が身の為だろう。
「酒は無理に付き合う物ではないさ。……それより、ミアくん、大丈夫かね? 元気が無いようだが」
「えっ……はい。大丈夫ですよ。旅の疲れは取れましたし、ちゃんと食欲もあります」
今日のミアは口数が少なかった。やはり前回の冒険は、色々堪えたのかもしれない。幸い
「よし、始めるぜ。……まあ、冒険は良い事ばかりじゃなかったからな。……今回はソーヤの
メリルゥが音頭を取る。
それから、しばらく他愛もない談笑をしていると、メリルゥが頼んだと思われる、若鶏のハーブ焼きが、ウェイトレスの手によって運ばれてきた。……その数は五人前。それに加え、ボールに入ったポテトサラダがテーブルの中央に置かれた。
「は……? メリルゥくん。これ、
「ああ。わたしが頼んだ。安心しろよ、わたしが三人前食べるからな」
メリルゥは、目を輝かせて鶏肉を見つめていた。真ん中に置かれたポテトサラダ入りのボールを囲むように、テーブルを覆った五皿の鶏肉の
「……なんだなんだ、ソーヤ、お前なぁー、わたしより全然若いのに、そんなんじゃだめだぜ」
「残念な事に、若くないんですよ。百年引き籠って、成長の止まっていた
宗谷は人間と
「……ああ? 誰が、胸の成長が残念なとこで止まったって?」
「そんな事は言ってませんよ」
いつの間にメリルゥは、赤
「はい。ソウヤさん」
ミアがボールに入った、ポテトサラダを小皿に盛り付けて、宗谷に手渡した。同じように、メリルゥと自分の皿にもポテトサラダの盛り付けを終えて、配膳をした。
「ミアくん、ありがとう。すまないね。気を使わせてしまって」
「いえ……あの、ソウヤさん」
ミアは席を立つと、宗谷の耳元に口を寄せて、小声で囁いた。
「あのですね……ソウヤさんは、これから、どうなさるんですか?」
ミアは宗谷の耳元でそのように囁いた。
「……どうなさるって。ミアくん、それはどういう意味?」
宗谷はミアの質問の意図が分からず、質問で返した。
「あ、いや……そのままの意味です」
「おい……ミア、なんだ。ソーヤと内緒話なんてして」
メリルゥが、ミアの耳打ちを指摘した。少し酔いが回っているのか、メリルゥの声は少し大きかった。周囲の客の視線が気になったのか、ミアは、気まずそうにうつむいたまま席に戻った。
「……ちっ、なんだよ。このあとソーヤと、逢引でもするつもりだったのか」
「は……ちっ、違いますよ! メリルゥさん、こんな人目があるところで、なんて事言うんですか!」
ミアは顔を真っ赤にすると、我慢ならないとばかりに両手を伸ばし、メリルゥの両頬をつまんで引っ張った。
「……こうです!」
「わ、わ、わ、やめろ、いだだだだ!」
身を乗り出しながら、メリルゥの頬をひっぱるミアを見て、宗谷は思わず吹き出しそうになったが、すぐ止めに入った。
「くくっ、ミアくん、ミルクで酔った訳ではあるまい。……何か言いたい事があるのなら、僕にわかりやすく話してくれると助かるのだが」
宗谷は微笑を浮かべると、新たに
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