36.敗戦処理と討伐隊
トーマスが話を終えると、わずかの間、場が静まり返った。その静寂を打ち破ったのは、赤毛の女魔術師レベッカだった。
「……ランディを……二人を、助けて……まだ……」
声も絶え絶えで、今にも泣き崩れそうなレベッカを、ルイーズが苦々しい表情で見ていた。砦から戻らない二人の生存は、相手が
「ルイーズさん。これから、どう対処するのですか?」
宗谷は、ただ一人冷静な表情のまま、ルイーズに尋ねた。彼女は十秒程の短い間、無言で思考を巡らせていた。
「……冒険者ギルドから再依頼を出すわ。誘拐された村人三名の安否確認及び、残存した
ルイーズは依頼内容の説明を終えて、一拍置くと、さらに報酬の説明を始めた。
「
冒険者ギルドから、
「……もし、
狩人のトーマスがうなだれたまま、手を上げた。依頼の引継ぎの関係上、もし動けるのであれば、当然、案内役となる彼には来て貰った方がいいだろう。
「レベッカ、お前はどうする? ……辛いなら無理をせず待っていた方がいい。お前は最初から依頼に反対していたんだ」
「……私も行く。……ランディに、早く会いたい」
レベッカは立ち上がり、
「
宗谷が手を上げた。心の中では、砦で消息を絶った
「ソウヤさん、確か
トーマスが宗谷に頭を下げた。ランディの尻拭い役をしているらしい彼らしく、朴訥だが、誠実な印象を受けた。
「私も行きます。……ランディさんやバドさんは、きっと治療が必要な事態になっていると思います」
ミアは言葉を慎重に選びつつ、宗谷に続いて手を上げた。彼女はランディやバドが無事で居ると信じているようだった。
これで討伐隊を名乗り出たのは、宗谷とミア、それと
「ソウヤさんが参加してくれるなら心強いわね。でも、この依頼は
ランディが砦で消息不明となり、
「そういえば、この中には
宗谷が号令をかけると、壁際にもたれ掛かっていたトーマスがゆっくりと立ち上がった。ミアとレベッカも出発の支度を済ませている。
「ソウヤさん、ごめんなさい。……
ルイーズが苦しそうに宗谷に頭を下げた。依頼の仲介により、この結果を齎した事を気に病んでいそうだった。
「ルイーズさん、お任せ下さい。それと気に病まぬよう。神の眼で最適解を常に選び続けることは、人間には不可能です」
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