35.狩人トーマスは語る
「トーマス君? ……レベッカ……?」
ルイーズは受付のカウンターを軽やかに飛び越えると、レベッカを背負うトーマスの方に駆け寄った。
「……ルイーズさん、レベッカの怪我は心配無い。だが、精神的にかなり参っててな。……途中から歩けそうに無かったから、俺が無理矢理背負ってきた」
トーマスは小声で呟くと、レベッカを壁際に降ろし、自身も同じように壁を背にもたれかかり、息を整えていた。トーマス自身は目立った怪我をしていないようだが、アクシデントに加え、人一人背負い体力を消耗したのか、表情には焦燥の色が見えた。
「ルイーズさん。僕は神殿で、ミアくんを呼んできます」
宗谷は素早くギルドの入り口に向かい、外に飛び出した。その時、目的であった杖を抱えた少女が、神殿側の道から此方に向けて走ってきた。その表情には焦りの色が見え、随分と慌てているような動作であった。
「ミアくん。丁度良かった。……まさかとは思うが、神の啓示で事態がわかったのかね」
「ソウヤさん。忘れ物をしてしまいました。……私の席に、ポーチが置いてありませんでしたか?」
「……君がそそっかしくて良かった。まだ
「――
ミアが
「上手く行きました。
「…………ミア」
「レベッカさん、今は休んでください」
震え声でレベッカは何かを言いたそうにしていたが、ミアは微笑みかけると、彼女を労わった。
「……トーマス君。疲れているところを悪いけど、状況を説明出来るかしら。
「ああ。
ルイーズはトーマスに状況の確認を始めた。バドとは確か、
「
「ルイーズさん。
「……まさか。
「ええ。
宗谷は昔、
「その可能性もあるわね。……私の失態だわ」
「依頼を聞いた段階で、そこまで想定するのは難しいのでは。……トーマスくん、君達は、想定外である
「……ああ。レベッカは一度引き返すべきと主張したんだがな。ランディとバドは、
トーマスは自嘲気味に呟き、髪を掻き毟った。
「バドの奴は、
それを聞いて、ルイーズが頭を抱えた。冒険が順調過ぎる事に対する彼らへの不安が、悪い形で的中してしまったようだ。
「砦に突入後、俺達は順調に
「
宗谷は
「ランディが、俺にレベッカを連れて撤退しろと指示をし、バドもそれに反対しなかった。二人を残したまま、俺は砦の外に出た……それから、いくら待っても二人は砦から戻らなかった」
トーマスは言い終えると、腰に掛けた水筒を取り出し水を飲み、うなだれた。
「俺から話せる事はこれくらいだ。……何か質問があればあれば聞いてくれ。話せる事なら話そう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます