37.白銀級の冒険者達
だが、臨時のパーティーを結成した、宗谷とミア、それと
四人は冒険者ギルドの隣にある、冒険者の酒場に向かったが、まだ時間が早い為か空席が目立ち、店内には、少数の冒険者の客が居るだけであった。
「僕は誰がどんな
宗谷が仲間を見返すと、トーマスが顔をしかめていた。トーマスの視線を追ってみると、壁際の席に二人組の男が陣取り、談笑をしている。
一人は銀髪を七三分けにした長身の男。
「トーマスくん。彼らがそうですか」
「ああ。とりあえず話をしてくる」
トーマスは浮かない顔で二人組の男の方へ向かった。宗谷はミアやレベッカの方を見ると、彼女たちも何やら不安そうな視線を送っていた。
「ミアくん。彼らをご存じで」
「ライドさんとジャッカルさんのコンビです。
「訳ありですかね」
「ジャッカルさんの方。いえ……今は止めておきます」
何かを言いたげそうにしていたミアだったが、口を閉ざし、両手を組んで祈るような仕草で俯いた。
「ライドさん、ジャッカルさん、力を貸してもらえないだろうか」
「……ん? なんだ。トーマスじゃねえか。お前、まだ勇者野郎のパシリやってんのか」
軽蔑するような口調のジャッカルに対し、トーマスは深々と頭を下げた。
「ま……お前のパシリっぷりに免じて、話だけは聞いてやるよ。ほれ、金貨1枚」
ジャッカルは、トーマスに不慮の事態が起きたのを察したのか、ニヤついていた。トーマスは無言のまま、腰に下げた革袋から1枚の金貨を取り出し、テーブルに置いた。
トーマスが
「……おい、ライド、聞いたか?
「おい、ジャッカル」
「あは……あはははっははははっ……! ざっっっまぁねえなァ! あの勇者の小僧、ヘマしやがった!」
「ジャッカル。止せ」
「さんっざん人を下衆呼ばわりしやがって! いい気味だなぁオイ!」
腹を抱えて悪趣味に笑うジャッカル。ライドは舌打ちすると、呆れ顔で溜息を付いていた。一応ジャッカルを咎めてはいたが、強く止める気は無いようだ。
「……ひ、酷いじゃないですか! ジャッカルさん、なにが、何がそんなにおかしいんですか!?」
レベッカが前に出ると、殆ど泣きそうな表情と震え声で、ジャッカルに抗議をした。
「レベッカちゃん、俺は君には同情的だぜ? あの勇者野郎は、君を見てなかった。……一途にずっとついてきたのに可哀想になァ」
「そんな事は、今は関係ないじゃないですか……それに、私が好きで勝手についていって……」
「はっはっ、あの自己中野郎に、天罰が下ったのさ」
「ううっ……うううう」
「ジャッカルさん」
ミアがジャッカルと泣き崩れたレベッカの間に入り、ジャッカルを睨みつけた。
「おっ……ミアちゃんじゃねえの。お久しぶり」
「レベッカさんは、ランディさんが心配で仕方ないんです。貴方がランディさんと仲が悪いのは知っていますが、心無い言い方は止めてください」
「怒ってる顔も可愛いねえ。でもさ、ミアちゃんだって、本当はあの野郎が嫌だったんだろ?」
「それは今は関係無いでしょう。……ランディさんが無事であって欲しいと思っています」
「へぇ……」
ジャッカルは、舌なめずりすると、ミアの身体を舐め回すように見ると、腰のポケットから、
「なぁ、ミアちゃん。この銀ピカが必要なんだろう? ……それなら、ミアちゃんが一晩お相手してくれれば、喜んで協力するぜ」
ジャッカルはニタニタ笑うと、ミアに手を伸ばそうとした。
「流石に度が過ぎるのでは?」
宗谷がミアの間に入り、ジャッカルの手首を掴んだ。
「……てめぇ、何者だ?」
「宗谷と言います。……ランディくんに下衆と言われたそうで」
「喧嘩売ってんのか……離せよ」
ジャッカルは宗谷を睨みつけるが、宗谷は臆する事も無く、手首を掴み続け続けた。
「……正しいのでは。下衆そのものだろう? 不愉快極まりない」
「……なに締め続けてやがる! 離しやがれ!」
無理矢理拘束から逃れようと、ジャッカルが力を込めた瞬間をあえて狙い、宗谷は手を離した。
「うおおおっ!」
ジャッカルは勢い余ってバランスを崩し、派手に転倒しかけた。
「離してやりましたが」
「……眼鏡野郎。……くそっ……てめぇ、ぶっ殺してやる」
宗谷は、普段冗談をかわす時のような薄い笑みは無く、殺気を帯びた冷たい視線を向けていた。一方、恥をかかされたジャッカルは、ダガーに手を伸ばしかけたが、ライドがその手を抑えた。
「ジャッカル、いい加減にしろ! ルイーズさんに迷惑をかけるな。……ソウヤと言ったな、すまない。察しの通り、コイツは根っからのクズ野郎で、俺も手を焼いている」
「おい、ライド、相棒に対してそういう言い方はねえだろ?」
「黙れ。お前が盗賊ギルドの幹部じゃなければ、とっくにぶちのめしてる。いや、その前にルイーズさんがお前を斬り捨ててるな」
ライドが今度は強く嗜めると、ジャッカルは悔しそうに舌打ちし、今度は黙り込んだ。
「トーマス、お前の話はわかった。だが、依頼の誘いの件。答えはノーだ。先程の話、甘く見積もっても、
「……ライドさん。どうしても無理ですか? 貴方はランディとは仲が悪くなかったようだから、少し期待をしていた」
トーマスは縋るようにライドに頼んだ。最初から性格に難のあるジャッカルを除いて、彼だけを連れて行きたかったのかもしれない。
「……
ライドは冷静に依頼内容の分析を披露すると、なおも続けた。
「これは
「……なるほど、冷静な分析だ。ライドくん、貴方の言う事は一理あります」
宗谷はライドを称賛した。敵戦力をよく分析をしている。だがそれ故に、勧誘が上手くいかなさそうな流れに、傾いてしまいそうだった。
「ソウヤと言ったな。もしアンタが
「これが冒険二回目となります。……ライドくん、貴方に来て貰えるなら助かります」
「……すまないが、他を当たってくれ。救助の成功を祈ってる」
ライドという男は慎重だった。同じ
「残念。……やれやれ。振り出しに戻ってしまった。困ったものだ」
白兵戦および魔法戦、両の戦術に長けた宗谷でも、冒険者証の色だけはどうにもならなかった。何としても
その時、酒場の入り口から、何処かで聞いた事のある声がした。
「……さて。今日も稼いだな。……こんだけあれば、若鶏のハーブ焼きが三人前は食えるぜ」
宗谷が振り向くと、銀髪のおさげをした
「このタイミングで、唯一の
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