Refrain♯8

『ニュース速報です』


情報統制のためネットでのニュース配信は制限されているの。これは全世界的な傾向よ。

代わりにテレビが再び情報ソースとしてその地位を取り戻しつつあるの。


ロクな情報ないけどね。


最後のライブ会場へ向かう前、みんなでコンビーフの缶詰をかき込んでたの。そしたらネマロが観てた端末にチャイム音が鳴って、ニュース速報のテロップが流れたわ。


『政府は今日未明、無人爆撃機、’shit-one’ をウラガノへ向わせたことを明らかにしました』


「はは。ようやく情報開示か」


『現地時間の今日深夜、’shit-one’ はウラガノの市街地に予定通り到達しましたがシステムに重大な障害が生じ、目標としていた軍事施設ではなく‘人種差別根絶軍’ が運営する避難所を破壊した模様。誤爆と見られます』


え。

誤爆・・・?


「ちょ、ちょっと! なんだよそれ!?」

「まずいよ・・・ウチらの都市ポリス、孤立しちゃうじゃん」

「孤立どころか、四面楚歌だよ」


『詳細は明らかになっていませんが多数の民間人が爆撃に巻き込まれた模様です。カヤノ首長は’事実ならば誠に遺憾だ‘とコメントしており、ウラガノのベッケン首長が出した「重大な国際都市法違反で決して許されない」との声明を受け、政府内で対応策を検討していく模様です』


誤爆じゃないわ。

狙ったのね。


わたしたちは、車座になったわ。

胡座ですわっている自分の太腿にみんな目を落としてる。

わたしは抱えた膝になんとなく額を、とっ、と乗せたまましばらく考えてる。


「メル・・・」

「なに? ロック・・・」

「ウラガノの独立を認めないわたしらの都市ポリスとカヤノ首長を、それでもわたしは見限らなかった」

「ええ・・・」

「ウラガノの『人種差別根絶軍』は人種差別を中心に、性差別、いじめ、児童虐待、宗教上の迫害といったあらゆる差別を根絶するって理想を持ってる。『ロックしてる』って憧れてたよ。わたしらの都市ポリスでも音楽をやれる限りはまだいけると思ってた。ウラガノへの軍事施設のピンポイント爆撃も、まだ、申し訳が立つかもって思ってたよ」

「・・・・・・」

「でも、メル。もう、いいよね? 音楽で人を救うなんて無理だよね? わたし、本当に疲れたよ・・・」


ああ、ロック・・・

何も言えないわ。

疲れたなら休ませてあげたい。

悲しいのならそっと背をさすってあげたい・・・


そうね・・・


「最後のステージ、決めたわよ」

「え」

「メル、どこ?」

「政府軍の基地」


ああ・・・

思い出したわ。

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