Refrain♯3

「メル、みんな、聞いて」


なにかしら。

マネージャーのカナタさんが伏し目がちなことなんて初めてだわ。


「来週から音楽停止よ」


あ。

またか。

でも、わたしは『また』でもみんなはそうじゃないはず。


「え!? カナタさん、何それ!?」

「ロック。ウラガノへの空爆が決まったの」

「え!?」


ああ。そうだったわ。WW.world war IVの時もそうだったの、思い出したわ。

理由は・・・


「『もう楽しいことはない』って国民に自覚してもらうためよ。このことはメジャーレーベルのアーティストと一部の音楽誌にしか知らされてないわ」

「なんだよ、それ・・・」


みんなカナタさんの説明に納得できないみたいね。


「メル! あなたはステージに立ってくれるわよね!?」

「イサキ。国策なら仕方ないわ。音楽を辞めるのよ」

「なに言ってんの!? 音楽のない生活なんて考えられない。 そんなの、死んでるのと同じよ!」

「じゃあ、死ぬしかないわね」


ああ。

言ってしまった。

せっかくみんな一緒に曲を作って、ジャムって、わたしもあのステージの真ん中に立っていられたのに。

きっとまた昔のバンドたちのようにわたしに言うわ。


『冷めてんね』


「メル」

「なに? ロック」

「じゃあ、一緒に死なないか?」

「え」

「音楽、辞めずにさ」


あ。

この子、違う。

ロックはわたしが今まで一緒にいたどのバンドの子たちとも違う。


「バカ言わないで! 政府に逆らったら本当に殺されるわ!バンドだけじゃなくてレーベルもピンポイントで爆撃されるわ!」

「カナタさん。音楽が無くなったらそれこそ思うツボでしょ。ロックンロールが無くなったら、自問自答しながら真剣に生きてる子たちの息の根を本当に止めるのと同じでしょ? わたしは抗いたいんだよ」


ああ。

ロック、あなたって、ほんとにいい子ね。

どうしようかしら・・・

そうね。

それもいいかもね。


「みんな」


わたしのかけがえのない、音楽の寄る辺。


The Evolution


わたしはステージでシャウトするのと同じように、みんなに語るわ。


「やりましょう。布告通りの空爆開始の、その時刻に」


みんな、クラップしてくれた。

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