Refrain♯2

「Please welcom, 『The Evolution 』!」


街の真ん中にせり上がる正方形のステージの、その中央前方がわたしの定位置。

記憶のある限りはずっとここにい続けているわ。

わたしの隣にいるギターの子、ベースの子、後ろのドラムの子たちは随分と入れ替わったけれども、わたしは変わらずここに立ち続けてる。


今一緒にやってるバンドの子たち、一番のお気に入りかも。


ギターの『ロック』。熱くてクールなカッコいい女の子。

ベースの『カセ』。ものすごいテクニック持ってる。そして協調を旨とする。

ドラムの『イサキ』。大人しそうな顔して気持ちがとっても強い女の子。

キーボードの『ネマロ』。女の子・・・だけどもとっても個性的。星型のサングラスかけてアフロなのよ。


そして、ロックしてるバンドの真ん中に立つわたしは銀髪ロングで一見清楚なお嬢さま。

初めて観に来てくれるひとたちは違和感ありあり、もっと言うと奇異なものを見る目だけど、ステージが始まった瞬間、意識が変わるわ。


「わ・・・なにこれ!」

「カッケー!」

「ロックしてる・・・」


ああ。

このビルの谷間を切り取った空の下で、詰め込まれるように密集するオーディエンスたちの感情が伝わってくる。


気持ちいいっ!


やっぱりわたしは歌をやめられない。


え?


いつからやってるのかって?


忘れちゃったわ、そんなこと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る