幕間 其の二

 幕間 其の二


「今、なんとおっしゃられました?」


 城が天手、玉座には殿―その言葉を九織は問い返した。


「降伏する」

「馬鹿な!既に血は流れたのです!それを貴方は、」

「流れたが故だ。これ以上は流せぬ」

「勝てぬというか。……覇者の太刀がありましょう」

「ならぬ。あれはただの飾りよ。そも、妖刀の力は人を切る為にあるのではない」

「…弱すぎる」

「誇りだ」

「戯言を!」


 その言葉と共に九織は太刀を抜き去り―その刃を殿へと向けた。


「覇者の太刀はどこです。貴方なくとも……俺と、その太刀があれば負けはない」

「……教える気は無い」


 殿がそう言った瞬間―九織は太刀を振り下ろした。殿を、君主をその凶刃に掛ける―だが九織の胸に罪悪感はない。


 あるのは責務だ―流された血に。流してしまった血に報いる為―止まるわけには行かない。


 と、背後で音―騒ぎを聞きつけてか、家老が天手へと踏み込んできた。

 そして倒れた殿―血のついた太刀を持つ九織を見て、目を見開いた。


「九織…何をしている」

「才条か。殿はご乱心なされた。…故に、俺が切り捨てた。この男に君主足る資格はない」

「馬鹿な事を………これで潰えたのだぞ」


 家老―才条はそう九織を睨む。しかし、そんな戯言を九織が聞く気は無い―。


「覇者の太刀はどこだ」


 血のついた太刀向け、そう尋ねた九織を睨み、才条は断じた。


「乱心はそなたよ……九織」


 そして才条は太刀に手を掛ける―その様を九織は笑った。


「俺を切るか?才条。貴方に、俺が切れるのか?」

「弁えているつもりだ。切れはせぬ。……これが、ただの太刀ならな」


 その言と共に才条は太刀を抜き放ち―直後、才条の太刀から何かが溢れた。


 暗がり―影。悪寒を生む人の道を外れた力が。

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