終わり・・・そして・・・

私にとって、彼が全てだった・・・生まれて貴方に会うまで私自身、生きる意味を見出せなかった私を・・・貴方は救ってくれた・・・・


だから、貴方が自身を犠牲に絶対神を封印する事になっても・・・死ぬ事になっても・・・一緒なら大丈夫・・・一緒なら怖くない・・・そう思ったから・・・私を取り込んでと提案したのに・・・


「・・・何で置いていくのよ・・・・」


私はそう言って、座り込んでいた・・・目からは涙が溢れ出いるが・・・拭う気も起きない・・・・というより、私涙って出るんだなあ・・・と半分投げ槍な気持ちで・・・そんな事を考えていると・・・・


「・・・えっと、神様でしょうか・・・?」


・・・・勇者が話しかけて来た・・・・


「・・・・・何・・・・?」


「・・・敵の神は一体どうなったのでしょうか・・・?お恥ずかしいながら、ほとんど、何も見えなくて・・・最後にボロボロになった男の人と大量の大きな魔物の軍勢が現れたのは見えたのですが、次の瞬間、光が包んで、気がついたら、こうなっていたので・・・」


・・・ボロボロにってもうちょっと言い方があるでしょうに・・貴方達の所為で・・・ロイドは・・・彼は・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・ボロボロになっていたとあなたが言っていた男性が神様よ、私はただの契約をしていた精霊・・・敵の神は彼によって封印されたわ・・・もう、貴方達の世界に脅威を与える存在はいない・・・これでいい・・・?」


それだけを言い、何とか立ち上がって、周りを見渡すと・・・そこには、ロイドの抜け殻と言うべき、身体があった・・・身体だけあってもしょうがない・・・解っていても・・・持って行かないという選択肢は無かった・・・・


「彼は・・・」


「死んだわ・・・・」


それだけを言って、私は森の中に入っていく・・・・


「・・・・かみ・・・精霊様は?どこに・・・・」


「・・・・・・私の事はもう・・・放って置いて・・・・」


そう言って、勇者達から離れていった・・・・ねえ・・・何で置いていったの・・・?


―――――――――――――――――――――――――――――――――


私達は呆然と立ち尽くしていた・・・何とか神卸をしたのは良いが、その後の出来事が全然わからなかった・・・とんでもない轟音、地響き・・・この世の終わりが来たと思う程のそれは・・・何が何だかわからない内に起こり・・・解らない内に終わった・・・・


ただ、1つだけ分かったのは・・・ダールとジュル・・・そして、降臨してくれた一人の神が犠牲になって、この戦いは終結したという事だけだった・・・・


最後に残っていた神様・・・ずっと泣いていたけど・・・大丈夫だろうか・・・・


『よくぞ、神の啓示を果たしてくれた・・・本当にありがとう・・・!!』


頭の中に声が響く・・・周りを見渡すと・・・ルザーとルウェール、ナール、ヴァエの4人にも聞こえている様だ・・・


神自身が私達に対し祝福と闘いの終結の言葉を投げかけてくれている・・・


だが、言葉を聞いても、私自身の心は晴れなかった・・・・


『・・・お主達には辛い旅をさせてしまった・・・本当に申し訳ない・・・だが、落ち込んでいる暇は無い・・・!お主達には自分達の世界に戻ってやるべきことがあるだろう・・・』


「・・・ダールとジュルは・・・」


私は思わず、口が出てしまった・・・そんな事、解り切っている事なのに・・・


『・・・すまない・・・あやつらは、完全に消えてしまっておる・・・もう会う事は・・・』


「そうですか・・・」


私の頬に涙が流れるのを感じる・・・解っていた事だけど・・・言葉にされると・・・きつい・・・


ルウェールが私を抱きしめてくれる・・・私はその胸の中で・・・泣いた・・・・


降臨した2人の神の内残された一人もこんな気持ちだったのだろうか・・・・


『最後にお主らの世界に我の力を使い戻そうと思う・・・ルザーにルジャ・・・別れの挨拶が済んだら、心の中で呼び掛けろ・・・そうすれば・・・元の世界にすぐにでも戻そう・・・』


私はその言葉を聞き、泣きながらも、魔族達に別れを告げていった・・・本当は私が居なければ、魔族達も襲撃に来なかったかもしれないのに・・・そう考えると、更に申し訳ない気持ちになる・・・


「そんな事は無い・・・君たちが来なくとも、いずれあいつ等は勝手に来ていただろうさ・・・気に病む事では無い・・・」


大柄の魔族がそう言う・・・他の魔族達も気にするな・・・また遊びに来てね・・・等・・・そんな言葉をかけて来てくれる・・・その心遣いが、また、心を締め付ける・・・・・・


『もうよいのか・・・?』


『・・・うん、長引くと・・・さらに戻りづらくなるから・・・』


本当はここに残って、復旧の手伝いをしたいと思ったりしていた・・・だけど、私達の世界も魔族達によってボロボロになっている・・・放って置いて、民衆がまた暴動を起こす可能性すらあるのだ・・・戻らないわけにはいかない・・・


『・・・解った・・・お主らには、本当に苦労をかけた・・・世界を救ってくれてありがとう・・・」


そうして、私達は光に包まれた・・・


―――――――――――――――――――――――――――――


「・・・それで、わざわざ、神の世界に連れてきてどうしたんですか・・・?役立たず・・・!!」


私は皮肉を込めて創造神にそう言う・・今の私はロイドとの本契約を解除され、仮初の身体を与えられた結果、神の力を完全に失っている・・・神界に来る事すら、自分の力ではこれ無くなっている私を連れてきて、本当にどうするつもりなのやら・・・・


「・・・その件は本当にすまない・・・我の力不足だった・・・・あれだけの力を有しているとは、我も想像できなかった・・・申し訳ない・・・」


「・・・別にいいですよ・・・謝ったからと言って・・・ロイドは・・・・彼は・・・・戻ってこないのだから・・・・・」


涙が止まらない・・・さっきから・・・止めようとしているのだが・・・どうしても・・・止めることが出来ない・・・・


「・・・・・・・・・・・・」


「それで・・・何の様なのですか?」


「・・・お主はこれからどうするつもりなのじゃ?元の世界に戻りたければ、戻すことは出来るぞ・・・」


そう、元々の世界、敵側にあった私達の世界は、こちらの世界に来た時に既に創造神側の世界に移してあった・・・向こう側の神からしたら、たった一つの世界線・・・特に気にも留めなかったようで、簡単に移すことが出来た・・・だから、彼が守りたかった世界は、無傷で存在しているのだが・・・


「・・・戻りません・・・戻れる訳が無いでしょうが・・・ロイドを・・・彼を居なくさせてしまって・・・」


戻れる訳が無い・・・彼らが待っているのは、ロイド・・・私では無い・・・そんな世界に私だけ戻っても仕方が無いだろうに・・・・


「・・・・・・・・・・・だったら、お願いがあるのじゃが・・・よいか・・・?」


「願い?」


「ああ・・・魔界と言う世界は、絶対神が我達の世界と繋げてしまった為、魔界を封印、または消滅させることは、我らの世界全てを壊す事になってしまう・・・だから、魔界はそのままにしておこうと思っておるのじゃが・・・・」


・・・そう言えば、絶対神がそんな事を言っていたような・・・まあ、私にはもう・・・関係無い事だけど・・・


そんな風に考えるが、頭の中で、その考えを否定する言葉が沸々と浮かんでくる・・・世界を平和にしたい・・・皆が笑っている世界を作りたいって言う言葉が・・・


・・・何で・・・こんな言葉が浮かぶんだろう・・・疑問に思ったが・・・すぐにある考えに行きつく・・・


ああ・・・そうか・・・ロイドと同化した際、ロイドの感情もその時に私の中で同化して、残っているのか・・・ロイド・・・彼は、世界を平和にするのが望みだったんだから・・・


「じゃが・・・魔界は魔王を柱に作られた世界・・・恐らく・・・このままでは遠くない未来魔王が生まれるだろう・・・・じゃが、最早、世界を修復するにも人手が足りない状態・・・もはや、対処できる人員も限られておる・・・」


「・・・それで・・・何が言いたいの・・・?」


私は苛立ち気にそう言って・・・ロイドの亡骸を抱きしめる・・・最早、生きる望みすらない私にどうしろと・・・・


「・・・・・勇者がいた世界の管理する神を新人に任せる・・・その補佐をしてほしい・・・」


「・・・正気・・・?」


あの世界は、神卸の巫女を通して、神と人との交流が盛んな世界だ・・・他にもそう言った世界は確かにいくつもあるが、勇者を選出させた世界・・・それを、新人の神に任せるなど・・・・


「・・・その神はダールとジュルの子供だ・・・」


その言葉に私は口を噤んだ・・・そうか・・・あの二人は・・・・


「・・・・・それで、私にどうしろと・・・?」


「・・・魔界の魔王を退治するにはそれに匹敵する力を持つ者・・・勇者が必要になってくるだろう・・・その選出される者を今回勇者に選ばれた者が生まれた世界から選んでいこうと思っている・・・今度は、神卸の力では無く、純粋な力を与える者を選出してな・・・・」


そう言った後、創造神は一旦息を吸って、こういった・・・


「その時生まれた勇者に対して、力を貸してほしい・・・今のお主なら神の力も残っておらん・・・世界にそのまま残っても影響は無かろう・・・出来たら、そのまま手を貸してもらえると助かる・・・」


創造神はそう言って、下を向いた・・・


「ロイドを失ったお主には酷な事だと思う・・・だが、今回の試みは初めての事でのう・・・一応笑いの神と知識の神の子には色々アドバイスをして送り出すつもりじゃが・・・あやつだけで、対応できるかどうかも怪しい・・・出来たら、あやつにアドバイスをして、補佐をしてほしい」


「・・・尚更、新人の神に頼む事では無い事だと思うんだけど・・・」


私は、そう言うと、創造神は顔を上げ・・・引きつった笑みを浮かべながらこう言った・・・


「・・・そうしたいのは山々なのだがな・・・もはや、世界は完全崩壊までとはいかずとも、かなり壊れてしまっておる・・・それこそ、今いる神々が存在を維持できるかどうかまでな・・・世界を直すのに人員が手一杯でもはや、出せる人材がおらんのじゃ・・・もしもの時は我も出るつもりじゃが・・・恐らく生まれてくる魔王はそこまで力を持って生まれてはこない・・・優先順位は低いのじゃ・・・・」


その言葉に私は溜息を付いた・・・


「ようするに、魔王が生まれた際、他の世界に被害が出ない様に、勇者を魔界に送り出して、上手くいけば退治・・・出来なければ、勇者を使い時間稼ぎ出来る様にしたい・・・・それに、勇者が送り出されれば、魔王はその世界に注目して他の世界の注意は疎かになる・・・簡単に言えばエスケープゴーストって事ですよね」


「・・・言葉で取りつぐっても意味がないじゃろうな・・・ああ、その通りじゃ・・・」


その言葉にまた、私は溜息を付く・・・世界がもはや壊れかけなのは解っているが、それでも、なりふり構わな過ぎでは無いだろうか・・・


「・・・最早、復旧は一刻の猶予も無いのじゃ・・・解っておくれ・・・」


「別に私には関係ない事ですからいいですけど・・・」


そう言いながらも、私の心はチクチクと痛んでくる・・・恐らく、ロイドの感情の所為だろう・・・私はロイドを感じられるものを見つけ出し、嬉しさ半分・・・こういったものでしか、彼を感じられない現実に悲しみを感じていた・・・・


「・・・・やはり・・・手伝ってはくれないのか・・・」


その言葉に、私は考える・・・私自身はこの世界がどうなろうと、知った事では無い・・・だけど、ロイド・・・彼が最後・・・どうして、自らを犠牲にこの世界を救ったのか・・・


『皆が笑える世界を作りたい』


・・・それを考えると・・・断る選択肢は自然と消えていた・・・


「・・・いいですよ・・・補佐をしても・・・」


その言葉に創造神は目を丸くした・・・確かに、断る流れの話し方だったが、そこまで驚かなくてもいいだろうに・・・・


「・・・・・・本当に良いんじゃな・・・・・・」


「いいも何も、ここで断ったら、ロイドが何で命を懸けたか解らなくなる・・・それが嫌なだけよ・・・」


そう言って、私はロイドの亡骸をさらに抱きしめる・・・もはや、彼を感じることが出来るのは、自身の感情とこの骸だけなのだから・・・・


「・・・・・・本当にすまない・・・・」


「そう思うなら、彼の願い通り、全ての世界を平和にするように努力して・・・並大抵のことでは無いでしょうけど・・・」


私は未だ止まらない涙を流しながらそう言う・・・・・・・何で、私を置いていったの・・・ロイド・・・・・

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