会いたくなかった再開

俺はルジャの護衛になって以来あいつを守る為に様々な事をしてきていた・・・あいつを守る事、それが俺の生きる意味となっていた・・・それなのに・・・・勇者になる前のあいつはいつも笑顔を見せ、弱い所を見たことが無かった・・・だが、魔物が現れ、神卸が上手くいかなくなって、あいつの笑顔は消えてしまった・・・


俺は何も出来ない自分に嫌気がさした・・・あいつを守る事それが俺の生きる意味だったのに、それすら出来ていない・・・俺はダールとの訓練に没頭した・・・少しでも強く、あいつを守れるように死ぬ気で鍛え上げたつもりだった・・・その結果がこれか・・・


周りを見る、ほとんどの魔族は既に死にかけている、大柄の魔族のみ立って戦っているが、それすらも時間の問題だ・・・その前に数が多すぎる・・・こちらはもう既に二十そこらしかいないのに、あちらは、どの位いるんだ・・・周りが囲われて、壁みたいになっているぞ・・


それにあいつ等、俺達が瀕死なのをいいことに遊んでいやがる・・本来なら、囲う必要性も無い戦力差なのに遠巻きで見て・・・弓矢か魔法でしか攻撃してこない・・・時間は稼げるが、このままじゃあじり貧だ・・・・・・いくら絶望的だからと言って諦める訳には・・・諦めたらルジャが・・・・


『落ち着け・・・』


不意に声が聞こえる・・・誰だ?・・・いやこの感じ、ダールの神の力を借りた時と似ている・・・・神か?!!


『ああ、その認識で合っている、ルジャが神卸で俺を呼び出したんだ・・・まあ、神の力は貸せないからアドバイスとお前自身の力を引き出す位しか出来ないが・・・』


神の力を貸せない・・・その言葉に先程まで、神が力を貸してくれるという希望が砕け散る・・・そんな・・・神の力無しにどうやって、こいつ等を倒せば・・・・


『だから、落ち着けって・・・いいか、今からお前の力を引き出す・・・お前が思っている程、人間の力は弱くは無いぞ・・・』


そう、神は言い切った・・・これだけの人数の魔族を相手に余裕がある様な話し方で俺に言ってくる・・・そして・・・


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「これは・・・!」


遠くでルジャが神卸をしたのを感じた・・・とはいえ、こちらが気付いたということは、魔王も気づいているだろう・・・急いで、ルジャの元に行かなくてはいけない・・・だが、目の前の魔族達を見る・・・ようやく半分は殺す事は出来たが、まだ、1000人ちょっとは残っている・・・ルジャが神卸をしたという事は向こうも何かしら起きているはず・・・


それに、神卸をしたと言っても、ここは魔界、神卸が万が一成功したとしても、神の意識をこちらの世界に呼び込むだけでも精一杯のはず・・・それで、どうすればいい?


向こうの様子は解らないが、神の力を使わずに対処可能な事柄なのか?いや、それなら、初めから神は呼ばないはず・・・このままでは・・・


「ダール!!」


ジュルの声に我に返る・・・


「色々思うことがあるかもしれんが、今はこやつらを倒さなければ・・・せめて、住まわせてもらった恩は返しておかんとな・・・」


そうだ・・・このまま魔族達を放っておけば、我達を匿ってくれた彼らを殺してしまうだろう・・・例え・・・


「魔王が殺された瞬間死ぬ定めの者達だとしても・・・」


ジュルが小さな声でそう言う・・・そうだ、例えいつ死ぬか解らぬ命だとしても、今を精一杯生きている者なら守っていかなければ・・・それが神としての使命だから・・・


我は前を向き、傷つきながらも闘うヴァエの所に向かった・・・こうなっては、神の力を隠しておく必要性はない・・・制限はかかっているが、今出せる精一杯の力を出し、魔族に向かっていった・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「くそ!!」


『いいから落ち着け、力を抜いてみろ・・・もっとだ・・・』


俺は神と言った男の声に力を抜けと指示をされた・・・馬鹿なことを言うな!敵に囲まれて弓矢などで攻撃されているのだぞ!!さっきも、弓矢に当たりそうになったのを剣で弾いたところだ・・・こんな状況で力を抜け?死ねと言っているのか?!!


『・・・埒が明かねえ・・・体貸してみろ・・・』


そういわれた瞬間、俺の体が光った・・・そして、気づいた時には、俺の体は自分の意志で動かせなくなっていた・・・何だこりゃ!!


『いいから落ち着け・・・とりあえず、やり方を教える・・・』


そう頭の中で言いながら、そいつは、俺の体を使い、剣を振る・・・おい・・・そんな離れた場所で剣を振ったって何も切れない・・・・


次の瞬間、俺が持っていた剣から何かが飛び出し、気が付いた時には、遠くにいた十数名の魔族が真っ二つになり死体となっていた・・・


『これが、闘気を使った戦い方だ・・・魔法を使えないお前にはちょうどいい戦い方だろ?』


これが、神の力なのか・・・


『いや・・・これは、神の力でも何でもない、人間の力だ・・・・まあ、俺は人間と魔族のハーフだし、第一、遠くの攻撃には魔法があったから使わなかったがな・・・』


なっ?!人間と魔族のハーフだと・・・?


『まあ、この世界で生まれた訳ではないがな・・・』


それは一体・・・


『話は終わりだ・・・敵さん、やる気みたいだよ・・・』


そういうと、先程まで、にやにや笑っていた魔族は、仲間がやられたのを見て、その笑いは息を潜め変わりに、すざましい、敵意とともにこちらにやってきていた・・・・


そして、次の瞬間俺達の近くにやってきた魔族達は一瞬で切られていく・・・神が俺の体を使って・・・


この力は神の力では無い・・・そう彼は言っただが、この光景は何なのだろうか・・・先程まで自身の力をいっぱいいっぱいまで使って食い止めることすら出来なかった敵が、一瞬で切られていく・・・本当にこんな事があり得るのだろうか・・・


俺は半分夢うつつで体が動いているのを感じながら目の前の光景を見ていく・・・体の主導権は受け渡していても、体がどの様に動いているのかを知る感覚等は無くなっていないらしく、自身がいかに無駄な動きをしていたのか思い知った・・・だが、それでも、自身の目の前の光景は信じられなかった・・・


闘気・・・その知識について自身の脳に流れ込んできたが、にわかには信じられなかった、自身の力を増幅させ、闘気で作った刃で敵を切り、または、その刃を飛ばし敵を切るなど・・・だが、目の前では、その通り遠くの敵すらも、その闘気を使い切られている・・・


夢の様な時間が過ぎていく・・・そして、気づけば、敵である魔族の躯が山のようにでき、残りは数十人となっていた・・・


「あ・・・あり得ない・・・」


一人の魔族がそう呟く・・・確かにあり得ない光景だ・・・・たった一人でこれだけの人数の魔族を倒すなど・・・しかも、神の力を使わずに・・・そんな事はあり得ない・・・そう思っていた・・・


だが、実際はほとんどの敵を打倒している・・・俺の体はもはや、限界で息を荒げているが・・・それでも、あり得ない戦果だ・・・


神とはこれ程の者なのか・・・?ルジャの神卸で神の力は何度も見せられてきた・・・だが、今回神は自身の力を使わず、俺の人間としての力のみで倒してみせると言って、今の状況を作り出してみせた・・・


俺は・・・・・・・・


『・・・・!!』


気が付くと、神が何かに気が付き上を見た・・・そこには、神々しい光を纏った一人の女性がそこには居た・・・・・


「久しぶりだねえ・・・ロイド!!」


次の瞬間光が目の前を包んだ・・・・・

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