母の思い

「何故?ロイドが戦場に出なければいけないのです!!」


私ハールはおっとバイドに対し、思いっきり大声を出していた・・・


何故、まだ一桁の歳の我が子を戦場に出さなくてはならないのでしょう?


転生で精神年齢は同い年?そんなの身体は子供なのだから関係ありません!!


何で・・・子供であるロイドが・・・戦場に・・・


「・・・・・解ってくれ、神が完全に敵に回ってしまった今、最大戦力である、ロイドを戦場に出さないわけにはいかない・・・・・」


そう言って私の言い分を、夫のバイドは耳を貸しません・・・


「それにロイドは拠点で待っていてもらうつもりだ・・・・前線には出さない・・・」


「でしたら、私も連れて行ってください!!」


「・・・ならん!!!お主は勇者の力を失ってしまった・・・例え戦場に行っても・・・・・」


・・・・その後の言葉をバイドは言いませんでしたが、何を言いたいかは解りました・・・


恐らく私自身気付いているのに認めたくない事実・・・例え・・・戦場に行っても私は何も役に立たないという事・・・・


「それでも!!・・・」


関係ない・・・ロイドが危険な所に居るのに・・・どうして私だけが安全な所に居られましょう・・・


そう思って、言葉を繋ごうとした瞬間・・・夫であるバイドは・・・


「それにお前までいなくなってしまっては城の守りはどうする!!!ほぼ全員行ってしまうのだぞ・・・ファルを・・・帰る場所を守っていてくれ・・・・」


そう言って・・・彼は頭を下げて来た・・・・・・・


・・・・そこまで言われてしまった私は何も言えなくなってしまった・・・・


それに、確かに・・・ファルを一人にしておくわけにはいかない・・・


「・・・・・・・・・解りました・・・ですが絶対に帰って来てください・・・・・・・・・・」


・・・私はバイドに対し・・・それを言う事しか出来なかった・・・


「・・・ああ、すまない・・・」


・・・結局・・・その後、諦めきれない私は、ロイドに本当に行くのか聞いてみたが・・・


本人自身が戦場に行くと言い・・・その意思も固く、彼を・・・私の息子を説得する事は出来なかった・・


今にして思えば、この時強引にでも説得するか・・・せめて私自身が着いていけばよかった


・・・そう後に後悔するのであった・・・


・・・・ロイドが戦場に帰って来た・・・


その事は喜ばしい事なのだが・・・彼はすぐに部屋に閉じこもり、誰とも話をしなくなった・・・


何でも、ロイドは勇者達の奇襲を感知し・・・その奇襲を一人で食い止めていたらしいとバイドとジェニーが言った・・・


最初は勇者達が奇襲をしている事も知らず、目の前の兵士達と闘っていたのだが、いきなり、闘っていた兵士達が撤退し始めだしたらしい・・・


後から解ったのだが、恐らく、ロイドが勇者の奇襲を防いだ為、撤退したのだと解ったらしいのだが、その時は、バイドもジェニーも何故、人間達が撤退した事に気付かなかった・・・


・・・人間達が撤退し誰も居なくなった時・・・バイドとジェニーが陣営を引いている後ろに・・・勇者達の魔力の残留がある事に気付いた・・・


その事に気付いた2人は祝賀ムードである周りを無視し・・・急いでその場所に駆け付けた・・・


勇者達に奇襲をさせないその思いだけで・・・誰よりも早くその場所に向かったのだ・・・


2人だけで・・・だが、そこに居たのは、勇者では無く・・・


血だらけのロイドが寝ていたのを見つけただけであった・・・・・


そして、気づく・・・この周りに勇者達の魔力が残っているだけで、勇者本人が居ない理由・・・


恐らく、ロイドが追い払ったという事実に・・・


その事に気付いたバイドは・・・そのことを感謝し・・・ジェニーは急いで、回復魔法とバイドとジェニーの残っていた魔力をロイドに渡し・・・気絶から回復させようと試みた・・・


結果は・・・2人の予想通り・・・ロイドはすぐに目を覚ました・・・


だが、2人は感謝の言葉をロイドに伝える事は出来なかった・・・


目を覚ました彼は・・・途轍もなく大きな声で絶叫したのだから・・・・・


何故・・・そうなったのかは解らない・・・ただ、これだけは解る・・・戦争に行って、ロイドは心を壊してしまったという事・・・それだけは解った・・・・


何よそれ・・・・・・・・・こんな事になるのなら、ロイドを無理にでも止めればよかった・・・何で・・・あの子があんな目に合わなくちゃいけないの・・・


それから、私は・・・部屋に引きこもってしまったロイドの部屋に何度も足を運んだ・・・


少しでも、彼の壊れた心を治ってほしい・・・その一心で通い始めた・・・・


・・・話しかけても、無視をされ・・・掃除をしても、無関心・・・それでも私は諦めずに通い続けた・・・


本当は時間を置いた方が良いかもしれないけど・・私には出来なかった・・・少しでも動いていないと、頭がおかしくなってしまいそうだった・・・


ファルも同じ気持ちなのか、兄様の部屋に行きたいとよく言う・・・


だが・・・今のロイドにファルを会わせることは出来ないと判断した私は・・・


「うーん、お兄ちゃんが元気になったら会おうね・・・」


そう言って誤魔化した・・・


・・・兄のあんな姿を見て、ファルも同じようになってしまうのではないか・・・あれだけ元気だった兄があんな風になってしまったのを見てしまっては、ファルも同じように引きこもってしまうのでは・・・?


そんな思いから、私はファルを会わせなかった・・・ロイド自身もファルにあんな姿は見せたくは無いだろうし・・・ね・・・


・・・・・それから、5日が経ち・・・今日も今日とて・・・私はロイドの部屋を片付けていた・・・


・・・その時ふと、机の引き出しの中に入っている本に隠蔽魔法が掛かっているのに気付いた・・・・


ロイドは布団を何時もの様にかぶってこちらを見ていない・・・・


私は思わず、その本を持って部屋の外に出て来ていた・・・・・・・


あの子の事を知る為・・・・そう考えた私はしばらく悩んだ後、この本の中身を見る事を決心した・・・


・・・だが、その本を見ようとした所、隠蔽魔法だけでは無く・・・施錠の魔法も掛かっていたらしくほんの中身を見る事すら出来なかった・・・


・・・・・・・ジェニーに魔法を解除してもらうしかない・・・・・


私は意を決して、ジェニーにお願いする事に決めた


「あのね・・・今忙しいって、解っているでしょう・・・・」


ジェニーに本の話をした所、彼女はそう言って来た・・・


そんな事は解っている・・・


人間達が今まさにこちらの何倍もの兵士達を集めているのに動いている事位・・・そして、何より、5日前の闘いでもう既に闘える兵士がほとんど居なく・・・


それでも無理して集めている最中だってくらい・・・私にだってわかる・・・


だけど、私は・・・あの子を・・・せめてあの子の心だけでも救いたいの・・・


何も出来ない私には・・・・それしか出来ないのだから・・・・


「お願いします・・・」


私は頭を下げた・・何回も、何十回も・・・・ジェニーが頷くまで・・・・そして・・・


「・・・・・解ったわ・・・明日の朝渡す・・・」


そう言って、ジェニーはそう言って、私から本を受け取ってくれた・・・


「ありがとう・・ありがとう・・・」


私はジェニーに対し・・・何度も何度もお礼を言った・・・


「はいはい・・・それじゃあ、仕事に戻るからね・・・」


ジェニーはそう言って、仕事に戻ろうとする・・・


「・・・・・・・・・こちらこそ、ごめんね・・・・・ロイドを守れなくて・・・」


・・・彼女が私から離れる際・・・最後にそんな言葉が聞こえた・・・


・・・次の日の朝、私は朝一番にジェニーの所に行った・・・


少しでも、速く、ロイドの事を元気にしてあげたい・・・その一心で・・・


「・・・出来たわよ・・私は中身を見ていないから、貴方が確認して・・・」


それだけ言うと、そのまま慌ただしくジェニーはどこかに行ってしまった・・・


忙しい中・・・ありがとう・・・心の中でそう思った・・・後は・・・私が・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る