復活

俺はあの戦争があった日から部屋に閉じこもった・・・・


結局あの日1日だけの攻撃だけで人間軍は撤退したらしい・・・


・・・・だが、その1日だけですざましい被害を両軍は出してしまった・・・


原因は人間側が行った特攻・・・


体に特別な魔法・・・ダメージを喰らうと、掛けられた人物が爆発し・・・全体にとんでもない被害を及ぼすという・・・途轍もなく非人道的な方法をとって来た・・・


この魔法、勇者のパーティ以外の10万の兵士全ての加護に巧妙に隠されながら、付与されていたらしく・・・これだけの被害になってしまった・・・


しかも、その魔法が巧妙に隠されていた為・・・父上もすぐに気づくことが出来ず・・・先陣を切った兵士達のほとんどが死んでしまった・・・


・・・ジェニーもその事に気付いた後は・・・父上の後方支援をしつつ、周りの援護に周ったらしいのだが万の軍勢に加え・・・神の加護・・・全ての人間が人間爆弾という状況で・・・対応しきれなかった・・・


本当なら、父上がもっと動ければ、被害は少なくできたかもしれない・・・だが、それは人間側も解っていたらしく・・・勇者パーティの一人である・・・戦士が前線に居て・・・父上がそれを対応し・・・全く動くことが出来なかった・・・


しかも、この戦士が結構強かったらしく・・・途中、何度か父上が危ない場面があったためジェニーが広範囲に動けなかったことも今回の被害の拡大に繋がった・・・


結局・・・俺は・・・何がしたかったのだろうか・・・・


初めての戦争を見て、震えて・・・それでも何とかしないといけないそう思って動いた結果・・・俺は・・・


勇者の一人を確実に殺した・・・


そして、それを楽しいと思ってしまった事に・・・俺自身が恐怖した・・・


・・・本を持っていた男性が後で生き返るとか言っていたが、本当かどうか解らない・・・


第一、俺自身、人を殺した事に快楽を感じた事に自分自身が恐怖している・・・


この戦争が続けば・・・人を殺すなんて一人どころでは無い・・・何十、何百、何千、何万・・・・の人間達を殺していくだろう・・・


・・・俺はそんな人数を殺した時・・・自分を保てているだろうか・・・いや保てないだろうな・・・だからこそ怖い・・・


もう、誰も殺したくない・・・自分が自分で無くなるなんてもう嫌だ!!!俺はずっとそんな思いで部屋に閉じこもっていた・・・


本当なら、すぐにでも何かしら行動しなければいけない・・・そう頭では解っているが、体が動かない・・・動きたくない・・・・・・


結局・・・俺は・・・何も出来ないまま・・・自分の部屋の中で引きこもるのであった・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


・・・・・そんな状況が1週間続いたある日・・・母上がやって来た・・・


母上は日に何度も俺の部屋に訪れて、掃除をしたり、色々話しかけてきたりしてきた・・・


今日は天気がいいわよとか、ファンが貴方に会いたがっているとか・・・ちょっとでも食事をしてみたら等・・・俺を気を使った言葉で俺に話しかけてくるが・・・その全てが俺には、届かなかった・・・


だが・・今日俺の部屋に訪れた母上はどこか今までと雰囲気が違っていた・・・


「・・・・・・・・・ロイド・・・・・・・・・」


俺の名前を母上が言う・・・


俺は布団をかぶったまま微動だにしない・・・


今の俺にはそれしか出来ない・・・・いや、それ以外したくはなかった・・・・・


人と会話すら今の俺には苦痛であった・・・


「・・・・・まずは謝らせて、今回の戦争何も役に立てなくてごめんなさい・・・・・・私の力は他の勇者が降臨したことによりほとんど無くなってしまったわ・・・・・・・だから、城に居るしかなかった・・・ううん良い訳よね・・・息子を戦場に向かわせて自分だけ安全な場所に居る・・・駄目な母親でごめんね・・・」


そう言った母上の声は涙ぐんでいた・・


今まで、話しかけて来た事はあっても、戦争の話題はして来なかった母上が涙を流しながら言う・・・


大丈夫、何でもないよ・・・


そんな言葉を一瞬母上にかけたいと思ったが、布団から俺は出ていけない・・・・


人を殺すことに快楽を感じる俺なんかにそんな言葉をかける資格なんて無いと思った・・・なのに・・・


「ねえ、ロイドはこれからどうしたい?」


俺が動けないでいると、そんな事を母上に言ってきた・・・


「貴方が部屋に閉じこもっていたいと言うのなら・・・このままでいいわ!誰にも文句は言わせない・・・」


そう母上が言ってくれる・・・


ああ、それも、いいかもな、そう思った、考えた・・・


しかし、次の母上の言葉を聞いてそんな考えは吹き飛んだ


「・・・それとも強くなりたい・・・?全員を・・・誰も殺さないくても大丈夫なくらい強く・・・・誰も追いつけない強さを手に入れて、戦争を終わらせてみる・・・・・・・・・・?」


・・・・・・・・・・・母上は何を言っているのだろうか・・・?


そんな事できる訳が無い・・・


出来ないから・・・俺は、人を殺したのだ・・・そして、戦争が続いていけば、更に俺は人を殺していき・・・


やがて・・・人を殺す事を何とも思わない・・・いや・・・それどころか、嬉々として行う自分が想像できてしまう・・・


なのに・・・人を殺さない・・・?そんな事が出来る訳・・・


そう思い・・俺が布団から顔を出してみる・・・


母上は涙を流しているが・・その目は真剣だった・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出来るの・・・・・・・・・・・・?」


俺は思わず・・・そう言ってしまった・・・そんな事は本当に無理だと思っても言わずにはいられなかった


「・・・解らない・・・だけど可能性はある・・・・・・・・・」


「誰も殺さないで戦争を終らせるなんて・・・そんな夢物語・・・・・・・」


もし本当に出来るとするなら・・・出来る可能性があるのなら・・・俺はそれに縋りたい・・・


だけど・・・そんな事・・・


「・・・ええ、そうね・・・私もこれをやったからと言ってうまくいくかは解らない・・・上手くいったからと言っても、そこまで強くなるかさえね・・・」


そう言った後・・・母上は俺の目をはっきりと捉えてこう言った・・・


「だけど、上手くいけば、今よりは確実に強くなれるのは確か・・・・・そんな可能性がある方法試してみる・・・・?」


母上の目はまっすぐ俺を見ている・・・


その目に嘘を付いているようには見えなかった・・・・


「・・・・・・・・・ほんの少しでも可能性があるのなら・・・・・・・・・・・・・・やってみたい・・・いや、やる!!」


俺の口は無意識にそう言っていた・・・・・・


人間だろうと、魔族だろうと・・・殺さないで戦争を終らせる方法があるのなら・・・俺はそれに縋りたい・・・


例え敵だとしても・・・もう二度と俺は・・・誰も殺したくないから・・・


そして・・・何より・・・フェンの様な不幸な人を増やしたくないから・・・


俺は母上の提案をやると行った後・・・すぐに布団から出て母上を直視した・・・・


俺のこの気持ちが本気である事を伝える為に・・・まっすぐ母上を見据えた・・・


暫くした後・・・母上は少し悲しそうな目をして微笑をしながらこう言った・・・


「・・・・・・ええ、解ったわ・・・だけど、その前にご飯にしましょう・・・一週間ほとんど何も食べてないでしょう?」


そう微笑みかけながらそう言った母上・・・


そう言えば俺・・・この一週間、部屋に閉じこもってばっかしで何も食べて無かったな・・・・


「・・・・・・(こくん)」


俺は無言でうなずいた・・母上は手招きをしながら、俺を食堂に連れて行く・・・・・・・・・


・・・・・・・久しぶりの母上のご飯は優しい味がして・・・美味しかった・・・・・

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