ロイドの日記
私はロイドの思いを踏みじみってないか・・・改めてロイドの部屋から持ってきた本を見てそう思う・・・
ロイドの部屋から無断で本を勝手に持ってきて、わざわざかけてあった隠蔽魔法をジェニーに頼み、解いてもらい・・・その本を読もうとしてる現在・・・・その思いがひしひしと湧き上がる・・・
だが、最早、ここまで来てしまっては、後戻りはできない・・・私は意を決して、1ページ目を開けた・・・そこには・・・
『自分が死んだら読んで下さい』
と書いてあった・・・死んだらって・・・あの子は、死ぬ事も考えて・・・この本を残していた・・・?
・・・私はその言葉を見てこれ以上・・・読むかどうかを、少し悩む・・・
だが・・・結局、私は読むことを選んだ・・・
というより、もう私にはその選択肢を選ぶしか無かったと言った方が正しい・・・
彼の心が閉ざしてしまって、6日間・・・最早、この本以外ロイドを救う為の手掛かりがないのだから・・・
・・・ごめんなさい・・・そう、謝って2ページ目を読んだ・・・
『今日いきなり、人間達と戦争すると父上から聞かされた・・・まじで?
人間達と戦争が過去にもあったから、もしかしたら、俺が生きている間にも起きるかもしれないと思っていたけど・・・まさか、こんなに早く・・・来るとは・・・・
・・・父上・・・俺、魔物も含めて、生物を殺した事が無いのですが・・・
・・・強制参加ですか・・・そうですか・・・解りました・・・腹を決めます・・・
いや、いいんだけどさ・・・・
フェンの過去の戦争の話を聞いて・・・ずっと、俺は考えていたことがあった・・・
ちなみに、フェンとは、街に行った時に、飯を食べる時に行っている宿屋の女将だ・・・
その女将と他愛の無い話をしていたのだが・・・ある日、戦争の話をして、彼女の両親が死んでいる事を知った・・・
その理由は・・・・フェンの両親は前の戦争で徴兵され・・・そして、その徴兵先で死んでしまった事を彼女から聞いていた・・・・
俺は・・・そんな・・・フェンの様な、人を、増やしたくない・・・
俺が何か出来るかなんて分からない・・・・だけど、戦場に出ている、兵士達一人一人が家族とかが居るはずだ・・・・
だから、そんな人達を守りたい・・・・ずっとそう考えていた・・・
・・・実際、出来るかどうかは、解らない・・・それどころか、初めての戦場だ・・・何も出来ないで死ぬ可能性すらある・・・
だけど・・・それでも、少しでも、そう言った人達が減らせる可能性があるのだったら・・・俺は戦場に出て、その人達を守ってみたい・・・
例え、それが、俺の自己満足だったとしても・・・それでも・・・俺は少しでもいいから守りたい・・・そう思って、戦場に行く事を決めた・・・
・・・そう言えば、俺・・・何で、さっき、フェンの事を説明をしていたのだろう・・・
この日記誰かに見せる訳でもなく・・・書き始めた理由も、戦争に行く前の心の整理の為に書いているだけで、誰に見せる訳でもないのに・・・まあいっか・・・』
次のページをめくる・・・
『戦争の準備が着々と進んでいる、そう言えばどうして戦争になったのかと父上に聞いた所
『おおかた人間達に神が信託と称して、魔族を争うように仕向けたのだろう・・・』
と父上が言ってきた・・・
『えっ神が魔族と争う様に仕向けたんですか・・・?』
『・・・ああ、そうだ・・・どうにも、この世界の神は、人間と魔族と争わせたいらしくてな・・・その為に、わざわざ、魔王と勇者の仕組みを世界に組み込んでいる位だ・・・』
何でも、本来、魔王になった者は、自身の欲望が刺激され、心の奥底に隠れている凶暴さが前面に出てきて・・・人間との争いを好むように人格が形成されてしまうのだと父上が言った・・・
そして、魔王が魔族を率いれ、人間達を根絶やしにしそうになった時・・・
勇者が現れて、人間達を根絶やしにする魔族を勇者達が殺し・・・最終的に魔王を退治して・・・人間が絶滅しない様に防いでいたらしい・・・
本当にひどい、マッチポンプだ・・・魔王という存在を世界が作り出し・・・そして、人間達と争わせ・・・そして、最後には、その人間達に退治させる・・・
だが、父上はその世界のシステムに納得がいかなかった・・・
その為、ジェニーと一緒に、強引に、そのシステムに介入し、自身を魔王にした・・・
そして、凶暴で人間との争いを好む人格を自身の精神力の強さで抑え込み・・・
魔王の力を自身でコントロールできるようにした・・・
結果、今では、父上から・・・つまり、魔王から、戦争を仕掛ける事は無くなった・・・
だが・・・それでも、人間達との確執は無くならなかった・・・
勇者は生まれるたびに、父上の所に、送られ・・・
戦争も、今度は、人間達の方から仕掛ける様になっていった・・・恐らく、これも神託関係だろうと父上は言っていた・・・
そもそも、何で、神は、神託を使い、魔族と戦争を仕掛けてくるのだろう・・・俺が父上にそう聞くと、
『解らん、正に神のみぞ知るってやつだ』
って言われた、その言葉この世界にもあるんだ。
神が人間と魔族との争いを望んでいる・・・その言葉を聞いて俺は、腹が立った・・・
人間達にだって、家族や大切に思っている人が居るだろう・・・それなのに、どうして、戦争をしなければいけないのだ!!
元人間でもある、俺は心の中でそう思った・・・
そして、こう思った・・・本当に両方救う手立てが無いのだろうか?
『すごい力を持って見せつければ、敵わないと思って逃げていくかもな』
と笑いながら言った。
どんだけの力だよそれ・・・俺が聞くと・・・
『天変地異位は簡単に起せるくらいか?』
と父上が言って来た・・・
俺・・・魔力を枯渇してもいいのなら、それ出来るかも・・・・
とは言え、例え出来たとしても、それで、戦争が終わる訳でもないし・・・恐らく、魔力を枯渇した時点で俺は戦力外になってしまうだろうな・・・
・・・本当に争いを無くせる位・・・強くなりたい・・・
父上の言葉を聞いて、俺はそんな事を思った・・・』
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『今日はジェニーと話をした。
いつもなら、魔法の講義の話をするのだが、今日はいつもと違った・・・
『・・・ロイド、今回の戦争・・・どうなるか解らない・・・』
そう、ジェニーが言ってきた・・・
『いつもなら、バイド一人で、大体戦争を終らせていたの・・・』
とジェニー・・・父上、一人で、戦争を終らせるって・・・どれだけ強いんですか・・・それって・・・
『だけど、今回、完全に、神が味方に付いてしまった・・・その為、バイドは、魔王の力をほとんど失っているわ・・・』
えっへ?!魔王の力を失っている・・・?新たな事実に俺は目が点になった・・・
何でも、魔王の力は、神が管理をしているらしく・・・その与えられる力は、その神の差加減で決まるらしい・・・
勇者が弱ければ、加護の力を強くし・・・また、魔王が強ければ、魔王の力を弱める・・・
そうやって、バランスをとっているらしい・・・
だが、父上は、神と敵対行動を以前に取った事があったらしく・・・それ以降・・・ほとんど、魔王の力が使えなくなったらしい・・・
それでも最強の魔王という称号を維持し(そんな称号があったの、今初めて聞いたんだけど)、やってきた勇者達を魔王の力無しで倒して言ってたらしいのだが・・・・
そのわずかに残されていた、魔王の力も今は完全に無くなり、今父上は、魔王の紋章すら身体に浮かんでいない状態だという・・・
・・・それってやばいんじゃないんですか!!
『・・・・まあ、いつもなら、魔王の力が無くても、バイドなら、人間達や勇者に後れを取るとは思わない・・・』
その言葉を聞いて少し安心をした・・・と言うより、父上・・・魔王の力持っていないのに・・・勇者を倒すって・・・どれだけ強いんですか・・・
だが、安心した次の瞬間、ジェニーはこう言ってきた・・・
『だけど、今回は、完全に神が人間に肩入れをしている・・・はっきり言って今回みたいに一方的な肩入れは初めてだから、どうなるか解らないの』
・・・まじですか・・・
『だけど、今までだって、魔王の力に頼っていなかっただよね・・・』
『・・・一度、バイドと、私は神と対峙した事があったのですが、その時、私達は文字通り手も足も出ませんでした・・・しかも、その時の神はほとんど力が無い状態で降臨したはずなのに・・・そんな神が人間達に手を貸す・・・はっきり言って私も今回の戦争どうなるか解らない・・・』
そう、ジェニーが言った・・・・まじかあ・・・
今回の戦争で・・・死ぬかもしれないな・・・俺・・・今回、戦場に初めて行くんだけど・・・そんな不安要素を言われても・・・
『・・・もし、最悪の展開になっても、始めに言っておけば、覚悟が決まるかと・・・・』
『・・・・覚悟って何の・・・?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
うん・・・何となくわかったよ・・・ジェニー・・・・まじかよ・・・初めての出兵で死ぬかもしれないのかあ・・・
『・・・とにかく出兵までに身の整理はした方が良いかもしれません・・・』
・・・そこまで言いますか・・・とは言え、ここまで来たからには、逃げる選択肢は存在しない・・・
・・・俺・・・まだ転生して、6年しか生きていないんだけど・・・生死が関わる戦いに挑むのって早すぎない?!』
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『・・・昨日、ジェニーから話を聞いて一度腰が引けてしまったが・・・今はもう腹を決めた・・・!!
死ぬ時は死ぬ時だ!!やってやる!!せめて!!一人でも良いから守れるように頑張ってやる!!
この日記は万が一俺が死んだ時に遺書代わりに机の引き出しに入れておこう。
そう思ったのだが、ただ単に引き出しに入れただけだと、掃除された時にすぐばれるか・・・もし、戦場に行っている時にこの日記がバレたら、恥ずかしい所じゃないよなあ・・・
隠蔽魔法で隠しておこう、ジェニー辺りなら魔法で隠しても見つけると思うし、よし!それでいこう!
俺はこれから、戦場に行く・・・はっきり言って、死ぬかもしれない・・・
そして、多くの人達が死んでいくだろう・・・それこそ、敵、味方含めて・・・多くの人々が・・・
そんな事を考えていると、不意に・・・父上の言葉が思い出される・・・
『すごい力を持って見せつければ、敵わないと思って逃げていくかもな』
・・・それだけの力があれば人を殺さなくてもいいのかなあ?
出来たら、俺は人間も魔族も全員救いたい・・・そう考えるのは俺の我儘なのだろうか?
俺の力がどこまで、今回の戦争に通用するか・・・解らない・・・だけど、父上と模擬戦とはいえ、長時間闘える事が出来る力を俺は持っている・・・
力を持っているのなら、少しでも、皆が生き残れるように頑張ってみようと思う・・・
フェンの様な、悲しい過去を持つ様な人をこれ以上増やしたくないから・・・
願わくは人間と魔族が手を取り合える・・・そんな世界が生まれる様に願っています・・・』
最後のページにはこう書かれていた・・・
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