フェンの過去
武闘大会が終わって二日後、俺はフェンの宿屋に飯を食いにやってきていた。
「フェン飯ーー」
俺は厨房に話しかける。武闘大会の際、フェンの宿屋はいっぱいだったらしく、全然行くことが出来なかったのだ。
なので、ある程度落ち着いた今やって来たのだ。だが・・・そこに居たのは・・・
「あーうー」
厨房で虚ろな目で椅子に座っているフェンだった・・・
思いっきり・・・疲れているなこれ・・・
「・・・大丈夫?」
「・・・ごめん、しばらく無理かも・・・」
話を聞くと・・・何でも、この武闘大会期間中ほとんど一人で切り盛りしていたらしい。
いつもの他の従業員さんはどうしたと俺が聞いたら・・・
「あの人達は友達で、少ない賃金で手伝ってもらってたんだけど、今回の大会で実家に呼ばれてそっちに付きっきりになってたのよ・・・」
その言葉に、俺は・・・
「だったら、フェンも両親を呼んだらよかったんじゃない」
そう言ったのであった・・・いや違う・・・言ってしまっただな・・・だって・・・
「・・ああ、私の両親死んでるから・・・」
そう返されるとは思わなかったからだ・・・・
しかも、フェンは何でも無い様な感じで、いつもと同じような調子で言ってきて・・・俺は、更に心が居たくなってきた・・・
(馬鹿か俺は)
俺は自分自身にそう叱咤した・・・
何でこんなに若いのに宿屋の女将をしているのか少し考えれば解ったはずなのに・・・何で聞いてしまったのだ!!
「大丈夫よ・・・もう十数年も前の話だしね・・・」
そう言ってくる、フェンの顔は、どこか寂しそうに見えた・・・
「・・・どうして・・・戦場なんかに・・・」
俺は思わず聞いてしまった・・・
何で、宿屋の主人だったのに・・・わざわざ戦場なんかに・・・そんな思いから、つい聞いてしまったのだ・・・
すると、彼女は話し始めた・・・その時何かあったのかを・・・
「・・・前の人間との闘いでね、徴兵の看板が立てられたんだ・・・普段は徴兵何てされないんだけど・・・この時は兵士不足の所為で徴兵されたらしいの・・・そして、私達の両親は少し腕に自信があったみたいで、私を親戚の家に預けて戦地に行ったんだ」
そう淡々と話す彼女・・・だが、その言葉1つ1つに、どこか寂しそうな感情が溢れている様に俺は感じた・・・
「だけど、徴兵された戦場で魔力でコーティングされた流れ玉が急所に当たってね・・・腕が良くても、銃には敵わなかったんだろうね・・・結局、私達の両親は戦死者という事で、その娘である私には国からお金は払われたんだ・・・だけど、そのお金・・・何となく使う気になれなくてね・・・それで、今は両親が残した宿屋で生計を立ててるわけ・・・」
俺は、何にも言えなくなった。彼女にそんな過去があったなんて・・・
知らなかったとはいえ、不用意に両親の事を聞いてしまった・・・そして、掘り下げる様に聞いてしまった・・・
俺は・・・・この話を聞いて・・・どうしたいんだ・・・?
「さあ、しみったれな話は終わり!!そういえば武闘大会どうだったの?!私宿屋に付きっきりだったから、全然何があったのか解らないの!!!」
そう、フェンは話題を変えて来た・・・
恐らく、俺の様子を見て、話題を変えてくれたのだろう・・・
その後、俺はフェンが言って来た、武闘大会についての話をするのであった・・・
勿論、お父様とデモンストレーションをした事は話さないで・・・・
その後の事は、いつも通り、フェンと他愛の無い話をして終わった・・・
だが、フェンが話した戦争の話しは、俺の頭の中にずっと残っていた・・・
(・・・・戦争か・・・・いつまで、平和なんだろうな・・・この世界は・・・)
フェンとの会話は、俺の世界に対する認識を変えるきっかけになった・・・
そして・・・戦争が起きた場合、その事で、人があっさり死ぬという事も・・・
戦争が起きた時、俺はどんな行動を取るのだろうか・・・
そんな疑問がずっと頭の中で考えていた・・・
その疑問に対し答えを出す時が刻一刻と近づいてくるのを俺はこの時、知る由もなかった・・・
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