縫物

あれから、2、3ヵ月後、俺は少しずつ、現状に慣れていった・・・


剣術を教えたりすることも、少しずつ、慣れていき、魔法関連の授業は、元々ジェニーしか教えてもらった、基本中の基本しかやらなかったので、この二つについては、何も問題が無かった・・・・


だが、どうしても歴史や地理といった分野は興味がわかず、一つの単語を覚える事すら大変だった・・


その為、歴史や地理の復讐をジェニーに手伝ってもらっていたのだが・・・


その際、魔王の歴史について教えられていた時、俺は驚愕の事実を知った・・・


「父上魔王だったんだ・・・」


はい・・・本当に今日まで父上が魔王だっていう事を知りませんでした・・・


歴史の授業で、ジェニーに、今の魔王の名前を聞かれた時・・・


俺が答えられなかず口ごもっていると・・・


「何で、自分の父親の名前を憶えていないの?」


と言われ、判明しました・・・そうだったのか、父上・・・魔王だったのか・・・・


「何で!解らないの!!バイドってきちんと書いてあるじゃない!!」


だって・・・父上の事、名前で呼んだこと無いし・・・


「呼ばなくても!!自分の親の名前くらいきちんと憶えておきなさい!!」


・・・・ごもっともで・・・・


ちなみに母上は勇者だという事も初めて知った・・・。


っておーーい!!なんで魔王と結婚しているんですか?!!母上!!


・・・まあ、そのおかげで俺が生まれたわけなんだが・・・


あの後、ジェニーから教えてもらって知ったのだが、この世界の魔族と人間は険悪な関係らしい・・・と言っても、人間側が一方的に嫌悪感を抱いているだけらしいのだが・・・


・・・・そうなると・・・本当に、敵対しているはずの人間の勇者であった母上と魔王の父上が、何故結婚したのだ・・・疑問だ・・・


・・・結局、何故結婚したのかは、ジェニーは教えてもらえなかった・・・教科書にも書いてなかったしな・・・!!


とは言え、夫婦仲は俺から見て良好だと思う・・・だから、俺は気にしないことにした。仲が良ければそれでいい!!


ジェニーには、それからも歴史や地理の一般知識を教えてもらっていった・・・


まあ、少しずつしか覚えられなかったが・・・それでも以前よりましになったはずだ・・・・・多分・・・


そういえば、ジェニーとグバンダ師匠が結構な頻度で教師として、この学園に来て指導しているらしいのだが、どうしたのだろうか・・・転職でもしたのだろうか・??


まあ、2人共、転移魔法でお互い毎日俺の家に帰って仕事をしているのを見ているので(グバンダ師匠は転移魔法を使えないのでジェニーと一緒に)、今の仕事を辞めたわけでは無いみたいなのだが・・・


こういったの、Wワークとでも言うのだろうか・・・?


だけど、父上って魔王なんだよな・・・グバンダ師匠も、ジェニーも父上と関わる仕事しているみたいだし、それなりの役職に就いているはず・・・


何でWワーク何てやっているのだろう・・・なぞだ・・・・


ちなみに父上が魔王だって事が解り、もう一つ解った事がある・・・自分の強さだ・・・


自分の強さが、周りと比べて、とんでもなく強いという事を知った・・・・


・・・・うん・・・父上ものすごく強かったんだな・・・どおりで、俺いくら努力しても、勝てなかったわけだ・・・


と言うより、想像では、もっと周りが強い者だらけだと思っていたのだが・・・これは、想定外であった・・・


俺・・・強くなり過ぎて・・・浮いちゃっているよ・・・どうしよう・・・


そう・・・俺が今一番困っている事・・・


「友達が出来ない」


そう、俺が強すぎるという事もあるが・・・何より俺自身剣術の授業で指導という立場に立ってしまって、周りから浮いてしまっているのだ。


おかげで、周りも一歩引いてしまって・・・ほとんど会話することが出来ていない・・・・


一応日常会話は出来ているが・・・それでも、一言、二言話せればいい方・・・本当に、友達の様に会話を出来る人が一人も居ないのだ・・・


「友達が出来ない、どうすればいいと思うフェン」


そう言って以前泊まった宿屋の女将である、フェンに話しかける。


俺が今、居るのはフェンの宿屋だ・・・何故ここに居るかって・・・


・・・・学校に居場所が無いからだよ・・・


唯一この街でまともに話せる人物が今の所、フェンしかおらず・・・


俺が唯一この街で相談できる相手であった・・・


「私に言われても解らないわよ、その前に本当に入学したのね・・・あんな時期に試験を受けて、合格を貰う何て・・・貴方、もしかして特別な生まれなのかしら?」


「違うよ!!普通の平民だって!!」


俺は急いで否定をする・・・もし俺の父上が魔王だとばれて、俺が王族だとばれたら、今の関係が終わってしまう!!それだけは絶対阻止しなければ!!


「ふーん・・・だったら、何であの時期に試験何てしたんだろう・・・まあ、私にとってはどうでも良い事か・・・とにかくおめでとう・・・!」


そう言って、フェンは皿洗いを始めた・・・


ふー、良かった・・・何とか誤魔化せて・・・


これで、フェンすら話せる相手が居なくなってしまっては、俺・・・この街で・・・どこにも居場所がなくなってしまう所だった・・


・・・だけど、このままじゃあ、駄目だよな・・・俺はそう考え、先程の、友達を作る方法を考える・・・・


駄目だ思いつかない・・・しょうがなく、最初の予定通り、フェンに助けを求める事に下・・・


・・・今の時間帯は、お客さんが少ないはず・・・だから、俺の相談に乗る余裕もあるはず・・・


俺はそう判断して、友達が出来ない事を相談する事に決めたのであった・・・


そして、冒頭に戻る・・・


「何で浮いてるのよ」


「・・・年齢」


さすがに本当の理由は言えなかったので、ぼかして俺は答えた・・・


まあ、間違いでは無いだろう・・・精神年齢は20歳だけれどもな!!


「・・・あなたいくつ」


「5歳だけど」


・・・肉体年齢は・・・・


「はあ、何であんたみたいな子供があの学園に入っているのやら」


何だか、フェンにため息までつかれたんだが・・・仕方ないだろう!!


父上に言われて入っただけなんだから!!


「とりあえず、趣味とかで話してみたら・・・」


そうフェンに言われた・・・趣味・・・趣味ねえ・・・


「趣味は模擬戦、後魔法理論討議・・・」


・・・・駄目だ、グバンダ師匠の模擬戦と、ジェニーの魔法談義の事しか思いつかねえ・・・


こんな趣味持つ!子供なんていないだろう!!


「・・へっ模擬戦、魔法理論??!」


フェンは目を白黒させながらそう言った・・・


フェンにまで、引かれているぞ・・・おい・・・


「まあ、飛び級するくらいの子だし、その位はするのかな(ぼそ)」


・・・すみません・・・多分、普通はしないと思いますし、出来ないと思います・・・


学園に来て、俺がどれだけ、異常だったのか思い知ったよ!!畜生!!


「じゃあ、他の趣味はある?」


フェンが気を聞かせて、他に趣味が無いか聞いてくれた・・・だが・・・


言われて気づく・・・俺・・・他に趣味が無い事を・・・


「無い・・・」


「へっ?」


「それ以外したことが無い・・・」


しょうがないじゃん!!それしかやること無かったんだから!!だって、この世界ゲームとか無いし・・・


それに!初めて魔法とか知ったらそれに没頭するのは当たり前じゃん!!剣だって初めて持ったし・・・


俺は悪くない!!・・・だから友達出来ないんだろうけれどさ・・・・


俺は力なく、頭を垂れた・・・・


俺の言葉にフェンも慌てたようで、何とか元気づけようと話を続ける・・・


「いや、他に何かやったことあるでしょう」


・・・他に・・・他に・・・・


「・・・一応ぬいぐるみを作ったことがある」


そういえば妹の誕生日プレゼントで一度作った事があった・・・だけど・・・


「ほらあるじゃ・・・」


「出来たぬいぐるみは見た目化け物だったけど・・・」


うん・・・ジェニーと母上が手伝ってくれたうえで出来たのぬいぐるみ・・・完全にクリチャーの外見だったな・・・自分でも怖い位の・・・


「いや、それでも練習していけば・・・」


「これでも」


そういって、魔法でぬいぐるみの体を再現して、フェンの目の前に出す・・・


目の前にいきなり出てきた物体に驚いた様子で・・・


「この化け物は何・・・?」


と言って来た・・・・化け物って


「魔法で作った俺が作ったぬいぐるみの模造品・・・・偽物だけど、形は再現しているよ・・・こんな形でしか作れなかったんだけど・・・これでも、練習すれば、上手くなる?」


そう言ってフェンにぬいぐるみの模造品を見せたが、今のぬいぐるみの現状はさらにひどいことになっている・・・


今持っているファルのぬいぐるみが破けた場合、縫い直しを俺がして直しているのだが、腕前が酷い為、さらにぬいぐるみの見た目が悪化している・・・


その為、今のぬいぐるみは更に酷いことになっている・・・


ファルも母上に直すの頼めばいいのに・・・何で俺に頼むのだろう・・・謎だ・・・


「・・・・ええーーーと、努力すれば何とかなるよ、うん」


フェンは俺の方を見ず、明後日の方向を見ながらそう言った・・・


おい!本当にそう思うなら!こっち見て言え!!


「本当・・・?」


「本当よ!!」


尚も目を合わさず、言い放つ、フェン・・・だったら・・・


「だったらフェンが縫物教えてよ!」


口で言うだけなら簡単!!そこまで言うなら教えてもらいましょうか!!


「はっ?」


俺の提案に呆けた顔をするフェン・・・


「暇な時間でいいからさ!!」


「いや、私宿屋の仕事があるから・・・」


「今の時間帯なら、俺みたいな特別な客以外来ないんじゃない?」


そう今の時間帯本来ならお客は食べに来ない。


というより、宿屋が忙しいのなら、俺は学校が始まったら・・・ここに来る予定は無かったのだ・・・


だが、最初に宿屋に来て、泊まった時・・・・


『学校に入ったら、寮に入るから(本当は転移魔法で帰る予定だが)、ここにはもう来ないかも』


と言ったら・・・・


『だったら、ご飯だけでも食べに来なさい。貴方なら、いつの時間帯でもいいわよ』


と言われ為、俺は、学校で居場所がなくなった今、こうして、ご厚意に与ってここに来ているのだ・・・


それから、結構な頻度で立ち寄らせてもらっているのだが、今の時間帯は、片付け、掃除、フロントの受付位で、しかも他にも従業員が居る為、それもフェンがやる必要性が無いのだ・・・


だから、言ってみたのだが・・・はたして・・・


「あーもう、解った!教えてあげるから!ちょっと待ってて!!」


そう言って、フェンは従業員に店番を頼み、店の奥に行き、縫物の道具を持ってきた・・・


おお!!駄目元で言ってみるもんだな!!本当に教えてくれるとは!!


「教えてあげるから、途中で投げ出さないでよ!」


それから、俺はフェンの元で、縫物の練習に励むのであった・・・

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