魔王バイトと軍師ジェニーの憂鬱
あの子・・・ロイドがもうすぐ5歳になりそうな時、問題が浮き彫りになった。
いや、問題点がはっきり見えていたのに今まで放置してきた問題が目の前に現れた・・・・
「どうしましょう」
ジェニーが問いかける。隣には魔王バイドがいる・・・
「どうするもこうするも、あそこまで強くなるとは思わなかったんだが・・・」
そう、あの子・・ロイドはもうすでにこの世界でほとんどの者が勝てない位強くなっていた。
以前、グバンダとの模擬戦中、極魔法をロイドが放った事があったのだがその時は大変だった。
私が張っていた、結界は簡単に破れ、グバンダは瀕死の重傷を負った。
まあ、その事はロイドには話していないのだが・・・私の必死の回復魔法でグバンダは一命をとりとめた・・・本当にあれは危なかった・・・
今はバイドが模擬戦の相手をしていてロイドに今は勝てているが・・・
「本当にあいつは大魔法しか使っていないんだな・・・」
そう、私がロイドに大魔法しか模擬戦を含めて使わせないようにしている。
ロイドは、理論上、大魔法の上位、極魔法、その上の私自身のオリジナル極大魔法を使える。
3歳の時、グバンダとの闘いで、一度極魔法を使った、その時でさえ私の結界を壊す程の威力を持っていたが、今の実力はそれすら凌いでいる。
あの戦いでグバンダが瀕死の重傷を負ったのを見て、ロイドには大呪文だけしか使わせない様にしていたが、5歳になる直前でロイドは、今バイドとの闘いで極魔法を使わずに模擬戦で互角の戦いを続けている。
極大魔法を教えるのは辞めた方が良いのかもしれない・・・そう思ったのだが、ロイドはそんな事お構いなしに、私から魔法を教えてもらおうとする・・・
なまじ、極大魔法と言う物があるという事を教えてしまった為・・・ロイドはその魔法を覚えようと必死になっていた・・・
ロイドが覚えようとするのは、ただただ知識欲の為だと知っていた・・・・ただ、純粋に魔法の事を知りたい・・・魔法を効率よく使いたい・・・その純粋な探求心に私は心を惹かれ・・・
気付いたら、私はロイドに・・・極、極大魔法の理論を教えた・・・教えてしまったのだ・・・。
ロイドは本当に気に入ったものに対しては物覚えが速すぎるってくらい速い・・・その極大魔法の理論もすぐに覚えてしまった。
全く・・・私たちの名前を覚えるのは苦手なくせに・・・
だが、これで、本当に大変な事になってしまった・・・・
4歳になって半年後、私はロイドに極魔法を使ってもらった。理由は最近使っていないロイドの極魔法がどの位の威力なのか確認する為だった。
場所はバイドと模擬戦をしている訓練所だ。
グバンダはその身体の大きさからこの場所を使えなかったが、ここなら、思いっきり力を使うことが出来る・・・
なにせこの訓練所には魔王の力を封じ込めている結界が張っているのだから・・・
魔王の力・・・過去全ての魔王の妄執を具現化したもの・・・その力が解き放たれれば、バイドとは言え、自我を無くしてしまう程強力な力・・・
その結界の一部をこの訓練所に使っている・・・その為訓練所で魔法を使う場合絶対に安全なはずだと考え、ロイドに魔法を使う許可を出したのだ・・・
だが、しかし、私の目論見は見事に砕け散った・・・・
ロイドに極魔法を放ってもらった結果・・・魔王の力を封印していた結界は簡単に結界は壊れました・・・
まあ、すぐに自動修復したので結界自体大丈夫でしたが、一瞬自我を乗っ取られそうになったバイドには申し訳ない事をした・・・・
本当に、バイドが魔王でよかった・・・別な人物なら、自我何てすぐに吹き飛んでいただろう・・・・
因みにその時、近くに居た私は同じ極大魔法と極大防御魔法を使い、何とか無事生きていました。
・・・ええ、ロイドは極呪文だったのに私は極大呪文で何とか耐えたのです・・・これが極大魔法だったら・・・考えるだけで身震いをしてしまいます・・・
本来なら魔王様の真の姿以外傷が付かないはずの結界・・・それを極魔法一撃で壊すロイド・・・
はっきり言って、彼が極大呪文を使ったら、どうなる事か想像がつかない・・・・
「ええ、大魔法だけだと思いますよ・・・第一、模擬戦の時に使うのでしたら、その際彼はすぐ言うでしょうし・・・」
そうあの子ロイドは素直なのだ、だから、私が極魔法を使うなと言ったら使わないでしょう・・・
まあ、大魔法と偽って極魔法を使っている可能性は0では無いですが・・・・彼の性格上それは有り得ないと思う・・・
彼はただ単に言われたことを一生懸命にやり、一生懸命にこなしていただけ、それだけなのだから・・・
まあ、その結果がこの肥大した強さになるとは思いもしなかったけれど・・・。
「吾輩は極魔法の強化魔法一つ使用維持するだけで精一杯なのだぞ」
とバイドはそんな事を言ってくる、そんな言葉に私はこう返した。
「当り前じゃない、一応私は、あなたより魔法を使えるつもりよ、だけども彼は、私と同じ位、下手をするとそれ以上魔法を扱えるわ」
そう、私は魔力量こそバイドに及ばないが、彼より魔力の使い方を知っている。
そして、あの子の魔力量は魔王と同じ位あり・・・私の考えている以上に魔法を効率化を知っている。
基本の細かい魔法の使い方はまだ、私が上だろうが、ロイドの魔法の応用力は私以上なのだから・・・。
私とあの子はよく魔法のについて議論をしているが、私が思っていない発想力で、新しい魔法を見つけたりする。はっきり言って今、私はあの子が怖い。
「なぜ極大魔法まで教えた・・・」
「だって、聞かれたからつい・・・」
そうなのだ、あの子は純粋なのだ、だから、つい、私は教えてしまったのだ・・・
「それに扱えるとは思っていなかったし、、、」
そう、教えたからと言って使えるわけではない、まだ、彼が2歳で中級魔法しか使えないときだったからどうせ途中で打ち止めになると思って、極魔法まであるという事を教えてしまって・・・
・・・結局そのまま・・・・極大呪文まで教えてしまったのだ、魔王バイトすら使えなかった極大呪文を・・・
「このままだと、あいつ、いろんな意味で孤立するぞ」
そう、このままだと彼は孤立する。
今でさえ、私以上の力を持ち、バイトに肉薄する程強くなっている。
強い者は強い者同士引かれ合うというが、バイト以上の者はほとんどいないと言える、多分これ以上にロイド強くなるだろうし・・・
「いっその事、ロイドに真の姿見せてみたらどうです?」
「馬鹿が有事ならいざ知れず、模擬戦で使えるか!!」
そう、バイドは真の力を使えば、今の10倍の力を出せる、しかし、すぐに大量の体力を消耗し、下手をすると生命力すら危うくなる。諸刃の剣。
「それに見せたら絶対これ以上に模擬戦に没頭するぞあいつ・・・」
「ですよねーーー」
そうあの子は強い力を見せれば見せる程その力より強くなろうとする。というより、まだ、あの子が来て5年も立っていないんですよね可笑しくありません?
「ちなみにファルは・・・」
「あの子なら大丈夫、知者の書を見られてしまったのは予想外だったけど、、、」
そうなのだ、ロイドが寝静まった後、内緒で彼の心を覗こうとしてスキルを使ったのだが・・・その際、近くにいたファルに私の心を見られてしまったのだ。
まさか、ロイドに見られるのならまだしも、ほとんど赤ん坊のファルに見られるとは思わず、魔法対策もロイドに集中していた為、赤ん坊である、ファルに知者の書が見られているのに気付くのに遅れてしまった。
その結果ファルは自力で知者の書にアクセス出来るようになってしまった。
そして、赤ん坊以上の知識を有するまでになった。
ハールにその事を伝えないわけにはいかず・・伝えたが、その際、かなり怒られてしまった・・。まあ、私自身・・・人の心を読むという禁忌を犯していたのだ・・・怒られても・・・仕方ない。
とは言え、偶然とはいえ、知者の書を読み、その知識を使っているファルは私の後継者になる器を持っている。
だが、後継者になれる器・・・だが・・・彼女の器はそれだけだ・・・それ以上になれるわけでは無い・・・・
「ファルは下手をすれば、私以上の才能はあります・・・ただ、自分が出来る事、出来ない事の分別が出来る・・・だからこそ、彼女は天才で止まると思うわ」
そう、自分が出来る事出来ない事が解るという事は、出来る事以上の無理をしない。
つまりは常識内の成長しかしないという事になる。
ファルと私はどちらかと言うと似ているタイプだ、だからこそ自らが出来る範囲しかしない。だが、ロイドは・・・・
「ロイド、あの子は限界というものを知らない、というより普通ならどこかで壁にぶつかるはずなのに、そんな物なかったように飛び越えていくのよ、あの子は!!!」
そう、普通なら、出来ないはずの事を彼はすんなりできてしまう、成長の限界は私だってある、そのおかげで、数百年魔力が増えた試しがない、それが、あの子はその限界が無尽蔵なのだ!
「多分すぐに、あの子はあなたの魔力を抜きます・・・彼の魔力の成長スピードは一向に落ちる気がなく寧ろ、成長スピードが上がっている程ですから・・・」
上がっているその言葉にバイトの眉が動いた。
「多分、体力、筋肉もそうなんじゃないんですかねえ、それどころか、小さい頃からある程度鍛えられる魔力ならまだしも、3歳で竜であるグバンダを倒せるだけで可笑しいですよ」
そう、あの時、彼はそれなりに本気だった・・・
もちろん殺さない様に気を使っていたが、ほとんど、全力に近かった、極魔法を使ったと言っても普通は倒せないはずだった。
「もう、バイド様も結構きついんじゃありません」
「・・・今の所は大丈夫だ・・・」
そう言った彼は大丈夫という割に少し苦しそうであった・・・
やはり結構無理をしておらっしゃる。
本当ならグバンダとバイトの実力差は100倍以上はあったはずなのだ。
だが、その差も・・・ロイドとばいどとの力の差はだいぶ縮まっている。
私はちなみに筋力、体力の比較なら数百倍以上バイドと差がある・・・強化魔法で強化しようとしても中級までしか身体が耐えられない為、そこまで強くも出来ない・・・・
それなのに、ロイドは・・・恐らく、使おうとすれば、軽々と極大魔法で強化魔法を使ってくるだろう・・・
「多分、下手をすると、2、3年で超えてきますよ」
「・・・10歳になるまでは持ち堪えよう・・・」
そう言った、バイドの言葉は震えていた・・・やはり、貴方でもかなり無理をしているのですね・・・・
「とにかく、ロイドに必要なのは、どんな事があっても気が許せる仲間だ」
そう、多分ロイドはあまりにも膨大な力でおそらく孤立する、だからこそ、気が許せる仲間がほしいのだが・・・
「そんなのどうやって・・・」
ロイドが気が許せる仲間そんなの簡単に手に入るわけではない、お金を払って手に入るものではないのだから・・・
「・・・わからぬが、とりあえず、学校に行かせてみようと思う、あやつ常々外の世界に行ってみたいと行っておったからな」
その言葉に私は思わず口を挟んだ・・・
「大丈夫なんですか、そのやり過ぎないかという意味で」
そう、ロイドは加減が苦手なのである。下手をすれば、死人が出てしまう程に・・・
「私の魔法で作ったスライムで手加減を教えたからだいじょ・・」
「ドラゴン並みの強さを持ったスライムを一撃で殺さなくなった訓練ですね」
そう、バイドも手加減が苦手なのだ。なので、彼が手加減のやり方を教えたとしても、彼基準になってしまう・・・
よって・・・ものすごく加減して作ったはずの魔法生物であるスライムがドラゴン(竜とは別、竜>>ドラゴン)並みの強さを持ってしまったのだ。
何とか、予定通り、バイドが作ったスライムは紙一重で殺さなくなったが・・・・この手加減でどれだけの人達が耐えられるだろうか・・・・本当に学園に送り出して大丈夫なのだろうか・・・?
だが、これ以上いい案がなく、結局、ロイドの学校行は決まってしまったのであった。
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