学園

今日も今日とて父上との訓練を終えた・・・本当に強すぎるよ・・・お父様・・・


疲れをとりながら、家をのんびり歩いていると、妹のファルが俺の前から歩いてきた。


妹のファルは人形と言っていい程、可愛く育っていた・・・本当に兄の贔屓目かもしれないがそれ程可愛く・・・顔だちも整っていて奇麗であった・・・


そんなファルの手には人形がにぎられていた・・・。だが・・・その人形はこれでもかという位不気味であった・・・


その人形は顔は目が顔の半分を覆い、口は耳まで裂け、左右は非対称、しかも手足も変な方向に曲がっていた。そんな人形をファルは大事そうに抱きかかえてこちらにやってきたのだ・・・


何でそんな人形を持っているかって・・・俺が上げたからだ・・・・


・・・・・・はい、その不気味な人形俺が作りました・・・何で壊れそうになっているのかって?いや、壊れそうになっている訳では無い・・・最初からこの形だったのだ。


ファルの一歳の誕生日の時に何かプレゼントをあげようと思ったんだが、俺は何を送ればいいのか解らなかった。


そんな俺がジェニーに相談した所・・・


『だったら手作りのプレゼントがいいんじゃない?お人形とか・・・』


と言われたので、作る事にしたのだ。


・・・だが、俺・・・前世を含めて縫物とかやったことが無いんだけど・・・大丈夫なのか・・・?


案の定全然できず、母上とジェニーに手伝ってもらって何とか形にしたのだが・・・完全に見た目は化け物になってしまった・・・


かわいい犬を作ってたはずがなぜそうなった?


一歳の誕生日にそのクリチャーみたいな人形をファルに渡してたのだが・・・あんな人形で喜んでくれたのだろうか・・・


まあ、人形をあげて以来・・・ファルは肌身離さずその人形を持っているから嫌がっている訳では無いとは思うのだが・・・・


・・・本当にすまん・・・お兄ちゃん・・・そんな人形しか作れなくて・・・市販の方が良かったかなあ・・・・そんな事を色々考えていると・・・


「どうしました兄様?」


気付いたらファルが目の前に居た。


・・・はい、そうです。ファルはすでに2歳で話せます。しかも幼児言葉ではなくはっきりとした口調で・・・。


俺は転生者ということで前世の記憶がある事により、言語を覚える際かなりのアドバンテージ持ってたと思ってた。


何だけど、ファルはそんな俺より早く言語を覚えていた。


異世界の住人の成長速度速過ぎ、いや、異世界基準じゃ言語を覚える速度、俺が遅いのかそんな事をぐるぐる考えていると、


「兄様?」


とファルに顔を覗き込まれた。やば、ファルが目の前に居たのに無視してた。


「ああ、すまんファル少し考え事してた。」


「また、魔法のことですか?」


ファルがそう聞いてきた。


俺は時々、魔法の事を考えている時、周りが見えなくなる時がある。


まあ、考え込む程、魔法は奥が深い、だから俺は魔法の理論を考えるだけで一日が過ぎることもままある。


ファルと魔法の訓練をする時、ジェニーの講習を受けるのだが、ファル自身も理解してその講習を受けている・・・・


かなり難しいはずだけど何で理解できるの?ファルって本当に2歳児?俺と同じ転生者何じゃ・・・?


「兄様また考えてるーー」


またトリップしていると、ファルが頬を膨らませてきた。やべ、また無視してた。


「いや、すまん、ファル(が転生者かどうか)の事を少し考えてた」


そう答えると・・・


「えっ」


となぜか顔を赤くした。何で赤くなったんだ?俺が頭の中で?(はてなマーク)を沢山作った。


「風邪じゃないよな」


「ち、違います」


風邪じゃないのか?ますます解らん。俺がそう考えていると・・・


「あっ、いけませんわ、伝言を伝えないと・・・。」


とファルが言ってきた。


「父上が呼んでいます」


・・・はい?何でさっきの戦闘訓練終わった時に言わずに、わざわざファルに伝言を頼んだんだ?


俺はそんな疑問を感じたが、せっかくファルが頑張って伝えて来たのだ・・・そんな疑問を表に出さず・・・ただ・・・


「解った、ありがとう、ファル」


そういって、ファルの頭を撫でた。


・・・ファルがまた赤くなったのだが、大丈夫なのだろうか・・・心配だ・・・


――――――----------------------------------


ファルを満足いくまで撫でた後、俺は両親の部屋の前に向かった。


いつも思うのだが相変わらず両親の部屋でかいなあ。俺の部屋もだけど・・・。そんな事を思いながら、部屋をノックした・・・


「父上入ります」


そういって、俺は両親の部屋に入った。


「おお、ロイド、待って居ったぞ」


そういって父上は俺の方を見た。


そういえば、父上、父上ばっかし言ってて、父上の本来の名前忘れたなあ、まあいっか・・・そんな事を考えていると・・・父上が話しかけて来た・・・


「ロイド、お前は魔法、剣においてかなり優秀な才能を持って居る」


いや、毎回戦闘では父上にはまけて、ジェニーには魔法すら負けておりますが、そう言いたかったが、話の腰を折らない為にグッと我慢する・・・


「だが、お主はまだ、外の世界を一度も見ておらぬ」


確かにそれはずっと思っていた・・・外に出たとしても、グバンダ師匠か、ジェニーか絶対一緒だったしなあ・・・


はっきり言って、箱入り娘ならぬ、箱入り息子だ・・・


「よって、5歳になった、年の始めに学校に通ってもらう」


(えっ学校?)


いきなり学校に行って来いと言われ混乱している俺だが、そんな事はお構いなしに父上の話は続く・・・


「カーンと言う都市にある学校でな、周りは年上ばかりだが、お主は転生者だから、そこら辺は何とか出来よう」


何とか出来ようって何とかできないよ!!俺!この城以外の人と話した事すら無いんだけど!!


「とりあえず、手続きは試験以外済ませたから、時期が来たらよく学べ」


しかも試験まであるのかよ!!まあ、学校に行くのだから、当たり前なんだろうが・・・と言うより、大丈夫なのか・・・試験って・・・俺、今まで禄に勉強してこなかったけど・・・


俺は不安になり、父上に尋ねた・・・


「試験って今まで勉強してこなかったのですが、、」


「安心しろ、武術特化の学校だからな、試験は魔法や剣の適性を見るのがほとんどだ」


それなら、何とかなりそうか?ほとんどだから、本当に大丈夫か解らないけど・・・


「ちなみに試験は5歳になった翌月に行う」


まじですか!いきなりそんな事を言われたのだが・・・俺試験対策しなくていいのか?


「お主なら大丈夫だと思うが」


何その父上の信頼!!というより待って!!そうなると父上との訓練は?!まだ一度も父上に勝っていないんだけど・・・そうだ!!転移魔法で戻れば訓練を維持できる!!


俺はそう考え、父上にその事を相談をした・・・


「それって、入学した後、この家に転移魔法で帰ってきちゃ駄目ですか?」


「・・・別に良かろう」


よし!大丈夫そうだ!!父上には将来的には外に行きたいと言っていたが、まだ、覚えていない魔法もあるから、ジェニーの魔法講座はまだ続けていきたい・・・


第一書類仕事しかしていない父上に対し勝てる見込みも無い程、弱い俺が・・・・外の世界に行くなんてちゃんちゃら可笑しい・・・


はっきり言って父上との模擬戦の際、魔法も強化魔法しか使わせていないのだ・・・せめて、他の魔法を使わせる位強くならなければ・・・・それまでは・・・この家に通わなければ・・・・そんな事を考えていると・・・


「お主、まだ家を離れたくなかったのか?」


と父上に言われた。


ああ、確かに俺は今まで事あるごとに父上に外の世界に出たいと言ってたなあ・・・・もしかしたら、その言葉を聞いたからこそ、外に出るいい機会として今回の学園行きを父上が決めてくれたのかもしれない・・・


だが、だとしても、俺はまだ父上には勝っていない・・・ジェニーから魔法を覚える事はまだまだある・・・その二つが終わっていないのに・・・どうして外の世界に行けよう・・・だから俺は・・


「はい!父上にまだ勝っていないので!!」


そうはっきり父上に伝えた。絶対に勝手やる!!そう決意を込めて・・・・


そう俺が言うと父上は口を大きく上げて・・・


「・・・・ふふっふっふふあっはっはっは!そうか吾輩に勝つか!!そう言うか!!」


と笑われた・・・そこまで笑わなくてもいいじゃないか!!絶対将来勝ってやる!!


「すまないな・・・いきなり笑って・・・確かにお主なら時間をかければ出来るだろうな・・・解った・・・・!!学校が終わった後、転移魔法で戻ってこい、毎日相手してやる!!」


笑った後、すぐに普段の調子に戻り父上にそう言われた・・・!


よし!約束は取り付けた!!だったら、問題はない!!


学園に行った後も、ここに戻ってきて勝つまで勝負を挑んでやる!!


「はい、ありがとうございます!学校行もそれなら大丈夫です!!」


といって、俺は学校行きを了承した。


だけど・・・了承しておいてなんだが、試験大丈夫かなあ?


多分俺が思っているより強い人がたくさん居るんだろう、それなのに多分文科系の父上(ほとんど部屋から出てこないのでそう思っている)にすら勝てないのだから、学校の試験合格できるのだろうか・・・


・・・これから、試験が始まる2カ月間の間・・・修行と勉強も含めて頑張らなければと決意を新たにした・・・


・・・・そう考えると、バリバリの武人であるグバンダ師匠どんだけ、俺との訓練に手加減していたのだろうか、それを考えると恐ろしくて、俺は身震いをするのであった・・・

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