勝利
俺が3歳になって幾日が経った時、グバンダ師匠との模擬戦(という名の決闘)でそれは起きた。
いや、起きてしまった。
以前からいつかその日が来るのだと思っていたが・・・まさかこんなに早くこんな日が来るとは・・・俺自身思いもしなかった・・・
俺は何度もグバンダ師匠との模擬戦を繰り返していく内に、自分自身の成長を感じていた。
避けられなかった攻撃が避けられるようになり・・・受け止められなかった攻撃が受け止められるようになり・・・かすり傷しか効かなかった攻撃がグバンダ師匠に効くようになっていた。
まあ、師匠が手加減をして模擬戦の相手をしていた為だとは思うんだけれども・・・それでも、手加減をされていたとしても・・・本当にあの様な事が起きるとは俺自身思いもしなかった。
あれは忘れもしない・・・運命の日・・・。
グバンダ師匠といつもの荒れた荒野に行き・・・いつも通り模擬戦が始まった。
先行はグバンダ師匠からだった。
とてつもない咆哮を師匠が吠える・・・以前の自分なら少し怯んでいただろう咆哮は今では何も感じなくなっていた。少し地面が揺れたかな?と思う程度になっていた。
次にグバンダ師匠の爪を使った攻撃が放たれた・・・
以前なら身体強化を使わなければ見切れなかったそれは、今では素で見える様になっていた。
まあ、身体強化を使わなければ傷を与えられないので、身体強化の魔法と闘気を身体に、そして、今度は剣に浸透させる。
剣に魔力と闘気を流し込むことにより、切れ味と強度を上げることが出来る・・・これで準備は整った・・・
ちなみに今、使っている剣は赤ん坊の頃に初めて持った素振り用の剣だ。
この剣かなり丈夫で、闘気や魔法で強化したとはいえ普通なら竜の鱗をしたら剣はすぐに折れてしまう・・・だがこの剣は俺が強化すれば、全力で攻撃をしても折れない程の強度を持っている!
まさにこの模擬戦にうってつけの剣だ!!
まあ、その変わり・・・切れ味は全然だけど、だから、俺はこの剣で・・・切るのではなく、叩きつけた。
次の瞬間グバンダ師匠の体にとてつもない音が響き渡る。
だが、攻撃をぶつけたといっても師匠は攻撃を緩まりはしない。
見た感じも俺の攻撃が全然効いてない様だ。
そのまま師匠が尻尾で攻撃をしてくる。
俺は慌てて避けた・・・このままじゃあやられる・・・
そう思った俺は・・・まだ、数種類しか覚えていないとっておきの風の極呪文を唱えた。
極呪文・・・上級呪文より遥か上の呪文・・・その呪文は今までの呪文の威力の桁違いの威力で呪文を放てる・・・
因みにこの極呪文を唱えるのは今回の模擬戦で初めてである。
今まで、その制御のし辛さから使ってこなかったが、昨日ようやく実戦で使える目途がたったので今日初めて実戦に起用した・・・さて・・・師匠に通じるか・・・
次の瞬間グバンダ師匠に俺が作った風魔法がぶつかる。
俺のとっておきの魔法攻撃は・・・グバンダ師匠の皮膚をあっちこっちに傷を付け、痛々しい姿に変えた。
(やった!!)
一瞬喜んだのも束の間・・・かなりの傷を負わせたつもりだったのだが、師匠はそんなのをおかまいなしに、ブレスを吐いて来た・・・・やはり、にわか仕込みじゃ通用しないか!!
俺は慌てて極魔法の障壁を張った!!
以前は避けるしかなかったブレス攻撃も今では覚えたての極魔法で障壁で防いだり、俺の全力の上級風魔法で散らして威力を弱めたり、剣に闘気を纏わせて切れるようになっていた・・・
俺・・・本当に強くなったよな・・・そんな事を考えていると、周りが師匠が吐いた炎のブレスで視界が遮られていた・・・しまった!!これが狙いか!!
ブレスで周りが見えなくなった俺に対し、グバンダ師匠は体当たりしてきた。
俺はとっさに防御では無く、攻撃に転じた。
ここで防御をしてもじり貧になるだけだとと感じたからだ。
障壁をなくし、ありったけの闘気と魔力で剣を覆う。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
俺はありったけの声と魔力、闘気を振り絞り・・・グバンダ師匠の頭に思いっきり剣を振り下ろした。
攻撃が当たった・・・次の瞬間俺は、吹っ飛んだ。
(やばい!!)
体勢が崩れてしまった俺は・・・吹っ飛んだ先で、慌てて体を起こす。
まだ闘いは・・・終わって・・・
「あなたの勝ちよ」
その言葉が聞こえ、顔を上げた・・・すると、目の前には、先程からグバンダ師匠の訓練の為に結界を張っていたジェニーが居た。
(勝ち?!)
俺が首を傾げていると・・・ジェニーがある方向を指さした・・・そして、そこには、グバンダ師匠が竜の姿で倒れていた・・・・
・・・えっ、勝ったの?!というより、師匠・・・ピクリとも動いていないんだけど・・・あれ死んでないよね。
「グバンダ師匠は大丈夫でしょうか?」
俺は慌ててそう聞いた・・・まあ、俺くらいの攻撃で駄目になったりはしないだろうが・・・死んだように動かない師匠に俺は内心慌てた・・・
「大丈夫よ、少し気絶しているだけ、すぐ目覚めるわ、貴方は一旦家に戻りなさい」
そう言われて少し安堵した・・・そして、その後、ジェニーに言われた通り、家に戻った・・・後の事はジェニーがやってくれるだろうしな・・・
それにしても、師匠が油断していたとはいえ・・・まさか、グバンダ師匠から一本とれるとは・・・・俺は嬉しさのあまりスキップして家に帰った。
まあ、家に帰ってすぐに竜に勝った自分に恐怖したけど・・・。
本当に勝ったんだよな俺・・・山より大きい様な師匠に・・・正直、今でも信じられないんだけど・・・・・
・・・だが、その喜びも、驚きも・・・そして、少しは強くなったのでは?!という思いも・・・すぐに砕け散る事になった・・・・
上には上がいる・・・・その言葉の意味を・・・すぐ俺は思い知る事になるのであった・・・・・
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