グバンダ師匠

「本当に強かったな」


「だから言ったでしょ、本気を出しても苦戦するって」


俺の名はグバンダ魔王様直属精鋭部隊の隊長だ。


俺は今、参謀であるジェニー様と魔王様と勇者の息子であるロイドに、ついて話している。


ロイドと呼び捨てにしているのは、弟子と師匠の関係だからだ。魔王様にも了承を得ている。


この子との出会いは、この子が1歳未満の時であった。


始めは本当に驚いた・・・なんせ訓練所に赤ん坊がいるのだから・・・しかも、魔力を使って浮いているのである・・・


その赤ん坊は、泣くでもなく訓練を見ていた。・・・本当に何でこんな小さな赤ん坊が魔法を使えるのだ・・・しかも、こんな訓練所の中に・・・


俺は、戸惑いながらも赤ん坊に『親はどうした?』と何となく聞いた・・・


聞いた後に思ったのだが、赤ん坊に聞いて解る訳が無い何を聞いてるんだ・・・そんな事を考えていたら・・・


『親、バイト、ハール』


と何と赤ん坊が言って来たのだ・・・何でこんな小さな赤ん坊が・・・!


・・・いやまて・・・その前に何て言ったこの赤ん坊・・・バイト様とハール様?!・・・


魔王様と妃様の名前・・・本当だとしたら・・・何故こんな所に王子が・・・私が戸惑っていると、更にこんな事を赤ん坊が言って来た・・・


『剣、教えて』


と言ってきたのだ・・・魔王様の子供は・・・自我を得るのも早いらしい・・・


だが・・・そんな事を言われても・・・さすがに、王子様であったとしても、赤ん坊である彼に剣を教える事など出来やしない・・・


だけど・・・本当に魔王様の息子の場合、無下に断ることも出来ないよなあ・・・


どうすればいいか考えているた結果、無理難題を与えて諦めてもらう算段を思いついた。


俺は自分専用の素振り用の鉄塊を持ってきて、赤ん坊の前にそれを地面に突き刺し素振りするように言った。


この鉄塊・・・形だけなら剣だかその実は重さ100kg超えの金属の塊である。


刃先も潰れている鈍らなのだが。その重量、硬化で俺がある程度思いっきり振っても壊れない為、素振り用の剣として使っているのである・・・


そんな、重さの100㎏越えの鉄塊を振ってみろと言ったのだ・・・だから、赤ん坊が、持てるはずが無いとそう思っていた・・・


だが、目の前の赤ん坊は持ち上げた・・・


すぐに、後ろに倒れたが、確かに持ち上げたのだ・・・


しかも俺が見た感じ魔力や闘気を使った様に感じじゃなかった。


すなわちに素でこの鉄の塊を持ったのだ・・・


・・・魔法を使って浮いていた事から・・・魔力を使って持ち上げるかもと思い、魔力を使うなと言ったが・・・本当に魔力を使わずに・・・赤ん坊の身体で持ち上げるとは・・・


俺はこれを見た瞬間、こいつを鍛え上げたいと思った。そして、ロイドがどこまで強くなるか見たいと本気で考えた・・・


俺は急いでバイド様の所に行き・・・事の顛末を説明・・・最初は、バイド様も信じられないような顔していたが、俺魔王様に対し嘘を言った事が無く、信頼されていた為、最終的には信じてもらい・・・


結果、ロイド様・・・いや、ロイド(弟子にしたからにはそう言った所はきちんとしないと)を鍛えられる許可をもらったのだ・・・


ロイドに教えて1年以上経った、ロイドの成長スピードどはかなりのものだった。


俺自身の本来の姿は竜だ・・・人型の姿ではかなりの制限があるのだが、それでも魔王様の直属精鋭部隊の隊長・・・それなりに強いと自覚していた・・・・


そのはずだったのだが・・・ロイドに教えている内にその自信が少しずつ揺らいでいった・・・


何と彼は・・・俺が人型で闘ったとはいえ、俺を少しずつ追い詰めていったのだ・・・


はっきり言って彼が2歳になるころには・・・あいつと打ち合ってやばいと思った事は一度や二度ではなくなっていた・・・それほどロイドの成長スピードは速かった・・・


本当に魔王様の子供には驚かされる・・・・いつか・・・竜の姿になって・・・訓練をする日も来るかもな・・・


そんな事を考えている時・・・ジェニー様がこんな事を言ってきた。


「魔法を使っていいなら、あの子あなたの本気の姿でも渡り合えるわよ」


・・・・俺はその言葉を聞いてあり得ないと思った。


というのも、竜の力は途轍もなく強い・・・・人型の俺とは比べ物にならない位・・・


それに、第一魔法を使えたとしても、闘気を同時に使える事は難しいだろうから、実質、闘気か魔法どちらかを選択してロイドは闘う事になる・・・


そうなれば、俺に勝つ可能性はなくなるだろう・・・


その理由として、闘気と魔法を同時に使ういうのはかなりの技量が必要する。それこそ、一朝一夕で扱う事なんて出来やしないほど、その難易度は跳ね上がる・・・


それに・・・下手をすると魔力と闘気で暴走、暴発する可能性があるのだ・・・それ程危険な戦い方である・・・


だからこそ、ロイドには私との訓練の時は闘気だけを使わせていただから・・・


だが、あの魔法だけなら魔王様以上の実力を持つジェニー様がそこまでロイドの魔法について力説をしてきた・・・下手をすれば、自身の才能を凌駕するそれ程、ロイドは魔力の扱いに秀でていると・・・


その言葉を聞き、俺はロイドの力に、興味を持った・・・


その後、『竜の姿で闘えばロイドの真の力が解る』とジェニー様に言われ、俺はジェニー様に言われた通り闘ってみようと決意をした。


バイド様にも聞いたが、ジェニー様から既に聞いていたらしく、そのまま了承を貰った・・・


・・・いつも思うのだが、ジェニー様は何者なんだろうか・・・?


ずっと魔王様の側近で居るのは解るのだが・・・魔王様も俺が生まれる前からいるし・・・ジェニー様もそれ位前から居るのだろうか・・・謎だ・・・


それから、ロイドが2歳になった時、俺はロイドと闘うのであった・・・


―――――――――――――――――――――――――――


ロイドと闘った結果は俺の想像以上であった・・・


彼は闘気と魔法両方を同時に使い、普通なら起こるはずの暴発、暴走を起こさずに、真の姿の俺と闘い切ったのだ・・・・


魔法をほとんど使えなかった為・・・闘気を極めた俺だが・・・ここまで、両方の力を引き出すとは・・・俺には信じられない光景だった・・・


ジェニー様曰く


「あいつの魔法の才能は私以上よ、何も言ってないのに、新しい呪文を、魔法の理論、無詠唱の効率化を作り出すくらいよ」


・・・ジェニー様にここまで言わせるロイドはどこまですごいのだろうか・・・?まだ2歳だよな


・・・だが、はっきり言って、闘気と魔法の組み合わせであれだけの事が出来るのならこれからは手加減はいらないだろう、次からは、本来の姿で相手するようにしよう・・・


・・・・俺・・・いつまで師匠で居られるのであろうか・・・・多分すぐに抜かれそうな気がしてならない・・・

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