第四話 氷の下の海へ
スーパーコメットから分離したアースドラゴンは周囲の氷床の調査を始めた。
「コノアタリノ氷ハ比較的薄イ。シカシ、300m程アルゾ」
「了解。スーパーコメットどうぞ。プロトンガンにて氷床に竪穴を穿ってください。射撃データ送ります」
「データ受け取りました。出力25%で三連射します」
「プロトンガン発射」
「発射」
羽里の操作で緑色の光線が三度放たれる。
そのビームは氷床に直径数メートルの穴をあけ、そこから大量の蒸気が吹き上がる。
「部分的ニ温泉トナッテイルヨウダナ。オロセ」
耐圧服に身を固めたララがアースドラゴンから宙吊りにされ下へ降りていく。吹き上がる蒸気は収まる気配がない。
「ララちゃん。大丈夫?」
「問題ナイ。降下速度ヲアゲロ」
「了解」
「海面ヘト到着シタ。コレヨリ潜水スル」
「了解。ララちゃん気を付けてね」
「ワカッテイル」
ララはエンケラドゥスの氷床の下に広がる広大な海へと潜っていく。薄暗いその海の中には各種の水生生物が漂う地球外生命の宝庫であった。
「小魚ガ沢山泳イデイル。大型ノクラゲガソレヲ捕食シテイルゾ」
ララから送られる映像を眺めるメンバー達。香織はその画像から目的の二枚貝を見つけた。ジェット噴射を駆使して水中を疾駆するエンケラドゥス・アコヤだった。
「ララちゃん見つけたわ。10時の方向」
「確認シタ」
ララもジェット噴射を駆使し、その1mある大型の二枚貝を捕まえた。その時、ララに向かって大型のムカデの様な生物が向かってきた。エンケラドゥス・アコヤとララをまとめて呑み込もうとしている。
「ララちゃん。ハンターが迫ってきている。注意して」
「ワカッテイル」
迫ってきていた通称ハンター、ムカデの様な生物はララと二枚貝に巨大な顎で噛みつく。ララは炸裂弾を放ちそれを撃退するも耐圧スーツが破損してしまった。
「緊急事態ダ。スーツ内ニ浸水シテイル。引キ上ゲテクレ」
「分かったわ」
「更ニ悪イ知ラセダ。海底ノ温度上昇ガ認メラレル。噴キ出スゾ」
「急がないとね」
エンケラドゥスでは土星との潮汐力でマントルの活動が認められている。その活動は海水に熱エネルギーを与え、生命を育んできた。しかし、時折氷床を割り宇宙空間へと大量の蒸気を噴き出すのだ。
「ララちゃんとエンケラドゥス・アコヤの収用完了。スパーコメットへと帰還します」
「了解」
再びアースドラゴンはスパーコメットと合体する。そしてスパーコメットは重力子反応炉を臨界にして上昇していく。
エンケラドゥス表面の氷床は割れ、そこからは大量の蒸気が吹き上がり始めた。蒸気は上空数キロの高さまで上昇していた。
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