第五話 発見と破損と帰還

 ララが持ち帰ったエンケラドゥス・アコヤの中からはエンケラドゥス・サファイアが発見された。難病である宇宙放射線病に対する唯一の治療手段と言われる結晶である。

 しかし、ララはハンターにかまれた部分から体内に海水が侵入し、機能を停止していた。


 ララの前では黒子が泣き崩れていた。


「ララちゃん……ララちゃん」

「大丈夫。きっと元通りになる」

「……」


 黒子は心神喪失状態だった。


「知子は黒子と交代し舵を取れ。補助担当は香織だ」


「了解しました」

「帰還コースに設定。ワープ準備に入ります」

「分かった。任せる」


 ララは壊れることを予測していたのかもしれない。だから今日のララは物腰が柔らかかったのだろう。

 彼女のお陰でエンケラドゥス・サファイアも取得できた。このアコヤも生きた生物標本として大切に飼育されるだろう。


 はるか遠くに青い地球が見える。

 この青い結晶を美沙希の元へと届けてやらねばなるまい。

 彼女とは幼馴染である義一郎。

 彼はこの淡い恋心を一生隠し通すのだろう。



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