第五話 バケツプリンと感染源

「田中隊長。ララのOSが汚染されました。未知のウィルスに感染した模様です。カロン観測所の事故もこのウィルスが原因だと推測されます」

「まさか、そうだったのか」

「既存のセキュリティに引っかからない新種です。スーパーコメットとアースドラゴンをスタンドアローンに。通信はアナログ回線を使用してください」

「しかし、それではアースドラゴンを遠隔操作できないぞ」

「構いません。汚染されては使い物になりません」

「了解した」


 ララはレーザー剣で襲い掛かってくる。

 知子はそれをかわし、ララの腹を蹴とばして壁にたたきつける。


「綾川、銃の使用を許可する。ララを排除しろ」


 知子は腰につけていたプロトンガンを抜いて構える。


「ララちゃん。いい子だから武器をしまってちょうだい。貴方を撃ちたくない」

「人間ハ殲滅スル」


 ララの態度は変わりそうにない。そこへ黒子から通信が入る。


「ララちゃん。どうしたの? 後でプリン食べようよ」

「プ……リ……ン……」

「バケツプリン作ってあげるからね。おとなしくして」

「バ……ケ……ツ……。グガアアアアア」

「通販でNinja用の十字手裏剣買おうよ。欲しがってたじゃない」

「シュ……リ……ケ……ン……。イ……ヤ……、イケメンガ最重要対象ダ。ソコヲドケ」

「イケメンって何言ってるの?」

「ソコニイル夕凪春彦ノコトダ」

「えーっと。俺ですか?」

「ソウダ。オマエガ最重要対象ダ」


「まさか」

「マジか」


 夕凪と正宗が顔を見合わせる。


「正宗、あの怪しい荷物が感染源だったんだ」

「そうだ夕凪。間違いない」

「知子さん。奥の扉を撃ってください。その倉庫にある怪しい荷物が感染源です」


 知子のプロトンガンからグリーンのビームが放たれ扉に穴をあける。倉庫は爆発し中身は宇宙へと四散してしまった。


 その瞬間ララの機能は正常化し、基地の機能も復帰した。


「信じられない。重力子反応炉が復帰したぞ」

「シールドと酸素発生機も復帰した」


「ワタシハドウシテイタノダ」

「良かった。ララちゃん元に戻った」


 ララはレーザー剣を収納し自己点検を始めた。


「OSガ汚染サレタ形跡ハナイ。何カニ侵入サレタ形跡モナイ。私ハ一体ドウナッテイタノダ」

「きっと何かの呪いだったんだよ。帰ったらバケツプリン食べようね」

「貴様ハソンナダカラデブニナルノダ。ムネバッカリ育チオッテ」

「もうそれは言わないで。恥ずかしいから」



 夕凪春彦と正宗明継は冥王星基地へと移送された。カロン観測所の機能は復帰したが、施設破損の為復帰には一か月程度かかる見通しだ。



――美少女レスキュー ☆ビューティーファイブ復活!!——


 このニュースは太陽系を駆け巡った。新しい隊長はカツラをかぶって胸に詰め物をし、完璧な女装をして会見に望んだという。


 しかし、一般市民の評価は低く、ネットでは散々叩かれていたのだった。


「新しい隊長って不細工だよね」

「本当に不細工。信じられないよ」

「そうそう、前隊長の綾瀬美沙希の方がよっぽど美人だったな」

「これじゃあ美少女ユニットってのは詐欺だよね」

「ところで、黒田星子ってまた太ってね?」

「バケツプリンが好物なんだってさ。食いすぎだろ」

「プッ。バケツプリンとかマジかよ」

「マジらしいぜ。ま、俺はあの位ふっくらしている方が好みだけどな」

「出た。デブ専」

「うるせえよ。あの程度はまだデブじゃねえ」

「まあまあ、好みは人それぞれ。しかし、あの隊長だけは無いね」

「無い無い」



 その後一年間、ビューティーファイブは田中隊長の元で大活躍したという。



 [おしまい]


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