第四話 救助成功?

「おい、夕凪止めろ」

「俺たちが助かる為にはこの方法しかない。俺が死ねばお前は助かるんだ」

「馬鹿な事を言うな。そのナイフを寄こせ」

「俺はな。美沙希さんに憧れていたんだよ。今でもそうだ。お前から奪い取りたい」

「夕凪……。だったら俺を殺せ」

「それはできない。正宗、お前の為じゃない。美沙希さんの為なんだ。お前が死ぬと美沙希さんが悲しむだろ。それに、彼女の子供もな。生まれたときに父親がいないなんて、そんな不幸にさせたくはない」

「夕凪」

「正宗」

「お前てやつは」


「聞こえるか。カロン観測所聞こえるか。応答しろ。こちらレスキュー隊、ビューティーファイブだ。繰り返す。カロン観測所、応答しろ。こちらビューティーファイブだ」


 唐突に通信が入る。活動を休止しているはずのビューティーファイブが此処まで来てくれたのだ。ナイフを捨てた夕凪春彦と正宗明継はお互いに強く抱き合い、喜びをかみしめていた。


「こちらカロン観測所。所長の夕凪です。ビューティーファイブの救助に感謝します」

「こちらビューティーファイブ副長の相生だ。無事なんだな」

「はい。大丈夫です。私、夕凪と正宗の二名は健在です」

「良かった。直ぐに着陸する。宇宙服の用意はあるか? 自力で外へ出られるか?」

「宇宙服はありますが動力が停止しています。その際ロックパスワードを紛失しました。現状、扉の解放は困難です」

「破壊するが構わないか」

「大丈夫です。お願いします」

「10分待て。その間に宇宙服を着用しろ」

「わかりました。ありがとうございます」


 笑顔で手を取り合う夕凪と正宗だった。彼らは宇宙服を着用し救助を待つ。

 観測所の外側に小型の宇宙艇が着陸する。スーパーコメットに合体している救助艇アースドラゴンである。

 ブルーの宇宙服を着た香織とライムグリーンの宇宙服を着た知子。そしてアンドロイドのララ。ララも専用の宇宙服を着用しているのは温度変化により筐体や電子頭脳が破損しないためである。


 ララがレーザー剣を使用して観測所の扉を切断する。エアロック構造になっている為、内側に扉も切断した。

 香織と知子が内部に入り、夕凪と正宗の安全を確認する。


「有難うございます。相生副隊長」

「間に合ってよかったな。さあ帰ろう」

「はい」


 夕凪と正宗は涙を流しているようだ。宇宙服なのでその涙を拭うことができないでいる。

 エアロックではララがレーザ剣を抜いたまま立ち尽くしている。


「ララ。どうしたの? 剣を収めて」

「殲滅ダ。皆殺シニシテヤル」


 静止しようとした知子に斬りかかるララ。知子は間一髪それをかわした。


「まさか、ウィルスに汚染されたのか?」

「この観測所も?」

 

 予測もしなかったアンドロイドの故障。

 その為、救助艇のアースドラゴンへは戻れなくなった。


 宇宙服の活動限界は30分ほどである。




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