第三話 スーパーコメット発進します
ビューティーファイブのメンバー五人はそれぞれの自分の席へ着いていた。
ブリッジ中央に隊長の田中義一郎。赤い宇宙スーツを着ている。その前やや下方に副隊長の相生香織。彼女は青いスーツだ。香織の右側前に座っているのがライムグリーンのスーツを着た航海士の綾川知子。知子の左後ろに黄色いスーツを着た機関士兼レーダー管制官の有原羽里。正面一番前に操舵士の黒田星子。彼女はいつも、黒子なのにスーツはピンクとからかわれている。黒子の補助として横に座っているのがアンドロイドのララである。この女児型アンドロイドは口が悪いのだが、天然ドジっ子の黒子をよく補助している。頭部にツインテール様の束ねたアンテナがアクセントになっている。
「隊長。発進準備完了しました」
香織の進言に義一郎は頷く。
「スパーコメット号発進。ビューティーファイブ、
義一郎の合図でスーパーコメットがゆっくりと動き出す。
「進路クリア。障害物はありません」
「機関出力7%。微速前進」
「時間がない。ワープ準備に入れ」
「了解。ララ航路算定に入れ」
「算定ハ終了シテイル。ワープアウト時ノベクトルヲカロンノ周回軌道上ニセッテイズミダ」
「なるほど優秀だ」
義一郎は褒めるのだがララは彼に向ってぼそりと呟く。
「黒子ガヌルイカラトウゼンダ。田中、イチイチ口ヲ挟ムナ。キサマノ心臓ヲ握リツブスゾ(元祖)」
「ああ済まなかった。ララの航路をトレースする。加速開始だ」
「了解。ブリッジ内、対Gフィールド展開します」
「重力子反応炉臨界点へ」
「機関出力10%から30%へ上昇」
「第一ワープ速度まで後30秒」
「コノ中デ一番デブナ黒子ガピンクノ制服ナノガ笑エルナ。膨張色ヲ充テル司令ノギャグセンスハ最高ダ」
「もうララちゃん黙ってて。失敗したらどうするんだよ」
「ワタシガツイテイルカラ大丈夫ダ」
「ララちゃんに頼らなくてもやってやるんだから。軌道修正120-080へ。予定航路をトレースします」
「機関出力50%から75%へ上昇。85%……90%……95%……100%」
「ワープ開始」
「ワープ開始します」
知子の合図で異空間の突入する。ブリッジ内の空間は虹色に光り輝いている。そして唐突に暗くなった。
「ワープアウトしました。現在カロンの周回軌道上に固定」
「この辺りは微細天体が多い。羽里、最大限に注意しろ」
「了解」
「カロン観測所の位置を確認しました。救難信号が発信されています」
「アースドラゴン発進準備。相生と綾川は準備に入れ。ララも同行してくれ」
「了解」
「了解しました」
「ワカッタ。コノファッキンボーイ」
「ララちゃん行っちゃうの」
「オマエガ触ラナケレバ問題ナイ。触ルナヨ黒子」
「分かった。早く帰ってきてね」
スーパーコメットはその下腹に合体している小型船アースドラゴンを切り離す準備に入った。月の裏側を出発してわずか30分。神速のレスキュー隊ビューティーファイブがその実力をいかんなく発揮したのである。
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