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「————だったら、力づくでもあなたを連れて行きます。少々、私的にはあまり好きではありませんが、これしかありません……」


 和哉を睨みつける。


「な……ッ‼」


 彼女の得意である氷属性魔法は、強力であり、戦いとなれば和哉よりも戦闘力が大幅に上回っている。


時間停止フリーズ


 真彩は魔法を唱え、右手を左から右に薙ぎ払うと、冷たい液体と固体が、飛び交って、周りの空気や物、人を固める。


「⁉ うわぁッ‼ 何だよ、この強力な魔法は‼ 危ねぇ―じゃないか‼」


 和哉は後退りをして、真彩の魔法から避ける。


「だったら、今から私に付き合ってもらえますか? 次はただでは済ましませんよ!」


 巨大な氷のバズーカ砲を魔法陣から展開させる。


「分かった。降参だ。それでどこに行くつもりなんだ?」


「今から行く場所は……」


 真彩は静かにほほ笑む。


「え……」



 街の外れにある大倉庫————


「依頼って言うのは、魔法陣の破壊かよ……」


「はい。この世界にも隠れにギルドがあります。私が知っているのは闇にも正規ギルドも属さない無法のギルドから依頼を受けました」


「でも意外だな、この世界にも魔導師ギルドがあったとは……。俺もそのギルドに入ることができるのか?」


「恐らく、無理でしょうね。私もあなたも今やイレギュラーな魔導師ですから……」


 真彩は難しい顔をする。


 静かな倉庫の中は、暗闇で視界が見えにくかった。真彩は魔導師の戦闘スタイルに換装していた。


「そろそろ、目的の魔法陣にたどり着きますよ!」


「魔法陣って言っても破壊するのにも一苦労するんだろ?」


 和哉は半袖の黒服と白色の長ズボン、そして黒のマントを羽織っていた。


「文字魔法は特に解除するのに時間がかかります。文字魔法には、書いた言葉に従って守らなければなりません。そして、解除するのにも色々と知識が必要なのです」


「それで、なんで俺が必要なんだ? 魔法陣を破壊するのに一人で十分じゃないのか?」


 真彩が言ってることは分かるが、和哉がなぜ、自分がここにいるのか分からなくなってきた。


「この魔法陣はおそらく、解除するときに魔法陣に触れれば、術者に気づかれます。つまり、誰かが戦わないとこの依頼は成功しないという事です」


 目の前に感じる魔力に視線を向ける。


「そして、どこかで私たちの様子を見ています」


 緊張した雰囲気の中、落ち着いた口調で話す真彩は、何も動じなかった。


「‼」


「————‼」


 二人は何かに気づいた。


 何かの魔力がこちらに近づいてくる。


 この前の闇ギルドの魔導師と同じ、もしくはそれより以下の魔力だ。


「誰か、こちらに近づいてきますね……」


「ああ、と、言うよりもそもそも俺達の行動自体がバレていたんじゃないのか?」


「もしかすると、この近く全体に魔法の罠でも張っていたかもしれません」


 ————‼


 和哉に今までない緊張感が走る。


 この前は運が良かったものの、今回はどうなるのか分からない。


「後は頼みます。貴方だったら、この相手を任せても大丈夫かもしれません」


「はぁっ!」


「いいですか、魔導師たる者、魔法において絶対に闇に陥ってはなりません。ですから……生きろ‼」


 ————生きろ……。たったそれだけかよ!


氷の剣アイス・ソード‼」


 ————そうだよな……。俺だって魔導師だよな……。


 足音が近づくたびに、大きくなっていく。


「行け‼ そして、早く終わらせて来い!」


「はい‼」


 真彩は振り返らずに走り出す。和哉は剣を握り、敵がやってくるのを待ち構える。


「!」


 姿が見えない相手の魔導師は、何かに気づく。


「……お前は誰だ? 見たこともねぇツラだなぁ……」


 首をゴキゴキと音を鳴らせながら、正面から突っ込んできた。


 紫色の魔法陣を発動させる。


 和哉は左手で相手の足元に魔法陣を展開し、発動させる。

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