第2話  二人の魔導師

2-1

 戦いが終わり、白雪真彩が姿を消してから約一週間後の月曜日————


 場所は北燕町の北燕ほくえん北高校————


 そんな日の朝、全校生徒は朝課外のある午前七時半までに登校しなければならない。


「はぁ……」


 と、一人の女子生徒が溜息を洩らしながら窓の外を眺めていた。


「どうしたの? 溜息なんかついて……。何かあったの?」


「紗耶香ちゃんか……」


 目の前を見ると、女子生徒が立っていた。


 背は低く、中学二年生で身長が止まったかのような可愛らしい少女である。髪は腰ぐらいまで伸ばしており、ツインテール風に結んでいる。


 名前は上野紗耶香うえのさやか。高校一年生。クラスメイトや同級生の中でもっとも身長が低い生徒である。


「それにしてもみんな朝早いよね。私は眠くて朝課外なんてサボりたいくらいなのに……」


「ダメだよ。これは学校の規則でしょ!」


「分かっているよ。だけど……いいよね、鈴鹿ちゃんは頭が良くて、おまけにスタイルで美人だし……」


「そんなわけないよ。だって、この前のテストで結局学年一位になれずに総合十八位だったんだから、上には上がいるんだよ」


 謙虚な気持ちでそういう女子生徒は、少し苦笑いをする。


 彼女の名は、赤舞鈴鹿あかまいすずか。紗耶香とは対照的で、茶髪のかかった髪は肩より少し下の所まで伸ばしており、勉強では一年の中で、トップの成績を持っており、誰にでも優しく、男子生徒にとっては理想の女子生徒である。ついた二つ名は『赤髪の舞姫』。一体、誰がこんな二つ名を思いついたんだろうか。


「それよりもさあ、もうすぐ七時半十分前だというのに後ろの席のあいつ来てないね。まあ、私には関係ないんだけどさ……」


「もう、何を言っているの? 一ノ瀬君だったらギリギリに滑り込みして来るよ!」


「いや、たぶんそうだと私も思っているんだけど……」


 紗耶香は、鈴鹿のその笑顔を見てちょっとばかり呆れた。


「だれが、ギリギリ滑り込みして来るだって?」


 紗耶香の後ろから男子生徒の声がした。


 そこには彼女たちの話の話題になっていた一ノ瀬和哉が、バックを背負って機嫌悪そうに立っていた。

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