4
和哉の近くの範囲内が光りに包まれて爆発した。
真彩に吹き飛ばされた男が戻ってきた。
「何が起きている……。ま、まさか‼」
男は叫んだ。
すると、いつの間にか自分の腹に槍が突き刺さっていた。
「え……」
男はそのまま膝をつき、腹を手で押さえる。血がどんどん流れ止まらない。
目の前を見ると、少しずつ人影の姿が見えてきた。それはさっき自分が倒したはずの男の顔が見えてくる。そして、全てが見えた時は右手に氷の剣を持っていた。
「お、おまえは……さっき俺がこの手で動けなくしたはずだ……。なぜ、怪我が治ってやがる。何をした……?」
「それは私の魔法で直したからですよ」
真彩が後ろに立って、大きな射程距離のある銃を持ち構えていた。
————でも、本当に成功してよかった。失敗すれば、私も死んでいましたから……。
————それよりも賢者の石でよみがえらしたのはいいけど、彼の底知れない魔力は何?
————感じたことのない膨大な魔力だわ。私の知っている最大の魔力を持つ人よりも高いですね……。
————これなら闇ギルドのS級魔導師を倒せるかもしれない……!
真彩は驚き、氷の剣を再び換装させる。だが、驚いたのはもう一つあった。自分の魔法をいとも簡単にコピーしているのだ。
「真彩、ここはさしでやらせてくれないか?」
「ダメです‼ 相手はS級ですよ! 勝てるはずがありません」
「頼む。次はまけねぇ……。それでいいよな、悪の魔導師‼」
県を右肩に載せて叫ぶ和哉。
普通の人間が生き返って、魔導師になることはまずない。魔導師になるには魔力と魔法が無いのとなることができないのだ。なのに、和哉はそのすべてが揃っている。
「ふん。魔法を初めて使う奴に俺がやられるかよ! いいぜ、掛かって来いよ……」
男はニヤッ、と笑って挑発してくる。
周りは瓦礫の山で、住宅にも被害が及んでいる。
「はぁあああああああああああああああああ‼」
剣を両手に持ち、右側で構えながら走り出す。
「まっ……」
真彩が止めようとする声は聞こえない。それよりも以前に聞こうとしなかった。
————何なんですか。この人間は……。私の話など聞こうともしない。
真彩は焦るが、手を出そうとはしなかった。
彼から放たれる魔力が、彼女の動きを鈍らせる。期待と不安、両方の気持ちが空回りし、頭がおかしくなりそうだ。
「俺の剣と貴様の剣。どちらが早いか勝負という事か? 無理だな、俺の『肝洗い』には貴様は勝てない」
男は目をつぶって剣を片手で持ち、和哉が斬りかかる瞬間を待つ。
「さあ、それはどうかな?」
「……‼」
男が思っているよりも速いスピードで和哉が迫っている。そして、気づかない一瞬の隙を突き、剣を右から左へ振り斬った。
それは誰も気づかれずに神経から細胞を切断する技。男が得意としていた技の一種だ。
首の斬れ込み部分が青く染まり、頭と胴体が真っ二つに割れ、胴体はその場に倒れ、頭は宙を舞い、三メートル先に落ちると転がり、やがて止まった。
「ふぅ……」
その冷静な姿を見て、真彩は瞳孔が開いたまま言葉にすることができなかった。
————これは一体……。
————見たことのない魔法……。相手の魔法をコピーすることができるなんて……。
この日、少年は不思議な魔導師と出会い、そして、危険な事に魔界こまれた————
だが、これはまだ始まりに過ぎないと誰も思ってもいなかった————
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